食品加工学研究室の研究紹介
《研究室概要》

安全で高品質な食品を安定して効率的に生産するために,加工・製造過程の物性や品質を計測し,生産技術の向上に関して研究を行っています。食品全般およびその原材料である穀物や果菜類等の農産物より具体的に対象を選び,研究に供します。
 
《研究内容および計画》

*穀物等農産物を対象に
 
[キーワード] 米麦,野菜,果実等農産物,米のポストハーベスト加工技術(乾燥,籾すり,精米,選別,貯蔵),米の加工施設,GABA富化,無洗米,品質,アミログラフ(糊化特性),食味(官能,食味計,テクスチャ,レオロジ),画像計測,画像選別

1) GABAが富化された高品質な米の製造方法の開発
機能性成分であるギャバ(GABA;ガンマアミノ酪酸)を多く含む米は「発芽玄米」として市販されている。しかし,製造過程で悪臭が発生する,米内部に亀裂が入る等,解決するべき問題が残っている。ギャバ富化量や臭気の測定方法を確定し,良い製品を作るための適切な製造条件や処理を検討している。

2) 米麺製造用米粉の適正加工法
米の需要を増やすため,小麦粉の代替として米粉の利用拡充が検討されている。パン,麺類,パスタなどへの適用が考えられるが,米にはグルテンが含まれないので,「つなぎ」がなく,生地や製品が安定しない。これらの製造に適する品種の選定や適切な前処理等を研究している。糊化程度の測定,加湿熱風の利用が現在のテーマである。
米は唯一自給率100%が可能な作物である。米の需要増は水田(国土)の荒廃を防ぎ,農業あるいは農村の活性化につながる。

3) 玄米乾燥の実用化
通常,米は収穫後に籾の形態で乾燥が行われる。この工程を玄米形態での乾燥に替えると,熱効率が向上する,乾燥機の容積効率が向上するなどの利点がある。しかし,玄米表面の傷害により脂肪酸度の増加など品質面で悪い影響もある。利点を大きくしながら,欠点を最小限に抑える方策などを検討する。

4)  加湿熱風(200〜300℃)による食品の物性向上および殺菌処理
食品の処理や加工において加熱操作は一般的に行われている。加湿熱風は相当な高温でしかも水分を多く含むため,有する熱量が非常に大きい。このような熱風を食品に与えると良い効果が得られる例が多く報告されている。
研究室で所有する加湿熱風装置で各種農産物・食品に対する効果を検討する。

5) 音響共鳴法によるキウイフルーツの追熟後糖度の予測および最適流通
一般に農産物は不定形であり,形状や体積は偶然でしかない。体積計測には,通常,液体置換法などが用いられるが,長時間を要し,また,商品価値を失うなど現実的ではない。学生実験で行ったヘルムホルツ共鳴を使う音響計測法を用いた体積計測の研究を行っている。例えば,キウイフルーツは収穫時期における密度は食べ頃の糖度と相関が強い。したがって,収穫時に体積と質量を計測して,密度を把握すれば,商品価値に応じた流通や処理が可能となる。このように,体積や密度が重要な要素となる場合の技術を研究している。


*一般食品を対象に

[キーワード] 混捏・発酵・起泡工程,糊化,ドウの水切れ,きめ,すだち,テクスチャ,過冷却,ガラス化,糊化,誘電率,水分活性,動的粘弾性,呈味成分(糖,有機酸),凝乳,非破壊・非接触計測,食品製造工程モニタリング,音響共鳴スペクトロスコピー,レオロジー計測, SEM,共焦点顕微鏡,X線CT,GC,HPLC,DSC
 
6)  小麦製品(パンなど)の混捏・発酵・焼成工程における物性に関する研究
パン生地の適正ミキシングについて,ミキサー負荷の変化からとらえる従来の方法に加えて,マイクロ波領域の誘電特性によるモニタリングの可能性に関する研究を行っている.同時にミキシング中のグルテン強度,水の状態変化に関する基礎的な研究も行っている.また,発酵,焼成工程の生地膨張にともなう粘弾性の変化,生地膨張率について,音響法及び誘電特性計測による把握を試みている.さらに,SEMやX線CTを用いて気孔の成長,連結の進行の組織観察を行っている.
 
7)  ホイップドクリーム・パン・スポンジケーキ類のきめ・食感評価
当研究室で開発した音響共鳴法により,ホイップドクリームやパンなどの多孔性食品の「きめ」に関する情報が得られる.この手法を用いて,撹拌過程でのクリームの乳化状態,パン内相の気孔膜強度に関する基礎的な研究を行っている.また,X線マイクロCTを用いて,気孔・空隙の3次元構造(例えば気孔形状,サイズ,気孔同士の連通)に関する解析を行い,いわゆる「きめ」や「すだち」の評価をするとともに,これらが物性やその発現に影響する糊化度,老化度合等との関係に関する基礎的な研究を行っている.
 
8) 食品の新しい凍結法や加圧急速冷却法に関する基礎的研究
食品冷凍では,凍結に伴う内部組織の損傷を抑えるために,氷結晶を如何に小さくするかということが重要な課題である.このために過冷却現象の積極的な利用および雰囲気圧の制御による新しい食品冷凍法に関する基礎的な研究を行っている.
 
9) 食品のゲル化・凍結操作に関する基礎および応用研究
食品製造過程におけるゲル化,融解,凍結,ガラス化などの相変化,状態変化を,超音波,誘電特性計測によりリアルタイムに把握するための手法を開発するとともに,その解析結果から物性変化に関する基礎的な研究を行っている.
 
10) パスタ・麺類のボイル時の物性に関する研究
パスタのアルデンテ,うどんのこしやねばり,麺類のなめらかさ,のどごしなどの特性は,小麦粉中のデンプン,グルテンの影響が極めて大きい.ボイル時のデンプンの糊化特性・吸水特性に関する基礎的研究を行っている.
 
11) フライ・天ぷらのサクミ度評価
フライや天ぷらの食感として重要なサクサク感を,客観的に評価する手法の開発を行っている.原料である小麦粉の改質(グルテン強度やデンプンの糊化特性)が,最終製品である天ぷらの食感にどの程度効果があるのかを客観的に示すことが可能となる.
 
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