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若井研の提供するエネルギー・環境問題入門


目次 1.エネルギー事情 2.大気汚染 3.乗り切る 4.温暖化 5.原子力・核融合 6.新エネルギー 7.車技術 8.COP3 9.私たち 10.文献,WebSite



8.日本や世界のとるべきエネルギー・環境対策
    (京都議定書の目標に日本は対応できるか?)

|COP3| |COP4| |COP5| |COP6| |COP7| |対策|


 このページは最初 98年すなわち、97年の京都での気候変動に関する国際会議が開催された次の年に書きました。それから何年も経過し、COP3と言われた京都会議から7年を経て、むしろ京都議定書に示された基準年('08-'12)の最初の年まであと4年ほどとなって来ました。
 まず COP3 の COP とは何か、ですが、 Conference on Parties の略です。気候変動についての何もこの頭文字群には含まれていません。
 本題に戻って、今まで見てきた結果、結局今対応を迫られているのは何かと言えば、化石燃料の燃やしすぎによる気候変動への懸念を払拭すること、それは結果としてもう一つの心配事である、エネルギー資源枯渇問題をもほぼ対処することになります。
 さて、地球環境が温暖化すること、すなわち気候変動について世界的な対応をするために気候変動枠組み条約があり、日本はじめ先進国や市場経済移行国が加盟しています。


COP3 までの世界の動きは?

 1989年、オランダ政府(オランダは、スウェーデン同様、経済発展は環境保全を損なわずになされるべきであることを実践しようとしている数少ない国の一つ、そういう国がなぜそこまでしようとしているか、それは、オランダは海抜0m 以下が多く、温暖化が進むと大打撃を受けることも大きな要因かもしれない)の主催で開催された「大気汚染および気候変動に関する閣僚会議」にて、 1992年の地球サミット (ブラジルサミット) までには地球温暖化防止の枠組みとなる条約を採択すべきである (環境庁編、平成10年度環境白書 の訳から) と宣言しました。ところが、アメリカが重い腰を上げず、 先進国が西暦 2000年までに温室効果ガスの人為的な排出量を1990年レベルに戻すとの目的を持って政策・措置を講ずる (環境庁編、平成10年度環境白書の訳から) 程度の案で採択された。つまり、努力しようがしまいが、各国の勝手ということになってしまいました。アメリカがこれに消極的なのは、 1.石油も天然ガスも既にほとんど掘り・使い尽くしてしまった(それぞれ埋蔵量は 10年分程度 社団法人ガス協会版「ガス事業便覧」、世界エネルギー会議資料による)、2.原子力は今まで見てきたように消極的であり、建設中も計画も無し、そろそろ稼働中の原子炉も寿命に達する、3.石炭はまだまだ十分の埋蔵量があり(可採年数:280年、 世界エネルギー会議資料より)、現在石炭に相当依存しているが、単位エネルギーあたりの炭酸ガス排出量は化石燃料中で最悪のものであるから、炭素税などがかけられたらせっかく絶好調にある経済状態に水を差すどころかまた失速しかねない、4.エネルギー消費の相当の部分が輸送部門になっており、車王国の意識はまだまだ高く車離れはできない中で、ゼロエミッションカー構想もなかなか進まない、5. 憶測ですが、アメリカの実業家の多くは、1980年代に出されたアメリカ政府の報告書から相当強い影響を受けたと思われるが、その中には曖昧な表現が多く(当時のデータでより忠実に報告しようとすれば、当然のこと)、都合の良い解釈をしている、というあたりと思われます。
 結局この不十分な宣言をもっと実のあるものにすべく、1995年の第1回締約国会議 (COP1、ベルリン)において、数値目標を掲げること、実施に当たっては法的拘束力を持たせるべきであることが定められた。COP2(ジュネーブ) は、その数値目標、法的拘束力を持たせるための準備会議であった。ところが、総論では賛成しながら具体的になるにつれ各国の事情が優先してなかなか統一見解が出ないこととなる。それが、COP3まで積み残されたままになったため、京都会議はさんざん時間を要し、時間延長をしてやっとまとまったのは皆さんご存じの通り。その数値目標が以下の表の通り。

各締約国の CO2削減目標

削減率締  約  国
-8%オーストリア、ベルギー、ブルガリア*、チェコ*、デンマークデンマーク、エストニア*、欧州共同体、フィンランド、フランスフランス、ドイツドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリアイタリア、ラトビア*、リヒテンシュタイン、リトアニア*、ルクセンブルグ、モナコ、オランダオランダ、ポルトガル、ルーマニア*、スロバキア*、スロベニア*、スペイン、スウェーデンスウェーデン、スイススイス、英国英国
-7%アメリカ合衆国米国
-6%日本日本、カナダカナダ、ポーランド*、ハンガリー*
-5%クロアチア*
-0%ニュージーランド、ロシア連邦ロシア*、ウクライナ*
+1%ノルウェー
+8%オーストラリアオーストラリア
+10%アイスランド
  * は市場経済移行国

以上の削減は 2008年から2012年の 5年間について 1990年に対する量です。削減すべきガスは、 炭酸ガス だけではなく、 メタン、亜酸化窒素、HFC、PFC、SF6 の6種類であり、それぞれ同じ濃度なら炭酸ガスの何倍も温暖化作用がありますし、天然にできるメタンは炭酸ガス同様に増え続けています。工業的に作る HFC などは当然当初は無かったものが増え続けているわけです(後の3種は基準年を 1995年としても良いことになっているが、量は炭酸ガスより圧倒的に少ない)。
 しかし、これらには明らかな逃げ道が講じられています。

削減目標を曖昧にしてしまった項目

  1. 1990年以降の新規の植林、再植林や森林減少により発生した人為的活動に起因する温室効果ガスの排出・吸収の純変化量を削減対象に加えることができる。
  2. 国と国が共同で取り組み、両国で目標を達成すれば良しとする。共同戦線を張る国は加盟国で無くとも良い。
  3. 排出割当量については、取引もできる。締約国が途上国において温室効果ガス排出削減プロジェクトを展開すれば、その削減量を割当量に加えられる。
 これでは、相当骨抜きになることが懸念されています。COP3 を日本で開催したのに、日本が主導権を取れなかった、すなわち画期的な削減目標を掲げられなかったどころか、むしろ目標を低くさせて欲しいとしか言えなかった (これは無理もない面もある、すなわち、日本の省エネ技術は確かに優れていて、現在すでに生産量に対する炭酸ガス排出量は他より相当に少ない、だからこそCOP3 を誘致する自信が有ったのであろうが、結局は暗黙の内にアメリカと共同歩調を取るつもりが、足を掬われるという醜態となった、足を掬ったアメリカはアメリカで上院に 7%削減を約束したことはアメリカ経済を圧迫するからと) 背景には、政府だけでなく国民の責任も大と言えます。だれも、自分のことと思っていないからでしょう。それで、環境庁の「平成10年度環境白書」に掲げられている我が国の方策として、


