青木さんのシビック・ハイブリッド論
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シビック・ハイブリッドのカタログ燃費は本当なの?

 千葉県在住の青木と申します。2003年10月に、シビック・ハイブリッドを購入しました。
 シビック・ハイブリッドのカタログ燃費は29.5Km/Lですが、本当にそんなに走るのでしょうか?
 普通に考えると、Hondaのハイブリッドシステム「IMAシステム」では、とてもそんなに走れるとは思え ません。若井先生がHPに書いておられるとおり、「燃費が良い理由が判らない」ハイブリッド車です。
 通勤に使いながら、いろいろな所を走りました。その結果、カタログ値に近い燃費が実際に出せることが 判りました。なぜ、そういうことが可能なのか私なりの分析で解説してみたいと思います。

1. 筆者紹介

 いきなり解説されても、皆さん困りますね。一体何者だ?という感じでしょう。なので、私がどういう仕事をしている人間かということぐらいは紹介する必要があります。ちょっと長くなるので、自己紹介が要らないと思う方は読み飛ばして下さい。
 今は、システムをお客様にお渡しする前にシステム評価試験を行って太鼓判を押す仕事をしています。これはこれで重要な仕事ですが、数年前までシステムの客先提案・システム設計・ソフトウェア開発の仕事をしていました。その仕事は大変でしたが、難しい分やりがいは大きかったし面白いものでした。
 私がどの様なシステム開発をおこなっていたのかは、業務上の守秘義務があるためあまり詳細に語れません。以下に私が開発して、今現在多くの利用者がいるシステム例を1例示します。
 まあ、何を書いても「年齢41歳のただのおっさん」という事実に変わりはありませんが...

  
1. 1 モバイル通信
    数年前、ある通信事業者が定額制のモバイル通信サービスを開始しました。携帯電話やPHSを使った、移動しながらインターネットに接続したりメールを使うような通信をモバイル通信といいます。電話で通話ができるのだから、データ通信も簡単にできそうに感じるかもしれません。ところが、移動しながらインターネットに繋ぎ続けるのは、実は簡単ではありません。
 定額制のサービスを実現するためには、通話用の回線接続ではなく安価なパケット接続にする必要があります。回線接続なら、無線チャネルの切り替えを交換機側で行いますから、繋ぎ続けるのは簡単です。通話している人が移動して隣の無線局のエリアに入ると、交換機側で無線チャネルを切り替えて通話が継続されます。これが回線接続です。
 パケット接続では、隣の無線局に移動するとパケットの発信元が別の装置になったように見えます。つまり、それまでの通信は一旦切断されて、別の装置から接続し直したような形になります。
 インターネット接続は、TCP/IPというプロトコルを使っています。プロトコルは階層を持っていて、TCP/IPより下位に物理層・リンク層があります。パケット接続では、隣の局へ移ると物理層・リンク層が一旦切断されて、別の交換機から再接続されるイメージの動作になります。こういう動作をTCP/IPは想定していません。リンク層が切断された時点でTCP/IPも切断してしまいます。その後再接続しても、ユーザー名とパスワードのやり取りからやり直しです。そんな動作では、はっきりいって誰も使ってくれないでしょう。
 TCP/IPが切断しないようにするためには、TCP/IPとリンク層の間にもう1層プロトコル階層を置く必要があります。その階層を処理するため、中継装置を置いて制御します。そして、リンク層が切断してもTCP/IP側を接続したまま、再接続してくるのを待てば良いことになります。この目的で、専用プロトコルを設計しました。設計者は、私を含むお客様の技術者とメーカー側技術者数名です。
 こういうプロトコルを設計するときのポイントは、
  1. 電波が届く全てのシチュエーションで接続できて通信が継続されること
  2. 電波が届かない状態を含め全てのシチュエーションで確実に切断されるこ
 これだけなのですが、想定されるシチュエーションを全て網羅する通信状態の組み合わせは膨大です。その全ての状態の組み合わせで、上記2条件を全てクリアするのが設計者の仕事です。
 幸い、このシステムでは自分でも納得できる設計ができたと自負しています。今では、多くの人がこのシステムを使っています。実は、私も1利用者として使っています。なかなか自分が作ったシステムを自分で使う機会はありません。また、そういう機会があっても設計に自信がない場合は、使わないかもしれません。システムが私の手を離れてからずいぶん改造されているようで、動作がちょっと変化していますが、ベースのプロトコルは変わりませんから私は安心してシステムを利用しています。

  
1. 2 システム開発者が考えるハイブリッド
    そういう仕事をしていたため、物事や手順を「システムとしてどうか」という観点で見る習慣が身に染み付いています。
 さて、ハイブリッドというものを、単純に良いものという感覚で見ている人が多いように感じます。本当にそうでしょうか?そもそも、ハイブリッドの定義とは何なのでしょうか?2つのものを組み合わせたら、それだけでハイブリッドですか?
 鉛筆と消しゴムを組み合わせてみましょう。鉛筆と消しゴムは、機能面で見ると完全に関連がありません。「書く」と「消す」全く逆の機能のものです。運用面で見ても、完全に分離しています。書きながら消すことは無いでしょう。こういう、全く関連性が分離したものを組み合わせる場合は、利便性のみに着目して設計すれば大丈夫です。鉛筆に消しゴムが付いたものは、実際に売られています。使いやすいかどうかはともかく、消そうと思った時に消しゴムがなかったということは避けられますから、それなりに利便性があると考えられます。この利便性が「付加価値」で、消費者に欲しいと感じさせたり高く売るために必要なものです。でも、これはハイブリッドシステムでしょうか?アイデア商品の部類になると思います。
 機能や運用方法に関連性がある複数のものを組み合わせた場合に、初めてハイブリッドと呼べるような気がします。ところが、そういうハイブリッドシステムを作るのは、実は設計以前の段階でよく検討しないと変なものができあがる可能性があります。どんなに設計で頑張っても、組み合わせと要求仕様自体がそもそも無理がある場合が多いのです。
 エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドは、この観点から見て大丈夫です。それぞれの短所を長所が補完してうち消すことができる組み合わせです。これだけ整合性がある例は珍しいほどです。
 では、それぞれの長所と短所を列挙してみましょう。

