主 な 研 究 |
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1. 塑性加工と三次元積層造形技術を用いたハイブリッド加工法の開発
2. ストレスシールディングを防ぐ生体材料の形状最適化
3. 金属積層造形物の機械的特性・破壊挙動の調査 |
研 究 紹 介 |
1. Ti-6Al-4V積層造形ラット大腿骨インプラントモデルの表面性状が生体活性に及ぼす影響 |
積層造形したインプラントを埋植し,
育成した後のラット大腿骨レントゲン写真
(a)埋植直後,(b)2週間育成,
(c)8週間育成 |
我が国では高齢化が進んでおり,整形外科的疾患が増加している.これに伴い,人工股関節をはじめとするインプラントの需要も高まることが予想される.骨格には個人差があるため,体内埋め込み型インプラントは既製品では対応できない場合があり,患者一人一人の体形に合わせたカスタムメイドインプラントのニーズが高まっている.これを実現する方法として積層造形(Additive Manufacturing : AM)技術が注目されている.AM技術においてはCADデータから複雑な3次元形状を直接造形できることがメリットで, CTスキャンデータから患者の体形に適したインプラント形状を設計し,作製することができる.一方で,金属積層造形品は造形後の表面粗度ならびに寸法精度の低さがデメリットとして挙げられることが多く,これを改善するために造形に切削をハイブリッドした複合造形が実用化されている.
インプラントにおいては生体親和性が求められ,インプラントの表面粗さ,コーティング条件などの表面性状が影響する.そこで,造形肌の凹凸を利用して生体親和性が良好なインプラントを作製できると考え,積層造形を用いて種々の表面凹凸面を持つインプラントモデルを作製し,これをラット大腿骨に埋植・育成することによってインプラントモデル周囲の骨形成を観察した.
金属積層造形によって作製したTi-6Al-4V製インプラントモデルをラット大腿骨骨髄腔に長手方向に埋植し,インプラントモデルの表面形状がインプラントモデル周囲の骨生成に及ぼす影響を調査した.その結果,インプラントモデルを埋植し2週間育成した場合,大腿骨骨幹部でインプラントモデル外周に骨誘導が見られた.8週間育成した場合,2週群で観察されたインプラントモデル外周の骨は観察されなかった.
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2. 粉末床選択的レーザ溶融法における造形条件がマルエージング鋼造形物の機械的特性に及ぼす影響 |
造形条件と造形物断面の組織観察
(赤矢印はメルトプールの底部)
4条件で検討 |
金属積層造形法は,3次元CADにて作成されたデータから製品を直接製造可能で,従来の製造法では実現し得なかった複雑な構造を一体成形できる.除去加工では不可能な複雑内部構造やメッシュ構造を造形したり,溶接等によって作られていた形状を一体で作製することができ,時間やコストの削減も期待できる.金属積層造形技術の応用例として金型分野が挙げられ,金型製造前の設計時間の短縮や高機能金型製作が期待されている.積層造形では造形条件(造形環境,レーザ照射条件,レーザ走査パスのパターン等)によって造形物の機械的特性が異なる.積層造形金型に用いられるマルエージング鋼も同様で,金型の性能を決定する局所的な機械的特性に及ぼす造形条件の影響を調査してきた.
本研究室では,粉末床選択的レーザ溶融法において造形条件が造形後のマルエージング鋼の破壊挙動に及ぼす影響を調査するため,エネルギ密度を一定(すなわち,造形の所要時間を一定)でレーザ照射条件を変更して造形したブロックから微小引張試験片を切り出し,画像解析を用いた微小引張試験を行った.その結果,造形条件が破断時の相当ひずみ,すなわち延性に及ぼす影響が大きいことが得られた.
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発 表 実 績 |
沓掛あすか,関あずさ,吉田佳典:Ti-6Al-4V 積層造形ラット大腿骨インプラントモデルの表面性状が生体活性に及ぼす影響,2019年度塑性加工春季講演会,(2019),331-332.
沓掛あすか,吉田佳典,児嶋彬,岡島琢磨:SLM積層造形における造形条件がマルエージング鋼造形物の機械的特性およびミクロ組織に及ぼす影響,2019年度塑性加工春季講演会,(2019),341-342.
沓掛あすか,吉田佳典:積層造形した動物実験用小型中空インプラントの機械的特性の評価,日本鉄鋼協会第177回春季講演大会講演概要集(雑誌名「材料とプロセス」),(2019),228.
沓掛あすか,寒川淳平,吉田佳典:Influence of Lamination Condition on Anisotropy of Maraging Steel Made with Selective Laser Melting Additive Manufacturing(14th International Sessionにて英語で口頭発表),第69回塑性加工連合講演会講演論文集,(2018),347-348.
沓掛あすか,寒川淳平,吉田佳典:マルエージング鋼の粉末焼結積層造形法における加工条件が造形物の破壊挙動に及ぼす影響 ,平成30年度塑性加工春季講演会講演論文集(2018),
39-40.
沓掛あすか,寒川淳平,吉田佳典:マルエージング鋼の粉末焼結積層造形法における加工条件が造形物の破壊挙動に及ぼす影響 ,平成30年度塑性加工春季講演会講演論文集(2018),
39-40.
沓掛あすか,吉田佳典: 積層造形した動物実験用小型中空インプラントの機械的特性の評価,第68回塑性加工連合講演会講演論文集(2017), 81-82.
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受 賞 |
2019年 3月25日
2019年 2月26日 2017年 3月25日
2017年 3月25日
2015年 6月 1日
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平成30年度日本機械学会 三浦賞,日本機械学会 平成30年度日本塑性加工学会賞 学生奨励賞,日本塑性加工学会
平成28年度日本機械学会 畠山賞,日本機械学会
平成28年工学部学部長・研究科長表彰 学業成績卒業表彰,岐阜大学
平成27年岐阜大学 学業成績優秀者,岐阜大学
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