環境庁が掲げる達成のための努力目標

  1. 2.5% をエネルギー需給面の対策や技術革新、国民の努力で削減
  2. 2010年頃、日本の森林による吸収源で3.7%程度が見込めるが、今後の国際交渉で追加的な吸収分を確保できるよう努力する
  3. 共同実施などによる排出権取引を活用する
 となっています。3.7%の根拠が示されていないが、2.5%+3.7%≒6% という勘定とするなら、全く間に合いません。すなわち、このところ日本のエネルギー消費の増加は年約 2% です。ちょっとデータが古いのですが、1979年当たりまで増加率が減少傾向ですが、石油ショックのため消費・生産が一時鈍ったことによります。日本の企業の自慢するところですが、徹底して効率アップを図ったおかげです。民用の電化製品などもそうです。ところがその改善も頭打ちになってくると、減少傾向はストップし、一定値を上下するようになりました。バブルの崩壊が有って、とくに産業が低いのですが、運輸もそれに続いて低い傾向を保っています。ところが、民用はむしろ増加率が増えています。それらの平均値として、年 2% の増加になっているのです。この増加率はこれは、世界もほとんど同じです。



本来先進国の日本は減速期でなくてはならないのに、まだまだ贅沢を求めている(人口増加も一原因ではあるが)からでしょう。実際、このエネルギー消費は産業部門は停滞ぎみですが、運輸・民生部門の伸びが大きいのです。図 (「エネルギー '97」より) に示したように、1970年代前半の第一次石油ショック、後半の第二次石油ショック、1990年代はじめのバブルがはじけたとき、産業の消費はまともに景気の影響で消費量が減りますが、輸送部門と、とくに民生すなわち生活部門(実際は産業部門のなかのビルや事務所もここに含まれてはいます)は常に増加しているのです。最近も民生部門が最も増加率が高い傾向にあります。生活のゆとりがまだまだ不足していると国民は考えていることになり、エネルギー資源の危機が訴えられようが全く感知せずの飽くなき贅沢を求め続けていることになります。ここに、COP3議長国としての日本政府が、温暖化政策をきちんと打ち出せなかった責任が政府だけには無いと先程述べた理由があります。そういう贅沢指向を弱腰政府がブレーキをかけられないと解釈できます。実権を握り続けるためではありましょうが。


日本人は情報を十分すぎるほど得ているはずだ

 ともかく平均すると、発展途上国などの増加率と同じとあっては、温暖化の危機が叫ばれ、報道に関してたとえば新聞発行数は国民一人あたり 0.57部、一人あたりテレビ保有台数も0.69台と、他の国と比べて遜色が無く、その危機を把握・認識する条件は自ら十分整えていながら、目を向けないという状況は、そういう状況を知らずに贅沢をするより始末が悪く、先行きは全く暗いですね。すでに日本は 1990年時点から炭酸ガス排出量がエネルギー消費量とほぼ同じように 8% も増加してしまいました。これからさらにこの調子で進めば、2010年には1990年比で19%増(16%にならないのは複利計算だから)です。上記 2.5%は焼け石に水なのです。



TV保有数        
新聞発行部数        


 さて、ブラジルサミットで非難を受けたアメリカはどうしたかというと、やはり当初は後ろ向きでした。日本がきちんと数値目標を言えないのはアメリカに遠慮しているからだという説がありました。そして、ふと気がついたらアメリカは数値を出してしまった。日本は大恥を勝手にかいたという見方です。そのアメリカの副大統領ゴア氏が、それからほぼ半年後の 1998年8月、アメリカ気候局が世界各地で測定したデータを総合した結果を受けて「温暖化は確実に進んでおり、その防止策に積極的に取り組む必要がある」と発表しました。後ろ向きの姿勢が問われてきたアメリカにしては力強い発言です。その具体策については全く触れていないのでかけ声倒れも十分あり得る話です。上述の、石炭重視、原子力嫌いという政策、しかも排気中の汚染物質は日本の何倍もあるという状況で、本当にアメリカが炭酸ガスなど温暖化ガス排出量を減らせるのか、これから10年のがんばりを期待したいところです。
 さて、吸収源として日本は国内の森林を勘定したいようですが、今までも吸収してきたのだから、それを勘定してはいけないし、たとえ新たなる植林を対象にしても、それが伐採されて紙となり、建築資材となり、家具となる段階では炭素を固定化してはいるものの、それが燃えるときには再び炭酸ガスに戻るわけです。燃さない樹木を植林したとしても、朽ち果てたままそっと土に還るわけではなく、一部は発酵してメタンを出すでしょう。これは炭酸ガスの 20倍も強い温室効果ガスなので、やはり、植林して元気で光合成が活発に行われている段階段階だけの樹木を考えて 吸収 と言っていては、尻抜けです。
 さて、2.5%ではまったく足りないのですが、'98年6月中旬、政府は COP3の目標値達成のために、以下の見解を国民に打ち出しました。


COP3 後、政府が急きょ国民に打ち出した取り組み目標

  1. 原子力の立地推進に向け、最大限の取り組み
  2. 省エネでは、最も良い製品を基準にしてエネルギー効率を設定する「トップランナー方式」を採用
  3. サマータイムの導入するための「地球環境と夏時間を考える国民会議」を設置
  4. 情報通信を活用した遠隔勤務など各種モデル事業を実施
 具体的には、コージェネレーションの推進、過剰屋外照明の見直し、低公害車の普及、トラック積載効率の向上、公共交通機関の利用促進、バイパス・立体交差による交通渋滞緩和、緑化推進などインフラ整備が強調されています。
 また、上記原子力発電所についての具対数として、2010年には 1997年比で 5割アップが必要と説いています。これは、従前から政府内でくすぶっている 20基(現在51基)増設論 に符合する内容であり、結果として COP3 は原子力推進派のための救いの神となるという批判もあります。ただ、国民の理解を得ないで温暖化策として造れ増やせ政策になっては、またまたしこりを残すことになります。


実際の進行は政府のシナリオからすでにずれている!!