「エンジンの長所」
  • コンパクトな発動機で大きな出力が得られる。
    これは、自動車のパワーユニットとしては非常に重要な要件です。もし莫大なパワーが出せる原子力エンジンが実用化されても、車に搭載できないほど大きかったら当然使えません。
  • エネルギー源として、ポータビリティーに優れた液体状の石油生成物を使う。
    これは、あまり意識していない人が多いのですが、1度の給油で簡単に数百キロを走れるというのは、非常に大きな利便性を生んでいます。給油時間も短いし、給油回数も少なくて済みます。
「エンジンの短所」
  • 停止状態から、自己起動できない。
    これができないために、一時的な停車時でもエンジンを回し続ける必要があります。移動していないのに燃料を使うのは非常にもったいない事です。
  • 部分負荷で効率が悪い。
    加速時はともかく、巡航時にはエンジンの性能が高いほど部分負荷になるでしょう。しかし、困ったことに車の走行シチュエーションの多くは巡航で、低効率で運用しています。
「モーターの長所」
  • 停止状態から自己起動が可能。
    通電を止めるだけで簡単に停止できますし、電流を流せば回り始めます。
  • トルクがある。
    ただし、馬力は小さめです。馬力の割にトルクがあるという性格があります。
  • 減速時にエネルギーを回収できる。
    車の運動エネルギーを使って発電することができます。発電した分抵抗になって、ブレーキ効果が得られます。これは、エンジンに真似できない特技です。
「モーターの短所」
  • トルクの割に馬力が小さい。
    まあ、最高速度にこだわらなければ実用上はあまり問題ありません。
  • エネルギー源として電源を持ち運ぶ必要がある。
    これが、結構致命的です。現状の蓄電池では充分な航続距離が得られませんし、充電時間も長いので利便性に難があります。ましてや、暖房・冷房といった快適装備を使いたいなんて要求はとてもクリアできそうにありません。エンジンなら、どうせ熱を捨てていますから暖房は簡単です。記憶に残っている一番古い車にも暖房はあったと記憶しています。でも、モーターだけで車を作ろうとすると、そういう簡単なこともネックになります。
 他にも長所・短所があるかもしれませんが、私が思いつくのはこの程度です。こうして、長所と短所を並べると、お互いの短所を長所で補完できるような気がしませんか?お互いの得手・不得手がうまくかみ合っていて、それでいて短所が相手の長所をスポイルしない性質のように見えます。
 ハイブリッドなシステムを考える上で難しいのが、一見長所が短所を補完するように見えても、実際には長所が短所にスポイルされて生きてこない場合があるということです。たとえば、ヘリコプターと飛行船はどちらも垂直に離着陸できて水平飛行できます。ヘリコプターは割合高速で飛行できますが、滞空時間が短いという欠点があります。飛行船は高速飛行はできませんが、滞空時間が長いという長所があります。だからといって、この2種類を組み合わせるのは無謀だと思います。あまり詳しくないのですが、実際にそういう試作機を作った国があったらしい。結果は、絵に描いたような失敗だったようです。操縦し難く、高速飛行するには空気抵抗が大きく、結果的に航続距離が短い...試作するまでもないように思うのですが...作った人たちは大真面目だったんでしょうね。
 でも、ちょっと計算すれば判ったはずです。速度の2乗に比例して空気抵抗が大きくなるのですから、大きな機体では大して速度を上げないうちにエンジンが力負けするのは自明なことです。設計者は、開発全体に影響が出る部分は面倒でもきちんと計算しないと設計者失格です。あんまり紹介したくないのですが、真っ当な設計をやってきたと自負している私としては見過ごせない、駄目なハイブリッドシステムがあります。普通は、そういう駄目なシステムは自然淘汰されます。ところが、この駄目なシステムは今も作られています。そのシステムというのは多目的ダムです。このダムのミッションは3種類です。治水・利水・発電を運用で工夫して実現しようというダムです。ところが、ミッションそのものに矛盾があります。治水をしたいならば水位が低いほど良いのは明白です。でも、それでは利水も発電もできません。だから、多目的ダムはやたらと大規模なダムを造り、中間水位で運用するしかありません。簡単に「中間水位で運用」と書きましたが、実際には非常に運用が難しいと思います。発電機能を無視して、治水と利水だけの組み合わせだけで考えても運用は困難だと思います。利水の観点で水の需要を考えると、田植えの時期と夏場にピークが来ます。田植えの時期は問題ありません。梅雨に備えて水位を下げたいところでしょうから、むしろ運用上は好都合というものです。問題は夏場です。梅雨時期は、洪水が起きないように貯水量を少な目にして運用するしかありません。梅雨の末期に雨が降らないと、ダムの水位は低いまま夏に突入することになります。当然、水不足になります。多目的ダムのシステム運用要件通り運用すれば確実にそうなります。ニュースで、ダムの貯水率が低いという報道がされて、水不足で大騒ぎになります。中には、もっとダムを造れという人まで現れる始末です。でも、私から見れば「仕様通り」です。だって、そういうシステムです。貯水率が低くて当たり前です。そういう運用しかできないのに、さらに発電もしようというのはもう滅茶苦茶です。さらに大きいダムを造って、運用誤差をより小さくするしか手がありませんし、実際そういうダムがたくさんあります。でも、もっと安価でそれぞれの用途に合わせたダムを造るほうが、はるかに安上がりで効果的ではないかと思います。
 こういうことを掲示板で書くと、「根拠を示せ」という人が少なからずいます。ちょっと調べれば、証拠はいくらでも見つかりますが、その程度の手間も惜しむ人が世の中たくさんいるようです。そういう人には、システムを作る仕事に関わらないで欲しいと思います私がこういう話を書く根拠として、熊本県の川辺川ダムの例を紹介しましょう。このダムは、多目的ダムとして計画されましたが、現在再設計状態になっています。このダム計画の一番の矛盾が、発電機能です。むやみと大きなダムを計画したため、上流の村が丸ごと水没する計画になりました。村丸ごと水没というのは尋常ではありませんが、岐阜県では徳山ダムという前例がありますね。問題は、湖底に沈むエリアに落水式の水力発電所が6基あるということです。この6基の発電能力は、ダムができて発電する予定の発電能力より大きいのです。さらに、水没しないけど道路が水没してメンテナンスができないために、発電を放棄する水力発電所が1カ所あります。莫大な国費を投入して、何でこんな欠陥製品を作る必要があるのでしょうか?このダムは、治水・利水にも費用対効果の問題があるダムです。さすがに、多くの人が異議申し立てをして、現在白紙状態です。でも、今まで多くのダムが異議を無視して作られています。さて、徳山ダムは本当に妥当なダムでしょうか?それは、これを読んだ人が自分の手で調べて下さい。
 かなり無関係なことを書いてしまいましたが、仕事上で「これとこれを組み合わせてハイブリッドにできないか?」という問い合わせがたくさんあったということを最後に書いておきたいと思います。そんなに簡単なものじゃないって...製品にできるアイデアには今だお目にかかっていないと断言して、長すぎる自己紹介を終わりたいと思います。


