圧縮流体流れにおける液滴の微細化に関する研究

本研究は公益財団法人JKAの「平成29年度自転車等機械振興事業(2017M-109)」により遂行しました。


○研究の概要

液滴と衝撃波の干渉における液滴の変形・微粒化挙動を高解像度で撮影するために、時間応答性に優れる衝撃波管におけるレーザー破膜法を開発しました。開発した衝撃波管を使用した液滴と衝撃波干渉の実験を行い、高速度カメラで液滴の変形・微粒化を高解像度で撮影することで、それらの挙動を明らかにしました。さらに、液滴の変形を数値解析することで、上流側の界面が波打つことが確認できました。




○研究の目的と背景

噴霧燃焼を用いたエンジンにおいて見られる高温・高圧の空気に燃料を噴射する場合において、燃焼器内の圧縮波が噴霧燃焼の過程に影響し、作動が不安定性となることが指摘されていました。そこで、液体燃料噴霧燃焼における圧縮波の影響の理解に向け、現象を単純化させた単一液滴と衝撃波の干渉による液滴の変形・微粒化挙動を明確に示すことを目的としました。




○研究内容

(1)衝撃波管におけるレーザー破膜法の開発

液滴と衝撃波の干渉による液滴の変形・微粒化挙動を明確に捉えるためには、カメラの画角を狭くして高解像度で捉える必要があります。そこで、図1に示したような実験装置を製作し、図2に示すように衝撃波管の隔膜にレーザーを照射し、レーザーの熱によって隔膜を溶かし、瞬時に破膜させるレーザー破膜法を開発しました。レーザーによって隔膜を破膜させることで、時間応答性の高い破膜が実現することができました。時間応答性の高いレーザー破膜法を使用すれば、液滴と衝撃波の干渉位置を高精度でコントロールできるため、カメラの画角を狭くした高解像度撮影が実現できました。



図1 実験装置模式図

図2 レーザーによる破膜の様子

(2)実験による衝撃波と液滴の干渉

(1)において開発した衝撃波管を用いて、衝撃波と液滴の干渉および衝撃波と液柱の干渉の実験を行いました。図3は衝撃波によって変形・微粒化された液滴を示しています。衝撃波によって液滴は潰され、平らな形状となります。さらに、平らになった液滴の側面から液体が剥がされるように液滴が微粒化することが確認できます。このような側面から剥がされるような過程により液滴が微粒化されることで、微細液滴が形成されます。また、図4は衝撃波によって崩壊・微粒化された液柱を示しています。噴射口付近において液柱は崩壊し、その後、微細液滴へと微粒化されます。



図3 衝撃波による液滴の変形・微粒化

図4 衝撃波による液柱の崩壊・微粒化



(3)数値解析による衝撃波と液滴の干渉

実施者が開発した圧縮性気液二相流体解析ソルバを使用し、液滴と衝撃波の干渉を数値解析しました。図5に衝撃波と液滴が干渉して間もない時間における密度勾配分布を示しています。さらに、時間が経過した後の液滴形状と流れ場の圧力を図6に示しています。衝撃波によってもたらされる液滴上流側と液滴側面・下流側の差圧により実験においても確認されたように液滴は潰され、図5に示されるような平たい形状となります。さらに、衝撃波による急激な加速に起因して上流側の界面は不安定となり波打つことが確認されました。



図5 液滴と衝撃波の干渉の数値解析結果の密度勾配分布

図6 液滴と衝撃波の干渉の数値解析結果の圧力分布




○本研究が実社会にどう活かされるかー展望

今回の研究により、衝撃波と液滴の干渉による液滴の変形・微粒化挙動が明らかとなりました。この知見を基に液滴の液滴微粒化特性予測式を提案し、噴霧燃焼の数値解析に役立てたいと考えています。





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