 ここに政府の思い通りにならないデータを示しましょう。


 この グラフ は電力事業審議会が今後を予測しているもので、石油依存は止めようという姿勢が伺えますが、一方で天然ガスばかりか石炭が増えています。もちろん原子力も増えていますが、平成15年まではわずかの83万kWですから、丁度普通の原子力発電所一基分です。つまり、今政府がかけ声をかけてもこのころは現在進行中のものしか間に合うはずが無いのです。実際、水力発電よりは計画から建設・送電開始までの期間は短いのですが、地元説明があるので、もっとも早くても10年以上かかるのが原発です。平成19年(2007年)になってやっと1128万kW ですが、これも今すでに地元との交渉が相当進んでいるとか、すでに終わっているというものでしょうが、それが10基から12基という規模です。政府の20とかそれ以上という期待の半分です。原子力を受け入れる地元が無いのでしょう。東京電力の社長が、「今、国の計画に盛り込まれている5基でも、本当にうまく建設できるかわからない。これから20基を目指して政府は、コンセンサスづくりに協力してほしいと期待しているようだが、環境対策が(原子力の)追い風にはなっていない」と指摘していることが雑誌・エネルギー に紹介されている事実を見ても、政府のかけ声倒れになる可能性の方が高いですね。そういう状況が実際に東北電力が建設しようとしている新潟市巻町で '99年 9月に起こっています。また、敦賀原発の熱交換器事故に加え、東海村臨界事故が発生するに至って、国民の理解さえ得られなくなってきているのです。どこも身近に原子力に来て欲しくないと言いながら、どこに持って行くのかは政府や電力業界に任せてこのまま年率2% で消費を増加し続けることは疑い無いだろうし、中東の政治不安にいつも左右され、ときには90億ドルを払うというようなことがたびたび許される訳でもないから石油依存体質は何としても脱却したい、となると電力業界としてそれに対応するにはせめて石炭を取り入れておかなければどうにもならない、という姿勢のように見えます。アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの状況に近づくわけです。ところが政府にはこの石炭火力発電の増分についての記述が見あたりません。原子力を 20基以上増やすということだけが出ています。このままでは、炭酸ガスを最も増やす石炭火力が増えてしまうとは言いにくいのでしょう。以上は私の独断的な推測です。
 推測が的外れかどうかはともあれ、こういう状況を見ると、COP3 の合意事項を守ることはできそうにないという気がしてきませんか?くどいようですが、1990年の6%減であっても、ほとんど焼け石に水なのに、それすらできそうにないということです。
 2000年3月、それがついに本当になりました。つまり、政府は20基計画を13基程度までトーンダウンしたのです。総合エネルギー調査会も、3〜13基とさらに厳しい見方をしている。理由は、景気の低迷による需要の減少、上記巻町や芦浜原発白紙撤回に代表される、国民の合意という壁、それに強い影響を与えた上記敦賀第二原発以外に、敦賀一号機原子炉台座ひび割れ、再処理工場部品取り付け漏れ(日本原燃)などの事故やずさん管理、さらにBNFL のデータねつ造とその隠蔽工作等々の不祥事、そして決定打はやはり大内さん篠原さんと二人の死亡者が出たという事実などが挙げられます。
 でも、きっと景気が良くなればまた原発はやはり必要だと考えるようになるでしょう。政府は非常に日和見です。企業や経済学者は一層日和見でしょう。むしろ、これは何度も言いますが、政府や電力会社の考えることではなく、国民一人一人が電力の恩恵にあやかっていることを思い起こし、その責任をどうとるのかを真剣に考えなくてはならない事態だと思います。
 そうした「原子力反対」と簡単に言える状況の中で、東京電力は原子力への研究費を重視する決定をしていますが、今後を考えると原子力抜きでは無理なこと、現実にも強く原子力依存状態なのだから、安全については今以上に深めねばならないと言う、1999年の事故の教訓を予算的な痛みを伴っても将来への投資として位置づけた好ましい動きと映りますね。



原子力や新エネルギーは実際は建設、燃料加工、製作のために炭酸ガスを
大量に出すというじゃないですか?

 確かに、製造したり、建築したり、設備を用意したりする際に直接化石燃料を燃したり、電気の形で使うもののその大本の発電所は6割程度が化石燃料で賄われているのですから、完全に CO2フリーというわけではないですね。たとえば、アモルファス太陽電池を、全て電気から作ることができ、その電気はアモルファス太陽電池から取っているなら、完全に自足自給で CO2フリーです。さて、後者の場合、もし太陽電池を作るのに必要な電気量を太陽電池から作ることができないとしたら、このシステムは成立しません。太陽電池は、意味がないことになります。原子力発電所も同様のことを言われることがあります。それに対して、電力中央研究所が作った(1995年)データではありますが、各種発電源別の発電量に対する炭酸ガス発生量の関係が参考になるでしょう。

* g-c/kWh :発電電力 1kWhあたりの CO2排出量を炭素に換算している。
* これらの値は、原料の採掘から建設・輸送・生成・運用(実際の発電)・保守などのために消費されるすべてのエネルギーを対象として CO2排出量を算定。


 1kWh は 20円と少しですから、その程度電力を利用したときに炭酸ガスがどれだけ出るかを見たもの。 12g で炭酸ガスにして 24g程度だからなんと、600W の電気釜を30分使ってご飯を炊いたとしたら、石炭火力なら炭酸ガスは 200gも吐き出すわけです。緑色部分は設備的なものですから、何年かかって償却するかによって値が変動します。その意味からすると、原子力発電所がいかにも少ないのが気になります。火力発電所と比べて、そんなに少ないはずがありません。LNG火力が中でも設備で高い値になっているのは、運搬時に液化するエネルギーが馬鹿にならないことが含まれているということなら納得できますが、原子力と比べてこんなに高いとは信じられませんね。もちろん、原子力発電所を建設するのに原子力発電エネルギーで賄える分はまかない、どうしても化石燃料や材料を使って炭酸ガスを発生させてしまう、という考えで計算しているならあり得るとは思います。
ほかの自然エネルギー利用発電が設備で高い値なのは、ひとえに設備で発生させる炭酸ガス量に比べて発生できるエネルギーが低いことに起因するものでしょう。
 これを見ていただけば、たとえば太陽電池は自分を作るために、原発は燃料の加工のために炭酸ガスを火力並に出すという見解は否定されます。現在風力発電、太陽光発電などは1kWhあたり20円より相当高いものの、NEDO の補助を受けてやっと採算がとれているわけですが、だからと言って自前で発電した総エネルギーを使っても自らの発電設備を作ることができないというようなことは有るはずがありません。そういうことがあるなら、NEDO がそんなものに補助金を出すはずが無いし、補助金が無くなったら採算割れするようなものをメーカが供給するとも考えられません。

COP3 について、企業はどう考えているのですか?