2.ハイブリッド車時代到来

21世紀を迎える直前に、画期的な自動車が登場しました。トヨタのプリウスです。

  
2. 1 先進のシステム・プリウス
    私はプリウス登場前から、モーターとエンジンを組み合わせるシステムを漠然と考えていました。
 でも、私が考えていたのは「電動アシスト自動車」です。要は、減速時に無駄に捨てているエネルギーを回収して、次の加速時に使うだけのハイブリッドシステムです。プリウスは、電気自動車の欠点である航続距離の短さをガソリンエンジンの長所で補完した、電気自動車ベースのハイブリッドシステムと考えることができます。しかも、この方法ではエンジンを常に高効率の運用状態に保てます。なるほど、こういう方法もあったのかと感心しました。
 しかしながら、このシステムに対して感心すると同時に不満な点もありました。それは、以下の2点です。
  • 故障したらどうする?
     私が開発に携わったシステムは、故障しても停止してはいけないシステムでした。だから、様々対策を行いました。設計作業は、異常時の対処方法の設計のほうが多かったくらいです。だから、システムが故障したときの対応方法は非常に気になります。自動車というシステムはシンプレックスシステムです。故障したら故障個所を交換するか修理するまで使えなくなる性質があります。車の特性が電気自動車に近い分、故障したときに対処に困りませんか?JAFを呼んでも、故障個所によっては手に負えない可能性があります。しかも、システムが複雑になればなるほど故障率は高くなる傾向があります。新しいシステムは、新しいという事実だけで故障率が高くなります。プリウスは凄い車だという感想と同時に、こういう新しいシステムはしばらく購入を控えた方が良さそうだと感じてしまいました。まあ、今時の製品の故障率はかなり低いので、かなり運が悪くない限りはそういう事にならないだろうとは思うのですが、自分の運を私は過信していません...
  • 電池が多すぎ
     プリウスは電気自動車に近いシステムですから、当然電池がたくさん搭載されます。でも、私が考えていたハイブリッド車システムでは、電池は少なければ少ないほど良いと考えていました。電池は、希少金属を使っていることがよくあります。もちろん、希少金属はリサイクルで回収可能ですが、多くのコストとエネルギーが必要です。しかも、蓄電池は今のところどの方式でも非常に重いものです。だから、車にたくさん積むと車重が増えてハイブリッド化した燃費上の長所をうち消すかもしれません。少なくとも、重くなった車重はコーナリング性能・ブレーキ性能の低下に直結するでしょう。また、どうせ捨てているエネルギーを回収するだけならそれほど多くの電池は不要ですが、モーターだけで走るモードを持とうとすると、エンジンで発電した電気を蓄電して使う必要が出てきます。この場合、エンジン効率の他に蓄放電効率が影響してきます。ニッケル水素電池を急速充電すると非常に熱くなります。熱くなったということは、そこでエネルギーをロスしたことになります。重量増の影響や、蓄放電効率の影響がどれくらいあるのか、専門家ではない私にはいまだに結論が得られていません。
     プリウスに関して、私が非常に驚いたのはその価格です。大量の電池を搭載して、新規開発したシステムを積んで200万円程度の価格です。大量生産・大量販売が見込める車ならまだしも、せいぜい数万台しか売れなさそうな車がこの価格で作れるはずがない。(この点は、私の見込み違いで既に10万台以上売れています)そもそも、高価な蓄電池を積んでこの値段はほとんどあり得ないことだと思います。こんな値段で、プリウスのような新開発のシステムを売れるのは、トヨタだからです。大量生産を背景にした安価な部品調達力・世界一効率がよい生産ラインと生産システム・圧倒的資金力があるトヨタだからこそ、この価格設定が可能なのだと思います。でも、さすがのトヨタでもこの価格ではほとんど利益がないのではないでしょうか。最近トヨタはプリウスのシステムを他のメーカーにライセンス提供しています。コンピュータ業界ではよくある話ですが、ライセンス提供という商売は契約の仕方次第で大きな利益を得られます。
     プリウスは、車を買った人から利益を得るのではなく、ライセンスで利益を得る戦略車なのかもしれません。もしそうならば、トヨタの経営陣は従来のセオリーを超越する恐るべき戦略家ということになります。

