基礎と臨床を、簡単な入門と高度な応用という位置づけで捉えることが多いような気がします。確かに生理学では、生物の基本的な営みを学ぶという側面があると思います。ただし、ここで学ぶのは獣医師を目指す学生が、病態を理解するために生理学です。単に知識を詰め込む(正常を覚える)のではなく、正常な状態がどんなシステムで構築されているかを理解することが重要だと思ってます。正常な状態というのは一定不変ではなく、常にモニターし、傾いたバランスを常に補正することで成り立っています。補償システムも備わっていて、そう簡単に崩れないようになっています。知れば知るほど、その巧妙さや合理性に驚かされます。病は感染症を含めて、正常なバランスが傾いた状態であるので、正常な状態がどうやって保たれているかを根幹から理解してあれば、病態を非常によく理解できると思います。また、崩れたバランスに対しても、何とか正常に戻そうとする補償系は働くので、その状態を見極めることも、治療方針を立てる上で役立つと感じます。
生理学を学習した時点で、例えば「多飲・多尿」から病名や診断方法、治療方法は決して解るものではないし、まだ解らなくて良いと思います。しかし、ADH分泌不全と言われれば、あるいは糖尿病といわれれば、「多飲・多尿」となる理由は説明できるようになっていて欲しいと思ってます。心因性の「多飲・多尿」とADH分泌不全に伴う「多飲・多尿」を区別する検査方法を言える必要はないけれども、絶水試験を行ったと聞けば、何でこんな試験をするのかを解るようにしておく、これが基礎の目標だと思います。要するに、病態の生理学的説明、これが生理学を学び習得すべき事柄だと思います。獣医生理学と動物生理学の違いといってもいいかも知れません。
基礎と臨床を結びつけて、診断治療の道筋を理論的に構築する能力を伸ばして欲しいと思います。講義内容を復習しながら、病態を生理学的に説明するというトレーニングができるように、いくつかの問いかけをしていこうと思います。考えてみて下さい。ポイントを復習することが目標ですから、実際の症例とは異なる模擬的なものである場合が多いので、予め了解しておいて下さい。 |