 エネルギーを使う立場から言うと、総エネルギー使用量のうち民生用として各家庭の占める割合が通産省のデータでは 14.2% で、運入部門のなかの旅客部門の占める割合が15.1%(このうち自家用乗用車は83%を占めています) ですから、国民が生活するために消費しているのが約30% になります。その残りが全て産業用と言えないかも知れませんが、ほぼそうでしょう。つまり 70% は企業が使っているのですが、その 100の企業の経営者の考えを '97年 COP3 が開催される少し前の日経新聞が調査した結果が 同年 11 月3日にまとめられて発表されています。
 それによると、「従来と今後の経営において、利益以外に何を最も重視しましたか」という設問には15% が「今後は環境問題への取り組み」と回答しています。これは「従来環境問題に取り組んだ」のは 11% であったという回答より大幅に多くなっています。これは好ましいことといえば好ましいことです。でも、1997年の情況は 11月と言えどもまだ1998年ほど経済状況が悪くはなかった(同じ調査で、景気情勢をどうみていますかという設問に対し、回復基調が続いているという回答はゼロですが、回復のテンポが緩やかという回答が 2.8%あり、53%が足踏み状態(停滞感が強まっている)という回答、後退の可能性が出てきたが35.5%で、「すでに後退局面に入っている」という見方をしていたのは 8.4%しかありません。またそのころの日経調査の経済指標では、実質成長率が 7-9月は0.8%を示していたころで、この調査がなされたころの平均である、10-12月平均がマイナス0.4%になったので、不景気感は半年後の今('98-9月)よりかなり弱かったころと言えましょう。最近のデータはまだ示してありませんが、その後 '98年の 1-3月平均では相当悪くなって -1.3%を示していますから、このころだとそれらの企業の社長さんの回答も相当変わった可能性はあります。有効求人倍率も、'97-10月ころは0.7あたりですから良くは無かったのですが、94年あたりからそれほど変動していません、むしろ上昇気味になっていたころです。ところがその後12月ごろから急激に下がり始め、3月には0.58と0.6を割り、7月には0.50という状態になっています)ので、相当に楽観的観測だったとも言えます。
 COP3 を控えていた当時、「これからの経営のあり方はどうあるべきか」という同じ調査の設問に「省エネ技術の開発などで、経済成長と温暖化ガス削減は両立できる」という回答がなんと 87.8%に上っています。温暖化ガスの削減というのがどこまでのことを意識しての回答かによりますが、楽観的と言えば楽観的、世論を意識してあまり刺激的な回答は世情を不安定化するという配慮かも知れません。「経済成長が最優先で、それを犠牲にしない範囲で削減すべき」という回答はわずかに8.4%。ましてや、「経済成長を低下させても温暖化ガスを削減すべきだ、地球環境を最優先すべきだ」という回答は1.9% の低率になっています。この数字にしても、アンケートだからこう回答されたのであって、向かい合った会議の席で挙手でという形だとこの数字が出たかどうか、疑問でもあります。
 一方、温暖化ガス削減目標についてのアンケートには、半数の経営者達が 5%が妥当と回答しています。上述の87.8%の経営者の多くは、この5% 削減が上記方法で可能と思っての回答なのかもしれません。10%という回答も2割ほどあるものの、削減の必要なしもほぼ同数居ます。50%と応えた社長も4%居て、本当にそれができると考えて回答したか疑問でもあります。もちろん、この 4% の人は、上述の「経済成長を低下させても」という環境至上を唱えている経営者と合致しているとも言え(というのは、回答率が両者で違うので、人数で示すと 4%:2%といっても同じ数になる可能性があります)、非常に真剣に取り組んで居られる社長さんたちかもしれませんね。これらの平均的(単純平均ではありませんが)なところと考えると 6% あたりに落ち着きそうです。このデータをもとに政府が COP3である意味では安心して 6%をのんだという推測はたまたまの一致でしょうか。でも、たまたまであっても、最も協力をしてもらわなくてはならない企業の意見を入れたということでは説得力はありそうなデータになりそうです。あるいは、日経とは別にこのような調査を実施していたかもしれません。)
 以上は想像が多い話ですが、ともかくデータとしてはなんとなく楽観的に見受けます。あるいは、日本は今まで相当頑張った、これからでもがんばれるという自信の現れかもしれません。


簡単に自転車への移行と言うけれど

 話を政府のかかげる目標に戻しましょう。自転車利用を促進すべく、駐輪場、道路の整備、鉄道などへの自転車の持ち込みを可とする方策も立てることを目指すとしています。私も自転車が好きなので、天候などを見て通勤には自転車を利用します(荷物が少ない日とか、天候を気にしてしか利用しないところが私自身まだまだ温暖化に深刻さを感じていない典型的な贅沢指向派ということです)が、岐阜大学のように田舎の立地条件は以前は自転車に都合が良く通勤時間は片道 12分程度を要していたのが今は舗装は以前より圧倒的に良くなったものの車中心の信号に阻まれるため、15分で来るには相当危険な走りを覚悟しなくてはならなくなりました(年をとったことは、良い自転車を使っていることとキャンセルすると思っています)。 ということで、これほどまでに車中心に作られた道路を今から自転車も快適な走りができるように、など、無理な話でしょう。手直し程度で済む話ではありません。根本的に改造しなくては、自転車優先になるはずがありません。自転車が増えれば、自転車道(歩道と共通では済まなくなるし、十分な幅を用意しなくてはならない、自転車王国中国は自転車は車道を走るようになっていたが、これはもちろん自転車は危ないが、自転車は歩道を手押しで歩かなくてはならないので歩道はそれでなくても結構広いし、日本より安全であった)を作る必要があるし、交差点で横断歩道が歩道橋になるような馬鹿げた構造を車が地下を利用して立体交差するようにしなくてはならないだろうし、今でも駐輪場が無くて溢れているのだから何倍も大きな駐輪場を確保しなくてはならないなどなど。相当自転車が優遇された道路にならない限り、車に慣れた人が自転車に変わるとは思えません。


個人的には自転車への移行は実に好ましい選択だと賛成したい

 政府の覚悟がどこまで本当に自転車用に道路を整備しようとしているか、不明ですが、個人的には是非早急にそういう環境にしてもらいたいと思います。自転車が車と対等または優先して走りやすい環境ができれば、女性、年輩者は5km 程度まで、元気の良い人は軽快車で 10km 程度の通勤は自転車で良いと思うのです。婦人で時速15km 程度 (マラソンのランナーは時速 18km から 19km) ですから、20〜30分程度、馬力のある人は、軽快車で時速 20km以上出せますから、やはり 10km で 20〜30分の通勤・通学時間です。
 現状では、世間並みのプライドの持ち主は車に自分の流れが左右され過ぎてとても自転車には乗れない情況でしょう。そう言いながら結局は、自分が自転車の流れを妨げる車に乗ることになります。早急な自転車優先環境対策が待たれます。
 またスウェーデンの話ですが、岐阜大学にはスウェーデンに
ルンド大学 という交流協定校があります。ルンドの学生は自転車を愛好しています。岐阜大学よりずっと広いキャンパスを、多くの学生が軽快車で移動しています。日本に夏短期留学(2ヶ月)して来る学生は当然車通学は有りません。寄宿舎から7〜8km の道のりを、婦人用自転車で通います。女子学生も。それで、留学生にスウェーデンの学生の車事情を質問したところ、「どうして日本の学生はそんなに車を使うのか」と逆襲される始末、自転車の通学を全く不便と考えていないのです(これは今から5年ほど前の話で事情が変わっているかもしれませんが、多分そんなことは無いでしょう)。日本人学生は、わずか 1km 先のアパートに住んでいても、車通学を選びます(少なくとも、岐阜大学の学生にはそういう人が多い!!)。とんでもない話ですね。

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COP4(ブエノアイレス, 1998年)はどうなった?