  
2. 2 祝!電動アシスト自動車・インサイト誕生
    プリウス誕生に刺激を受けて、暇なときに他のメーカーでも互角の価格で作れそうな車を考えてみました。
 当時私が乗っていた車は、シビックフェリオという1.5LエンジンのCVT変速車でした。自分が乗っている車をベースに考えるのが一番楽なので、自分のプリシーに沿ってアシストタイプの車を考えてみましたが、プリウスに対抗するつもりで蓄電システム側の効率を追求した結果、非常に高価な車になりました。少なくともHondaはシビックをハイブリッド化した車を作れない...これが、当時の私の結論です。この失敗車は、後の方で紹介します。一応、ど素人ながら一生懸命考えた車です。葬り去るには惜しい。プリウスに対抗できる価格・性能の車を他のメーカーは作れないだろうと私が考え始めた頃に、インサイトがHondaから発表されました。この車は2シーター車なので、プリウスと単純に比較できない車です。そもそも製品として見た場合、全く別のカテゴリーの車ですから比較すること自体がナンセンスです。しかし、この車も商品としてはあり得ない車です。私が考えたアシストタイプの車ではありますが、余りに普通の車の延長上で燃費を追求した車というか...そこまでするの???
 まず、車体がアルミモノコック構造です。このため、車重はハイブリッドシステム込みで850Kg...  軽自動車並みです。確かに、充分な強度と安全性さえ確保できれば車は軽ければ軽い程良いのは事実です。軽ければ、少ない馬力でも加速しますし曲がりますし止まります。でも、アルミモノコックボディーは大量生産が困難で非常にコストがかかるはずです。
 エンジンに直結したモーターは、私が考えた車と同じ構造です。インサイトのエンジンは3気筒エンジンで私が考えたエンジンと同じ気筒数です。3気筒以下のエンジンは、圧縮中のシリンダーに呼応する爆発工程を実行しているシリンダーがない状態が存在します。だから、惰性で圧縮するために出力軸側にウェイトが必要です。私は、それをモーターのローター重量でカバーしようと考えました。もしかしたら、インサイトも同じ設計かもしれません。
 インサイトに関して、もっとも呆れている点は徹底した空力対策です。エンジンルーム下部のカバーや、前輪の空気抵抗を減らす為のボルテックジェネレータモドキまであります。でも、これらは空力対策としては些細なもので、システムの基本設計そのものに大胆な方法を採用しています。前輪同士の幅と、後輪同士の幅が違います。後輪の幅の方が10cm短い造りになっています。つまり、人が乗車している場所で最大幅にして、その後ろを絞り込んでいる形です。そして、車体の後縁で空気の流れを切り離して車体の後ろに回り込まない構造にしています。こういう形は、空気抵抗が小さくなります。ここまで対策を行えば、ハイブリッド車でなくとも燃費がいいでしょう。電池が少なくて軽い分、コーナリング性能も良いはずです。(非常にコーナリング性能が良いことは、一緒に走って確認済みです)
 でも、アルミモノコックボディを採用してプリウス並みの値段は無理ではないかと思います。かなり無理して、トヨタに対抗する目的だけで販売したように思います。マイナーチェンジの時に発表された「年産60台」という生産台数がそれを物語っています。そもそもたくさん売れるカテゴリーの車ではありません。でも、トヨタに対抗してハイブリッド車を販売しようとしたのは評価できます。多様性は進化の上で重要です。消費者が選択する余地があってこそ、商品は進化します。

