動物生理化学分野の沿革

昭和38年、家禽畜産学科の創設に伴って総合農学科農村生活科学講座から高橋敏夫教授と中村孝雄助手が移籍して畜産化学講座が発足した。昭和43年には田名部雄一助教授が農林省畜産試験場から着任した。昭和50年、高橋敏夫教授が定年退官し、田名部雄一教授、中村孝雄助教授のもとで家禽や家畜のタンパク質多型、ステロイドホルモンの生合成や血中動態の研究が行われた 。

 動物生理化学分野は、昭和63年の学部改組によって、生物資源生産学科・動物生産学講座を構成する分野として発足した。当初は田名部雄一教授(平成3年6月麻布大学教授として転出)と中村孝雄教授で当分野の担当が始まった。平成4年8月からは、中村孝雄教授、土井 守講師、岩澤 淳助手の3人のスタッフで本研究分野の教育・研究を担当した。主な研究課題は「ニワトリのファブリシウス嚢におけるアポトーシスに関する研究」、「希少動物の人工繁殖に関する基礎研究」および「家禽の下垂体ホルモンに関する生化学的研究」であった。平成3年に博士課程(連合農学研究科)が発足し、本分野も動物生産利用学連合講座に属し(平成12年度に家畜生理化学分野から改称)、現在まで貢献してきた。学部は平成3年に、修士課程は平成5年に、旧学科(家禽畜産学科)および旧専攻(家禽畜産学専攻)として最後の卒業生と修了生をそれぞれ送り出した。平成10年、教養部の解消に伴う農学部組織の一部改変によって、土井助教授は動物生産学講座動物繁殖学分野の担当(平成14年4月から同分野教授)となり、本分野は中村教授・岩澤助手が担当した。平成12年3月、研究室創設当時(畜産化学講座、初代高橋敏夫教授、二代目田名部雄一教授)から一貫して本分野を担当してきた中村孝雄教授(平成7年度〜11年度農学部長)が定年退官した。

 平成12年4月からは鈴木文昭教授(本学遺伝子実験施設・助教授から公募による昇任)と岩澤 淳助教授で本分野の教育・研究を継承した。「微小血管とプロレニンおよびレニン・アンジオテンシン系の生化学(鈴木教授)および家禽における恒常性の生化学(岩澤助教授)」をメインテーマとして教育・研究を行っている。

 平成16年4月からの学部の応用生物科学部への改称および改組に伴い、鈴木教授と岩澤助教授は、それぞれ「動物生化学研究室」担当教授および「比較生化学研究室」担当助教授として、新学部の教育・研究を担うこととなった。尚、応用生物科学部における分野制は平成18年度で廃止されるが、「動物生理化学分野」は農学研究科の教育単位として平成20年度まで存続する。

 平成12年度からの7年間に、40名の学部卒業生、19名の修士修了生、2名の課程博士(論文題目:鶏胚および産卵鶏における血中超低密度リポタンパク質(VLDL)の変動に対する内因性エストロゲンの関与, 2002; Biochemical Study on the Non-proteolytic Activation of prorenin by its receptor binding., 2006)および1名の論文博士(論文題目:ニワトリにおける発育および脂肪蓄積のQTLマッピングに関する研究, 2002)を社会に送り出した。この中には3名の外国人留学生も含まれる。また、平成15年9月から2年間、日本学術振興会外国人特別研究員(バングラデシュ人民共和国、ダッカ大学・生物科学部生化学および分子生物学科・助教授Uddin M. Nasir博士、研究課題:心血管病に対する創薬を目指した、プロレニンの構造と機能についての研究)を受け入れ、多くの質の高い研究成果を上げることができた。この7年間に国内外の学術雑誌に22報以上掲載することができた。特に2003年J. Biol. Chem誌 (Suzuki F. et al., Human Prorenin Has "Gate" and "Handle" Regions for Its Non-Proteolytic Activation.)の論文審査において、初稿・無修正のままで受理されたことは、特記に値する教育・研究の成果といえる。(平成19年3月、文責:鈴木文昭)

左から 高橋敏夫、田名部雄一、中村孝雄の各名誉教授と土井守助教授(いずれも平成12年4月22日、岐阜グランドホテルで行われた中村孝雄教授定年退官記念祝賀会でのスナップ写真)