 この会議で話し合うべきことは
 1. 森林の吸収の扱い
 2. 排出権取引の扱い
 3. 途上国の削減目標
でした。ところがどれもまともな議論が無いまま、11月 13日、閉幕。その経過を新聞記事から抜粋してみましょう(1998年6月以降。
一応それでも「ブエノスアイレス行動計画」というものをまとめることはできたようです。その要約を中日新聞から転載すると以下の通りです。

「ブエノスアイレス行動計画」
「資金制度」
  地球環境基金 (GEF) は以下の目的のため発展途上国に資金提供する
   △ 温暖化影響への対応
   △ 観測網への参加
   △ 国別報告書の作成
   △ 温暖化対応策の準備の研究
「技術移転」
  先進国に次の項目を要請する
   △ 途上国に対する環境によい技術の移転、融資などの促進
   △ 途上国のエネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの利用への支援
   △ 途上国の温暖化影響対策措置の支援
「温暖化影響への補償」
  1999年10月までに、必要な追加的措置を明確化する。
「共同実施活動の施行」
  施行期間を継続、99年末までに、試行期間の評価活動の準備を開始する。
「国際制度」
  2000年の COP6 会議で最終決定できるよう、国際制度に関する次の項目を決定する
   △共同実施のガイドライン
   △ クリーン開発メカニズムのプロジェクトの検証、監査、透明性を高めるための手続き。
   △ 排出権取引の原則、形式、ルール、ガイドライン
   △ 国際制度を利用した排出削減の上限設定の是非
  「罰則規定」
  2000年開催の COP6 会議までに規定を作成する作業計画を作る。

実に情けない結果ではないですか。

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COP5(ボン, 1999年)はどうなったの?

やはりまたまた情けないことになりました。京都はさすがにポーズを取るだけはやってくれたけれど、実際に動く話になると、相当抵抗が有りそうだとの予想は十分できたのです。その京都議定書につき、当の日本ですら原子力発電所を 20基も増設することを電力事業者に相談もなく決め、そのうえ排出権や森林の吸収はアメリカがなんとかうまくやってくれるだろうからそれにしたがって計算し、国民には自転車を勧め、サマータイムもうまく計算すればトータルでなんとか乗り切れる数字だけは出るという程度。そのアメリカが排出権を全面的に行使して、自国の排出分を他国の計算上の削減分で逃げようというから、ヨーロッパは納得できない。そういう国がいる以上、途上国がそういう横着な先進国と同様に規制されたのではたまらない、という利害が真っ向から対立している状況では理想は高くても合意は常にお国事情が優先する(委員は多分それではいけないと思っていると信じたいが、国の繁栄を考えると、理想ばかり言ってられないし例え言ってみたところですぐに更迭されて事態は変わらないというところ)。結局ボンもブエノスアイレスから何ら進展を見ない、相変わらず対立が激しく歩み寄りは相当困難ということを浮き彫りにしただけで終わりそうです。それらの経過をまたまた新聞ニュースで見てみましょう(本業が結構忙しく、サイドワークとしてのE&Eニュース&解説に費やす時間がかなり長期にわたって続いたため、以下の引用も少数になっています)。
またこのころの日本や世界の取り組みなどに関するニュースも見てみましょう()。


その閣僚級会合において、
  1. 排出権取引の規定作りの交渉を続ける
  2. 削減目標を達成できなかった場合の罰則規定作りを急ぐ
  3. 実務者レベルの会合を1回増やし、2000年中に計3回開催
を決めました。つまり、当初の 2002年発効目標は黄信号になったわけです。黄信号といえども、状況的には赤信号と判断した方が正しいでしょう。

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COP6(ハーグ,オランダ, 2000年)はどうなったの?

 以下のようなニュースの進み方で、相変わらず各国の利害に絡んで応酬が続いたことを理解して下さい。これらを読むと、上記の赤信号になったという印象が一層強くなります。クリントン政権が末期となり、大統領選挙およびフロリダ州の得票の扱いですったもんだする期間とオーバーラップした COP6開期中、アメリカはまず批准しそうにない状況が2000年中は続き、ブッシュ氏が政権誕生したとたんの2001年3月には離脱表明をするという、なんとも人を食った(その食われた人の典型が日本人であり、米国が-7%など呑むはずがないから日本も -6%を呑まなくて済みそうという期待をしていたCOP3では、クリントン政権は足をすくうようにしてすんなり合意、日本は-6%をやむなく呑んだのに、今度は勝手に離脱、じゃ日本も離脱かというと、京都で開催され議長国であった日本としては日米という関係を超越した責任が有るのは当然だし、それが無くても米追従は米属国の印象を自ら宣伝することになりかねないという苦しい状況に追い込まれた)ような話になってます。そのほか排出権問題も難航しそうな状況にあります。 2002年までに批准をというのにそれができないとなると、2012年という目標達成最後の年まで 10年を切りますし、批准する年までは恐らく努力もなされず CO2 排出量も増え続けるでしょう。今でも 1990年から見れば10%以上増えている国が多く、とても 2002年以降、批准したからといって達成できるとは思えないわけです。そうなると、今批准しない国はペナルティーを払わなくてはならないことになっているので、どうせ払うんだからと努力目標も失いかねません(もちろんすべて 2000年のことです)。
 以下をごらんいただくと、この問題がいかに新聞・マスコミをにぎわしているかよくわかります。COP5までと比較して、記事の数が全く違います。いよいよ大詰めでのどたばただからです。
 なお、もしこれらのニュースを逐一見てみたいと言う方がおられる場合、この項目を一々クリックしてそれらのページに繰り返し戻られると、たとえ各ページがみなさまのキャッシュに貯えられたとしても、毎回html を解釈してページ仕立てする作業は必要なので、結構時間がかかります。非常に日程が込み入っているところは、そのページの中で順に追いかけられた方がずっと速いと思います。詰まっているところは次々と連続になっています。

 これらは、各国の思惑のぶつけ合いであすが、日本やアメリカがそこでの取り決めを期待して動き始めている様子は以下の記事に示されています(2000年分)。とくに、森林の吸収については COP3 でも「含めることができる」とあり、どう含めるかが争点です。日本は当初森林全体で 3.7% と計算しており、それを固執しようとする政府と、 管理している森林に限る として3.2%を提案する環境庁がぶつかり合っています。アメリカは、炭酸ガス排出量に関し最も責任が重い国の一つですが、森林を入れたらそのほかの削減努力はほとんど不要となってしまうほど森林があります。これでは、一体 COP3は何であったのか、というほどにばかげた話だと思いませんか? こういうことをまともに提案してくる国なのだし、日本も変わらない国(ここでもアメリカの傘に入ろうとしている)なのだということに他なりません。

    以下は、温暖化防止対策への企業などの取り組みの COP6中のニュース




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COP7(, 2001年)はどうなったの?