  
2. 3 シビック・ハイブリッド登場
    ハイブリッド車の多様性を確保するためには、インサイトでは駄目なことは明らかです。
 少なくとも、同様の乗車人員を確保した上で燃費と運動性能・安全性・信頼性という部分で競わない限りハイブリッド車が多様性の時代になったとは言えません。Hondaから対抗車がでることはないと思っていました。他のメーカーはほとんど期待できないと思っていました。そういう状況で、Hondaはシビック・ハイブリッドを発表しました。この車は、私が考えた方法でコストネックになる部分を巧みに回避した車です。こういう方法があるとは、私には思いもよらない手法です。私が考えた車の一番のネックは、蓄電システムです。これは、こだわらなければ捨て去ることが可能です。シビック・ハイブリッドは、インサイトと同じ蓄電方式を採用しました。私のアイデアを捨てれば、まさにそういう蓄電システムになります。もう一つのネックは、エンジンの製造コストでした。私が考えたエンジンは、他の車種に転用ができません。当然エンジンは割高になります。シビック・ハイブリッドは、逆の手法で作られたエンジンを使っています。好燃費のヒット車・FITを量産した後で、そのエンジンをシビック・ハイブリッドに搭載しました。これなら、エンジンはかなり安く調達できます。
 この車では、モーターをエンジンに横付けするという形を踏襲しています。シビック・ハイブリッドのエンジンは4気筒エンジンですから、この実装に必然性はありません。 でも、他の形でアシストする方式にすると、ECU(車の電子制御装置)のソフトウェアを作り直すことになったでしょう。インサイトと同じ形の実装なら、プログラムはインサイトのものを流用してパラメータ(制御データ)だけの変更で済むでしょう。ソフトウェア開発は、人力集約産業です。非常に人件費コストがかかります。でも、パラメータ変更だけならば非常に安価なコストで対応可能です。シビックハイブリッドは、インサイトの開発費とFITの成功を活用して、最小の開発費で実現した車であると思われます。でも、原価は売価とそれほど変わらないでしょう。蓄電池は、余りに高価なので少な目の搭載でも利益を圧迫します。ましてや、シビック・ハイブリッドの販売台数はプリウスの1割以下です。シビック・ハイブリッドを販売しても、Hondaはほとんど儲からないと思います。赤字になるほどではないでしょうから、プリウスに競合するハイブリッド車を投入する方法としては脱帽ものの手法です。
 ここまで工夫して、シビック・ハイブリッドを市場投入したとしたら、Hondaの経営陣も恐るべき存在だと言わざるを得ません。さて、実際はどうなんでしょうね。非常に気になります。


3.ハイブリッド車を買おう!

 2003年8月、私は次に買う車はハイブリッド車にしようと考えました。。

  
3. 1 何を基準に選べばいいの?
    買いたい車は、4人が楽に乗れてそれほど大きくなくて扱いやすい・信頼のおける車です。4人乗れて大きくないと言う条件で、2車種になります。プリウスとシビック・ハイブリッドだけです。となると、あとは扱いやすく信頼のおけるという面でシビック・ハイブリッドに確定です。
 燃費優先なら違う選択肢があったかもしれません。ちょうど、現行の20型プリウスが発表された頃です。でも、まずコントロール性を条件にすると、サスペンション方式がダブルウィッシュボーンのシビックはかなり魅力的です。サスペンスの良さを数値的に説明できればよいのですが、私には無理です。フェラーリとかランボルギーニが作っている車のサスペンション方式を調べてみて下さい。なんとなく、私の意見に納得できるのではないかと思います。信頼性も重要です。ちょっとした故障ならばJAFを呼んで応急修理してもらう手ですが、JAFがプリウスを応急修理できるかどうかは未知数です。その点、シビック・ハイビリッドならエンジンもありふれたものですし、従来の車の延長線上の車ですから簡単そうです。(この考えは甘かったようで、カー用品店にオイル交換に持ち込んだら大騒ぎになりました。私が指定したオイル・エレメントが適合品かどうか全部メーカーに問い合わせたようです。事前に適合品を確認して持ち込んでもこの有様です。)さらに、シビック・ハイブリッドにはセルモーターとオルタネータ(発電機)が付いています。そんなの当たり前だろうと思うでしょうが、実は付いているけど使っていません。アシストモーターでエンジンを起動できるし、発電もできます。むしろ、なぜセルモーターやオルタネータが必要なんでしょう?HondaのIMAシステムは、自動車というシステムから切り離すことが可能なのです。非公開ですが、ブレーカーが隠されています。このブレーカーをOFFにすると、ハイブリッド車から普通の車になります。この状態で、初めてセルモーターとオルタネータが使用される仕組みになっています。
 これなら、信頼性は普通の車と同等と考えて良いでしょう。もっとも、注意すべき点が1つだけあります。HondaのIMAシステム車は12Vバッテリーを積んでいますが、12Vバッテリーが劣化してもなかなか気付きません。エンジンの始動はIMAバッテリーと使いますし、エンジン始動後はIMAのバッテリーから12V系の電気が供給されます。このため、12Vバッテリーが死にかけていても、予兆がないため気付きません。でも、ECUは12V系の電気で動いています。12Vバッテリーが完全に駄目になると、エンジンをかけることができなくなります。いろいろ理由付けしていますが、購入を決めた私の最後の動機は「私が考えたシステムと似たシステム」に興味があったからです。私が考えたシステムでは、25km/L以上走るだろうが30Km/Lは越えられないと考えていました。シビック・ハイブリッドのカタログ燃費は、私が考えていた車の上限燃費に近いものです。安普請のくせに...訴えてやる!!!(嘘)

  
3. 2 燃費を基準に選びたいときは?
    カタログ燃費は、「特定の条件で計るとこれだけ走ります」という目安でしかありません。では、実際に生活で使う上で燃費にこだわって車を選びたい場合はどうすればいいでしょう?
 シビック・ハイブリッドを購入したことで、思いもかけずインサイトのオーナーズクラブの人たちと知り合いになる機会を得ました。インサイトのオーナーズクラブの人たちは、プリウスのオーナーズクラブの人たちと年に数回燃費測定会を開催して、燃費の比較をしているそうです。最近、燃費特性の違いが段々判ってきました。走行パターンというより、走行速度で明確な差が出るようです。プリウスは、低速であれば低速であるほど燃費的アドバンテージが高い。だから、渋滞路や市街地走行に適しています。町中に住んでいて、近所での買い物に使う比重が高い人や、短時間の運転を繰り返す人はプリウスが最適です。HondaのIMAシステム車は、ある程度速度が出せる道でアドバンテージがあります。特に、50Km/h以上で長い巡航ができるような場所ではかなり有利な燃費になるようです。だから、郊外に住んでいる人や遠出をする人に向いています。ただし、これはインサイトの話です。シビック・ハイブリッドとプリウス20型で燃費競争をするなら、シビック・ハイブリッドにとって有利なのは高速道路で燃費競争を挑む場合です。 それくらいの高速走行になると、シビック・ハイブリッドでもプリウス20型に対抗できます。
 若井先生はこうなる理由が簡単に推測できるでしょう。そのほかの方は、なぜそういう結果になるか考えてみて下さい。
 上記の傾向は、同等の低燃費運転技術を持った人同士で燃費競争した場合です。燃費は、運転の仕方次第で極端に悪化します。燃費にこだわってハイブリッド車を購入する前に、燃費が良い普通車を購入して、納得できる利便性の中で最高の低燃費運転を目指すことをお勧めします。ハイブリッド車は現時点で割高なので、そうしたほうが普通の人には幸せではないかと思います。



4.シビック・ハイブリッドの燃費

  カタログ燃費は、あまりに良い値のように感じますが運転環境によっては実際それくらいの燃費で走れます。 (今日、平地+カーブが多い道で停止状態からの10Km計測をしたら30.1Km/Lでした。10Kmを越えた地点での走行速度が45Km/hありましたので、実際はもう少し良い燃費だったはずです。続けてアップダウンと信号がある区間を加えて30Km計測をしたら、これも30.1Km/Lでした。この計測値は29.8Km地点で信号停車したときの値です。巡航上限速度は60Km/hで、平地率60%、信号停車は7回程度と少な目のコンディションでした。蓄電量は、計測開始前と終了時に大差が無いように、走行中に意図的に充電しています)。

  
4.1 脱線話:燃費運転とは
   燃費運転のポイントは簡単です。エンジン効率を高くして、抵抗と無駄を減らせば必然的に燃費は向上します。一般的には、燃費走行というのは加速しない・遅く走るという認識だと思います。でも、全く違います。加速では、たくさん燃料を消費しますが無駄ではありません。消費した燃料は、車の速度という形のエネルギーに変わっただけです。エンジン効率が悪い加速をしたり、タイヤが空転するような加速をしたら駄目ですが、そうでなければ加速の仕方に燃費上の工夫はあまりありません。だから、ある程度スムーズに加速すれば合格だと思います。ゆっくり加速しても急加速しても、40Km/hで巡航する車のエネルギー量は同じです。加速の仕方で、多少抵抗の差がありますが、気にするほどの差はありません。巡航速度は、燃費運転の場合は確かに遅めになるでしょう。でも、コーナーの通過速度は安全な限り速度を維持したほうがいい。減速すれば、再加速が必要です。山道の燃費走行は、案外高速走行の部類になるかもしれません。そうすると、燃費運転がとろいという状況は、郊外の直線路や広い道路だけです。そういう道なら、前の車を抜くのは難しくないでしょう。そういう状況で私が燃費走行をしている場合は、道を譲りますのでさっさと抜いて先に行っていただきたいものです。でも、先行させても結構な確率で追いつきます。世の中そんなものですよ。


  
4. 2 シビック・ハイブリッドの燃費対策
    シビックハイブリッドの燃費対策を、カタログから列挙してみましょう。
  • 電動パワーステアリング
     従来の油圧式パワーステアリングは、ハンドルを切らなくても油圧が必要です。油圧を作ると抵抗になります。電動なら、ハンドルを切るときだけエネルギーを投入すれば大丈夫です。
  • CVT
     CVTの動作にも油圧が必要です。総合効率が落ちます。あれっ??  確かに、CVTを使うと総合効率が落ちるのです。でも、CVTは非常に大きな変速比に対応できます。普通の車に例えると、7速とか8速という変速比を作れます。これを利用すれば、エンジンをより効率的な負荷状態で運用できます。結果的に、燃費向上になります。燃費を無視して加速性能重視で活用しても有効です。エンジンの最大馬力は、エンジンの回転数のある1点だけで実現します。それ以外の回転数では、最大出力は得られません。CVTは無段階変速ですから、最大出力回転数を維持したまま加速できます。だから、多少非力なエンジンでもそれなりに実用的な加速が可能です。
  • 空力対策
     これがまた、凝っています。エンジンルームの下部にアンダーカバーを付けて車高を1cm下げています。どれほど効果があるのかは判りませんが、Hondaの技術陣は費用対効果が得られると判断したようです。確かに、安上がりです...あとは、トランクの後縁に小さなスポイラーが付いています。これは、トランクの後ろに空気が回り込むのを防ぐためのものでしょう。空気抵抗は、空気が当たる正面の抵抗が一番大きい要素ですが、後ろから引っ張る形の抵抗もあります。トランクの後ろに空気が回り込むと、負圧という抵抗が発生します。これも空気抵抗です。
  • 3気筒休止
     これは、直接的に燃費に影響することではありません。減速時の発電量を増やすのが目的です。 気筒休止といっても、実際にピストンが止まるわけではありません。吸排気バルブが閉じたままになります。そうすると、空気を吸い込まなくなりますからポンピング抵抗が無くなります。ローギア寄りに変速してエンジンブレーキを使うと、かなりのブレーキ効果がありますが、大部分がポンピング抵抗なのです。3気筒休止することで、この抵抗が1/4に減ります。その分を発電抵抗でカバーすることで、エンジンブレーキと同等の制動力が発生しているように見せかけています。4気筒とも止めたら、もっと発電できると思いませんか?HondaはアクセルOFFからONに変化したときにスムーズに対応するため1気筒は休止しないと説明しています。でも、そもそも最低1気筒は吸排気しないと駄目な事情があります。ブレーキのアシスト装置に真空倍力装置(バキューム・サーボ)を使っています。この装置は、エンジンの吸気側の負圧を使っています。だから、4気筒とも止めたら大変なことが起こります。3回ほどブレーキを踏むとほとんどブレーキが利かなくなります。
  • アイドリングストップ
     普通の車は、エンジン始動時にセルモーターを使います。セルモーターではアイドリング回転数まで回らないので、エンジンに濃い混合気を送って爆発力で回転数を上げます。このため、短時間のアイドリングストップは逆に燃料を多く消費するといわれています。シビック・ハイブリッドでは、アシストモーターの力でエンジンを強制的にアイドリング回転数まで回転させることができます。この状態で、通常の濃さの混合気を送ればエンジンは普通に回転します。こういうエンジン始動方法では、短時間でもアイドリングストップすれば燃費的に有利になります。
 これが、主なシビック・ハイブリッドの燃費対策です。でも、これだけでは私が考えた車を越えられるはずがありません。他に秘密があるはずです。