 以上のように COP6開期前後が米大統領選の決着時期と重なり、クリントン政権で副大統領を務めたゴア氏がブッシュ氏に総得票数では上回ったものの、大統領の座を決める支持州の数では追いつかなかったこと、その僅差を巡って得票のカウント方式ですったもんだしたため、ブッシュ氏が大統領に就任するまでに例年より数ヶ月遅れを伴う事態となり、京都議定書問題も米国ではぼけていた印象が有ります。ブッシュ氏はその冷めた印象の中、就任直後から京都議定書に牙を剥き始めたかのような態度に出ました。京都議定書離脱を宣言し、ハーグ後の再会COP6ボン会議に至るまで、すったもんだがありました。日本もその経過の中で森内閣から小泉内閣に変わり、環境庁が環境省に変わったものの、幸い川口環境庁長官は環境相として継続になりました。しかし、温暖化問題は外交問題と言うこともあって、外相に田中氏が就任、その三者の間で激震地の米をどう説得するのか、複雑なやりとりがありました。そこへ経済界の意見、EUの意見、途上国の言い分が交錯し、さらに野党の小泉人気への反発という裏をちらつかせての攻めが有って、ともかく COP6延長会議に対応する3月末から7月中は、政治を楽しむことが趣味の人には、毎日が天国だったのではないでしょうか?。


 このようにして、アメリカはというよりブッシュ政権は2001年3月
京都議定書離脱を唐突に宣言しました。その理由は、温暖化原因について科学的根拠がはっきりしていない、やみくもに削減を達成しようとすれば産業界への打撃は大きく、不況下にある世界経済に悪影響を与える。途上国に削減義務が無いのは平等の原則からもおかしいが、先進国の削減を途上国が食ってしまうということ。そして、もっと理に叶った代替案を出すと表明しました。が、その代替案はほぼ一年出ませんでした。COP7までには出すつもりでいたのでしょうが、2001年9月11日には世界を震撼させたニューヨーク・旅客機を使った同時自爆テロの影響でそれどころではなかったということも言えなくは有りません。COP6の不幸は米大統領選と重なりさらに上述のように得票のカウント方式のごたごた。そしてCOP7の不幸は、直前のこのテロ事件と表面的には言えます。
 2001年7月、COP6の延長会議が開かれ、世界はそこでブッシュ政権が代替案を出すと思っていたのに、出さずじまい。11月のCOP7でも出し渋り、ついに「代替案をいつまでに出すと表明したことはない」としらを切る態度にまで出たのです。それでも、一年を過ぎてはいくらなんでもまずいと思ったのか、2002年2月になってやっと代替案を示しました。それは、京都議定書と比較してとても効果があるとは思えないものとの評判です。そして、米政権の膝元でその案では90年比で米国の排出する温暖化ガスは 35%増えるという予測さえ出されたのです。
 これらの動きは、大統領選のごたごた、テロ事件が有ったからだと言えるでしょうか? 表面的と書いたのは、こういう事実が米国民の視野から京都議定書・地球気候変動問題を遠ざけてしまった要因にはなっているものの、ブッシュ氏の政策はどういう状況でも、この結果を引き出したでしょう。ただ、やりやすかったかどうか、不幸な事件がブッシュ流のエネルギー・環境政策には有利に働いたということと解釈できます。それなら、カウント方式で逆転は十分ありえた無念のゴア氏が政権を執っていたらどうだったでしょう? 私は、結局共和党の反対にあって大変苦労した、あるいは、結局世界第一次世界大戦後の世界平和を実現するための国際連盟を発案しながら自ら離脱したとき同様、大統領の思惑とは反対に、議会決定で離脱しなくてはならなかった可能性も十分あり得ると思います。すなわち、もし2006年ごろの米国の立場が世界から非難されるような状況になっているなら、ゴア氏にとってむしろ、怪我が小さかった。なぜなら、もし僅差でゴア氏が政権を執っても結局議定書離脱で大統領のプライドを大きく傷つけられるより、今はブッシュ氏に離脱宣言させて世界から批判を浴びさせ、次の大統領選ではやはり米国は離脱すべきではなかったという空気の中、悠々とゴア大統領のお出ましというシナリオの方が、まだ若いゴア氏にとってはずっと居心地の良い座を射止めることが可能かも知れないのです。ゴア氏がそう思っているかどうかは、わかりませんし、そんな論調を私は新聞で見たことはありませんし。
 さて、これに対して、日本の対応はどうであったでしょう。振り返って、01年3月のブッシュ政権京都議定書からの離脱宣言の後、日米首脳会談で小泉首相がブッシュ氏と会ったとき、米国の復帰を促すと意気込んで出立したのでしたが、効果は無し。ずるずると、復帰を促すという言い方で COP7まで来てしまってもあいかわらずブッシュ政権は復帰する態度を見せませんでした。そして、上記代替案を出したとき、日本政府はまず小泉首相や川口前環境相(このときは外相になっていた)は、「傾聴に値するところがある」、とすり寄るかの印象の答弁。あれだけ日本の森林による吸収の算定分についてねばり強く交渉したと評価された(私はそうは思わなかった)川口外相が、どうして米を非難しないのか、不思議なことでした。京都議定書を作成した COP3議長の大木環境長官(当時) が環境相に復帰していましたが、その大木大臣も当初は米に遠慮がちの評価、その直後に批判的な批評をしたに過ぎません。日本は、完全に米政権の属国という印象を強めました。一方、テロ報復戦争では、米と共同歩調を取った英国は、ブレア首相が米の代替案に真っ向から抗議しました。どうして日本はこれほどまでに、米国にものが言えないのでしょう。石原東京都知事ならどういうのか、知りたいですが、そういう報道記事を私は知りません。事情がわからないわけではありません。日本は米国との貿易ができなくなったら、あっという間に凋落です。だからと言って、もし米国の京都議定書離脱を横暴だと信ずるのなら、それはきちんと主張すべきではないでしょうか。このあたりの区別ができないと、いつまでたっても世界から信頼され、尊敬される国にはなれるわけがありません。国連の常任理事国になる、ということはそういうことができなければどうしようもないわけです。
 ブッシュ政権誕生後1年、また小泉首相も二年目を迎え、ブッシュ氏はテロの対応のまずさが露呈されて困難に陥り、小泉首相は力づくの構造改革などがはっきりした効果が見えてこず、それでもなお強引に有事法などを提案しながら、ムネオ問題や防衛庁の個人情報問題など、続々と改革路線を止めるような不祥事が続出。小泉氏もやはり二年目は相当危ないという症状を示すに至っていますね。
 上述の、ブッシュ大統領の離脱宣言の理由に、科学的根拠の希薄さが掲げられています。これについても、このCOP7前後にわたって、なんと、お膝元のブッシュ政権の組織から無いはずの根拠がきちんと出されています。ブッシュ氏にとってもっとも痛手となったであろうものは、EPA(米国環境保護局)の出したもので、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)3次レポートを追認(温暖化は人為的経済活動により排出される温暖化ガスによることなど)するどころか、米国での 2100年の気温の上昇量は IPCC3の予測値を大きく上回るものでした。ほかの政府機関の出した科学的根拠には沈黙を保っていたブッシュ氏も、これには黙っていられず「政府役人が作ったものだ」と相変わらず科学的ではないと評価する始末です。そのEPAも私には不可解なことをするもので、10日も経たないうちに今度は米産業界にすり寄るように、環境規制(エネルギー設備などからの排出ガスなどへの)を緩めることを決めています。これもアメリカ流の駆け引きかもしれません。こうすることで、科学的根拠を否定したブッシュ氏をやんわりと非難しているのかもしれません。でも、おそらくそれは当たっていないでしょう。もし、そうであるなら、それはそれで由々しきことで、結局のところ米国の駆け引き合戦に世界は翻弄されている証拠になりかねません。
 さて、米国の対応はこのあたりとして、日本は批准することに決めました。決めるも何も、決めないことはできようはずもありません。日本が望んで COP3を京都で開催するよう立候補し、そこで日本が議長国となって議定書を作成しておきながら、批准しないとしたら、歴史の教科書で必ず出てくる「米国は国際連盟を提案しながら加わらなかった」ということと同列に並べて今後ずっと言われ続けることになるでしょう。しかも、温暖化は日本も米国も議定書を批准しなければつぶれることとなり、その結果温暖化がまさに進んで被害が出たとすれば、その原因はアメリカと日本だと名指しして非難されることになるわけです。せっかく世界が一丸となって取り組もうとしたのに、それらの経済大国が、その経済大国の地位保全を図って離脱し、議定書を反古にしたのだと。これを日本の子供に、日本の教師が教えなくてはならないことになります。それとも、歴史の教科書からある種の事実が抹殺されていると言われているように、この検定で抹殺されるのでしょうか?
 そんなこと言っても、アメリカが離脱して経済活動を有利に進めることが明らかな状況で、日本の企業は太刀打ちできるのだろうか、という心配は当然おこるわけで、経済界は非常に心配しています。だからこそ、小泉政権はなんとしても、ブッシュ政権を離脱から復帰へと誘導しなくてはならなかったわけです。その迫力を感じなかったのは私だけでしょうか? アジア歴訪(日本>韓国>中国)で訪日するブッシュ大統領との日米首脳会談で、再度チャンスが来ましたが、議定書について、相変わらずどんな要求の仕方をしたのか、わかりませんが、全く効果は有りませんでした。
 そういう次第で、日本は少なくとも 2012年まで、というよりとくに12年に近づくにつれて厳しい局面を迎えることになると予想しますが、それをどう進めるべきか、政府が再び温暖化防止大綱を作成しました。以下の通りです。

エネルギー関連 CO2の削減対策(2002.3)
  産業部門(7%減) 民生部門(2%減) 運輸部門(17%増)
省エネルギー
  • 自主行動計画に基づく削減
  • 高性能ボイラーなど技術開発と普及
  • 大規模なオフィスビルのエネルギー管理
  • トップランナー方式の適用の拡大
  • 家庭でのエネルギー管理
  • 低公害車の開発、普及
  • 海運へのシフトと物流の効率化
  • 公共交通機関の利用促進
新エネルギー
  • 電気事業者の新エネ利用促進
  • 太陽光発電、太陽熱利用、風力発電、生物資源エネルギーなどの導入補助、技術開発
燃料転換
  • 老朽石炭火力発電の天然ガスへの転換
  • 天然ガスパイプラインの安全基準の整備
原子力推進
  • 2010年度の原子力発電量を 2000年度の3割増とする


新大綱が国民に求める省エネ策
(二酸化炭素に換算した削減見込み量・万d)
  • 冷房温度の引き上げと暖房温度の引き下げ
4-85
  • 電力消費の少ない電子レンジの利用
35-68
  • 食器洗い機の導入
    188-160
  • 節水型シャワーの導入
86
  • シャワーを1日1分家族全員が減らす
93
  • 家族が同じ部屋でだんらんし暖房と照明を2割減らす
341-467
  • 風呂の残り湯を選択に使う
24-46
  • ジャーの保温を止める
44-85
  • 歯磨き中に水を止めるなど洗面所の節水
9-17
  • 駐停車時のアイドリングストップ
14-26
  • サマータイムの導入
25-123