  
4. 3 究極の低燃費を目指すには
    ここで、エンジンがi−DSIと呼ばれる新型エンジンであることに着目しましょう。 このエンジンは、1気筒に2個の点火プラグが付いたエンジンです。Hondaは燃焼効率を最適化するためと説明しています。燃焼効率の最適化は、全てのメーカーが取り組んでいることです。だから、このエンジンの狙いは別の所にあると考えられます。究極まで希薄燃焼を維持してスロットルを最大限開ける制御をする。そういう目的のエンジンではないかと思います。希薄燃焼をする場合の最大のネックは、燃焼速度が遅いということです。改善方法は燃料が多めに分布する場所で火を付けるか、複数の場所で火を付けるのが有効です。希薄燃焼自体は、直接は燃費向上に貢献しません。なぜなら、燃料を薄くすれば燃焼時のエネルギーも小さくなります。つまり、馬力が出ません。その分、スロットルを開けて混合気を増やす必要があります。スロットルを開ければ、吸気側にたくさんの混合気が供給されます。エンジンが空気を吸い込むのが楽になります。楽になった分、抵抗が減って効率が上がります。結果的に燃費が向上します。つまり、i−DSIエンジンは走行中常に可能な限り希薄寄りの燃焼を維持し、スロットルを開け気味にし続けることで、より高い効率を実現しようと考えたエンジンだと考えられます。もちろんそういう制御はエンジン単体では不可能な話で、エンジン制御系も含めて設計する必要があります。このような燃費対策は、相当昔から知られていたようです。太平洋戦争当時、長距離飛行の実験を行ったときに、超低燃費飛行を達成した坂井三郎という人がいます。この人は、戦後まで生き延びて「大空のサムライ」という有名な本を書きました。この本の中で低燃費飛行を行った時のことも書いていますが、燃料をできる限り薄くして飛んだと記しています。当時の戦闘機は、空燃比を調整する燃調操作とスロットル操作が別々に操作できたようです。車の場合、運転者にそういう操作はできません。では、どうすれば良いか...答えは1つ...

  
4. 4 自動車自身が運転する時代
    運転者がエンジンを制御しようとする限り、空燃比に対する最適なスロットル制御は不可能です。そもそも、運転中にどういう空燃比の状態になっているのかを知る方法がありませんし、判ったところでどういう制御をすれば最適制御になるのか判らないでしょう。それが判るのは、運転者ではなく車の制御装置・ECUです。ECUは燃調を制御していますし、各種センサーでエンジンの状態や車速などを計測しています。だから、ECUがスロットル操作を行えばより理想的なエンジン運用が可能になります。この場合、運転者が操作するアクセルは「これぐらい馬力が欲しい」というだけの入力装置になります。スロットルとアクセルは直結していません。スロットルは電線で伝達された信号で操作されます。つまり、スロットル・バイ・ワイヤーという制御方式です。i−DSIエンジン車は、恐らくスロットル・バイ・ワイヤーでエンジン制御されている車です。こういう制御系の車は、実は他のメーカーの車にも存在し、主流になりつつあるのではないかと思います。航空機の世界では、ずいぶん前から既にそういう方向に向かっています。シビック・ハイブリッドのECU制御系は、もう一歩踏み込んだ制御を行っているように思われます。たとえば、アクセル一定で巡航している場面で緩やかな登りに差し掛かったとします。普通なら軽くアクセルを踏み込んで速度を維持しようとする場面です。こういう状況で、アクセルを操作しないと自動的にモーターアシストを開始したり、エンジン回転を上げて馬力を出そうという挙動が発生する事があります。自動車自身が、自分自身のシステムの最適化のために運転しているといえます。もしそういう制御をしようとしているとしたら、それもまた、航空機の後を追っていることになります。すでに、エアバス社の航空機は「アルファ・フロア」という制御系を実用化しています。操縦者が限界を超える操作をしても、限界を超えないように制御を押さえながら操縦者の操作に近づくようにエンジンを 運用するシステムです。絶対に失速しないシステムですが、操縦者の意図と微妙に違う動きになるため、採用初期に事故が多発しました。名古屋空港の事故を最後に、システムと人間の現状認識不一致による事故は無いようです。どんなに良いシステムでも、運転者の意図と車の挙動が違っていたら困りますよね。どこまで人間に任せて、何をシステム側で制御させるのが妥当かという問題は、非常に難しい問題です。
 とうとうここまで来たかという感慨を覚えます。任せられる部分は、コンピュータに任せた方が効率よく運用できるということは、航空機の世界では常識です。既に戦闘機から旅客機まで、電子制御無しでは飛行できないほどの状況になっています。一般的な自動車もそういう方向に向かうのは必然ですが、ハイブリッド車はその性格上電子制御への依存度がより高いシステムになるのは当然でしょう。走行しながらボンネットの中を覗けるはずもないので、以上の解説は私の推測です。スロットルの制御が車側にあるという推理は、間違っているかもしれませんし、既に一般的になっているかもしれません。でも、お願いだから運転者に指図をする車だけは作らないで欲しい。カーナビを使っている人を見ると、機械に指図されて運転しているように見えてしまう...そう思うのは、私だけ???