 下の表では国民に考えて欲しい項目が並べられていますが、あまりに細かいですね。これをどうとるかですが、国民サイドからは「いちいち歯の磨き方まで指示されたくない」ということになりそうです。大綱を作成した側からすれば、「わずかこれだけの努力を怠るだけでこんなに温暖化ガスが増えてしまう」というアピールであって指示ではないということでしょう。が、それなら取り組もうと取り組まなかろうと、納得した人だけが取り組めば良いのかというと、削減量が数値で具体的に示して有る以上、1.2億人がこれだけの努力をすると、2%削減が可能ということであろうから、国民の自主性に任せていたのではとても達成はできそうにないのです。いや、この表が示されたのは、日経新聞であり、中日新聞は要約ででした。この大綱を一般国民はどうやって知ることができるのでしょうか?全ての新聞に掲載されたとしても、目にとまるかどうかがまず怪しいのです。興味が無ければとばしてしまうでしょう。さらに、たとえ目にとまっても、納得してこれを実際実行するかどうかは別問題です。大多数は実行しないと思うと、つい取り組もうという意識が薄れるのは否めません。ということで、効果のほどはなかなか期待しづらいわけです。実は、こういうことを言うのは私だけではありません。新聞記事にも、この大綱を作ったからと言って効果が出るとは考えられないという評価がなされています。また、多くは上にすでに示した 98年の旧大綱で示されています。それならそれらは既に実行に移されているのかというと、ほとんど移されていないのではないでしょうか。たとえば、両方に有るのがサマータイムの導入。この話題は98年は頻繁に新聞に出ていました。が、98年も後半にはいるとほとんど記事で見なくなり、99年以降はほとんど話題にならなかったと思います。戦後もポシャッたサマータイムなので、当初から実行に移すのは難しかろうという評価もあったのであり、結局はかけ声倒れになったものと思っていました。そしたら、今回再びサマータイム導入と取り上げられているので、あらあらという印象です。
 さすがに、原発依存は無謀とも言える 5割20基増設という案は縮小され、3割 10-13基増設と控えめになりました。98年から02年3月までに起こった重大原発事故としては、敦賀2号機の熱交換器破断事故、敦賀1号機のシュラウド亀裂発生、JCO被ばく死亡事故、浜岡原発2号機緊急炉心冷却系統配管破断事故、同原子炉格納容器亀裂発生と続いており、国民の理解が進むと言うより減ってしまいました。その間、芦浜は30年にわたる誘致の是非について三重県北川知事が白紙撤回を宣言したり、新潟県巻町でも反対派町長が町の保有する立地場所の土地を電力会社以外に売却するなどの逆風が吹いています。電力は景気の低迷で余っているとさえ言われています。そんなときに電力自由化になり、電力会社の電気代が高いという印象が強くなってもいます。計算上は原発は発電単価が安い (5.9円/kW)とされていますが、建設には5000億円(100万`h級)程度が必要とされ火力発電所の数倍になり、電力会社としては減価償却するまで大変厳しいことになります。たとえば、上記敦賀2号機や浜岡1号機の停止期間中は 2億円/日の損失になるという。電力自由化で新規参入するグループは絶対に原発を作ることは無く火力になるでしょう。新エネルギーで参入するところももちろんあろうけれど、原発一基分を新エネルギーで賄おうとしても大変に無理が有ります(最大級の風力発電であっても、4000基ほどが必要となるのです)。例の米で破綻したエンロンは日本にも電力自由化をの状況下で多くの発電所を計画していました。火力については石炭が多かったのです。これは温暖化ガスを最もたくさんはき出す燃料です。一方、最も安上がりな発電所を作ることができるのです。炭素税でもかけない限り、新規参入組はそういうことになるのです。そういう安い発電をする新規参入組と、既存の電力会社は自由競争を行わなくてはなりません。そういう状況で、地元との交渉が 30年規模で必要となる原発を既存の電力会社が作りたいと思うかどうかでしょう。
 さらに原発依存度が高くなると、夜需要が少ないときの発電量をどうするかという問題が顕在化します。今のところ、原発はベース電力を担い、需要変動分を火力で賄うという設計になっていますが、原発が多くなりすぎると負荷変動させられないばかりに、発電分を何かに貯えなくてはならなくなります。それが今のところ揚水式発電所で水の位置エネルギーとして貯えることになりますが、つい最近、中電は140万kW級の揚水式発電所計画を延期しました。理由は需要が無いからと。
 こういう状況で単純に炭酸ガスの放出をする火力を減らし、原発を増やすという数あわせは意味がないことになります。電力会社ははいそうですか、と単純に了解できないのではないでしょうか。
 産業界は、7%削減に大きく反発しています。日本の削減数値目標は-6%ですから、1%ぐらい産業部門としては太っ腹に引き受けたらどうだ、と思われるかもしれません。実は、-6%という数字のうち、-3.9%については森林の吸収でカウントできることが COP7で認められました。川口(当時)環境相の粘り腰のたまものと評価されているものです。ですから-2.1%が削減目標です。それを産業部門で-7%とは何事だというわけで、経団連会長は90年比0%でも良いと言っています。不足分は排出権取引でなんとかなるという言い分です。結局、これは運輸部門の不達成分を食わされていることになるのです。
 その運輸部門はすでに相当増えてしまっています。自家用車部門ではなんと40%も増えてしまったのです。それを-2.1%にもってゆこうとしても、できようはずもないので、運輸部門はマイナスではなく +17%と設定したわけです。それを産業部門で吸収しろという風に写るわけです。なぜ、運輸部門には甘いのか、想像ですが日本が世界に売ることのできる技術はこのところ IT はかなり空洞化してきていて、ドル箱的になっているのは自動車部門です。その部門は貿易摩擦を少なくするためには内需も拡大させなくてはならないとすると、国内で乗用車なども売れなくてはいけないわけです。もし、自動車を使わないで、という政策を進めたら、日本経済への打撃は大い過ぎるという判断が働いているように思えます。旧大綱では「自転車利用を促進すべく、駐輪場、道路の整備、鉄道などへの自転車の持ち込みを可とする方策も立てることを目指す」という項目がありました。今回はありません。公共交通機関の利用という項目はありますが。自転車利用というのはあまりに車利用とのギャップが大きいし、自転車利用者は、欧米を見ても自転車が好きな人が乗るから、言っても言わなくても効果は同じという判断があると思います。やはり、自動車という日本経済の牽引車に打撃を与えたくないのでしょう。
 この大綱が効果を現すかどうか、残された時間は6年なのです(目標達成は2008-2012年の平均)。
 日米以外の批准状況はどうでしょう? EUが仕掛け人ですから、当然批准しています。でも、デンマークなどは一時危ういことが有りました。90年は特殊事情があって少なかったから、それを基準値に使われると厳しいというもの。が、その後その提案というか要求は引っ込め、批准しました。米国の隣のカナダは米国以上に一人あたりの排出量が多いのですが、北国だからしょうがないでしょう。そのカナダが米国が工業的競争力を問題にして離脱したのだから、カナダととしても、米に大して競争力を失うわけには行かないという理由で、批准をしないことにしました。オーストラリアも、米に追従しました。オーストラリアは、一人あたり温暖化ガス排出量は米並みに多いにもかかわらず、排出目標値は実は+8%と削減ではなく、増加さえ許されているのです。これについて、私は勉強不足で理由がわからないのですが、それにしても、そんな楽なオーストラリアが批准をしないというのは、あまりにわがままに思えます。下手な邪推をするなら、オーストラリアは石炭を大量に輸出しているので、石炭を天然ガスにシフトされると売れなくなり苦しい、ということを暗に態度表明しているのかもしれないとも思うのですが、一説にはハワード首相の環境冷遇姿勢というものも有ります。ブッシュ氏と同じ見方ができるというわけです。石炭説は、豪は天然ガスも算出しているという事実で、説得力が少なくなるかもしれませんが、石炭は貿易額で11%を記録しており、天然ガスはその何分の一程度ということで、石炭説もかなりの可能性の高い話とはおもいます。さて、大口のロシアがまだ批准していません。ここは、牛歩的になりました。米の離脱で、批准を急ぐ理由はないというのが、理由です。別に遅める理由も無いはずですが、なぜなのかわかりません。実施批准する意欲が失せたということは有りそうです。ロシアは 90年まではまだ共産政権崩壊まで至って居らず、軍需産業も十分機能していて、経済崩壊前で人々の生活レベルも高く、エネルギー消費も十分多かったのですが、90年後急に経済事情が悪化、温暖化ガス排出量も激減し、目標値の達成いはいともたやすく、何もしなくてもすでに十分すぎる余裕を持って達成できてしまっているのです。その余裕分は経済事情の悪化しているロシアとしては財源です。排出権として売ることができるわけです。その排出権を最も買ってくれそうだったのが米国だったと思われます。その大得意さんが、離脱してしまったわけで、思惑が大きくはずれたわけです。この想像が当たっているかどうか知りませんが、私が新聞記事への同様のコメントをした後、こういう論評が出たことがあるので、まんざらはずれたことを言っているわけではないと思います。ともかく、ロシアはこうして京都議定書で儲けるという旨味が消えてしまったわけです。ロシアとしてはいまさら急ぐ理由はないという状況もわからないでは無いのですが、待ったからと言って何か良いことがあるかというとそれも無いはずです。待つことで米国が戻るというなら、それは確かに良さそうですが、そういう兆しはありません。
 それでは、以上のような流れを、以下に新聞記事の見出しで日付とともに追いかけてみます。


 以下は、産業界や外国がCOP7での決定にどう対処しようとしているかの動きです。