5.私が考えたハイブリッド車

   最後に、私が考えたハイブリッド車を紹介しましょう。これも、シビック・ハイブリッドと呼べる車です。   ベース車はシビック・フェリオというシビックのセダンタイプの車です。   私が考えたハイブリッドシステム車には、未来の車に関する一つの可能性が含まれています。

  
5.1 エンジンに対する要求仕様
    エンジンは、排気量が小さい方が良い面があります。排気量が小さく、馬力が少なければ高負荷運転をしている割合が多くなります。効率がいい運転状態の比率が多くなる事になります。だからといって、小排気量の4気筒エンジンは考えものです。出力あたりの機関抵抗の割合が大きくなり、結果として効率が低下することになります。1気筒あたりの排気量はなるべく多めにしつつ、エンジンは小さくする必要があります。つまり、エンジンの気筒数を減らす必要があります。前に書きましたが、3気筒化すると別の問題がありますが、モーターを直付けすれば解決できると考えました。最悪でも、モーターを脈動させればエンジンはスムーズに回るはずです。馬力が小さい小排気量のエンジンが都合が良いのですが、電池切れの時に対応するためには充分な馬力も必要です。困った要求仕様です。見事に矛盾があります。エンジンは、当時のシビックに積まれていた3ステージVTECの1.5LOHCエンジン「D15B」を単純に3気筒化したものを使います。開発費をケチらなければいけませんから、新規開発している場合ではありません。ありがたいことに、D15Bは130HPの最高出力がありますから、3気筒化しても90HP以上出せ そうです。しかも、2000rpm以下では希薄燃焼モードになるので燃費が稼げます。このエンジンとCVTを組み合わせるだけで、20Km/Lはクリアできそうです。
 でも、こういう「モーターが付いている前提のエンジン」は他の車に転用できません。これが私の失敗点その1です。開発費をケチっても、新型エンジンを生産に移すコストは発生します。量産できない場合、ずいぶん高価なエンジンになりそうです。

  
5. 2 モーター系に対する要求仕様
    モーターは、それほど大きいものを積むつもりはありませんでした。そもそも、電池は少ない方がよいというポリシーがありますから大きいモーターは使えません。
 凝った造りになっている部分は電源系です。必要最小限の蓄電池は積みますが、できれば急速充電はしたくありません。急速充電は大量の熱が出ます。その分蓄放電効率が悪くなります。できれば、急速充電を極力避けて低速充電で効率を高めたいところです。そうはいっても、減速の時に大量の電気が発生してしまいます。急速充電を避けるためには、一時的にどこかに電気を待避しなくてはなりません。そこで、キャパシタを使おうと考えました。キャパシタは化学反応を使わない蓄電方法で、電極と電極の間に電子が浮遊する形で蓄電されます。このため、蓄放電時に熱が発生しません。非常に高効率です。ただし、蓄電量の割に大きくなります。だから、これを主電源装置にできません。あくまで小容量でないと駄目です。大体100VA程度の容量です。これなら、停止時の電気を一時的に蓄電しきれそうです。下り坂で発電する場合は、キャパシタの容量では追いつきません。そういう場合は、効率を無視して急速充電するしかないでしょう。
 アイデアとしては、悪くないシステムだと思うのですが、実際にこういう電源系を作ろうとすると大きな問題が発生します。蓄電池は化学反応を利用しています。だから熱が発生して効率が悪いのですが、良い点も1つあります。それは、放電電圧が一定になるのです。電源制御ユニットの設計は簡単です。それに対して、キャパシタは蓄電量が増えるにつれて、電圧がどんどん上がっていきます。つまり、この2つを組み合わせると電源制御ユニットを別々に用意する必要があります。電源コントロールも、蓄電池だけの場合に比べてはるかに複雑なプログラムが必要になるでしょう。つまり、非常に高価なものになるのが避けられません。これが私の失敗その2です。

  
5. 3 パッケージングしよう
    既に、300万円を軽く越える車になることは避けられませんが、ここまで考えたらパッケージングしたくなります。
 エンジンとモーターは、普通にボンネットの中に積むことになりそうです。FFという駆動方式は変わらないので、それ以外の選択肢はありません。キャパシタは...大きすぎます。これは、後部座席の下に置くしかなさそうです。蓄電池は熱が出るので座席の下に置けません。当時のシビックは、燃料タンクを後部座席の下に置いていました。だから、今度は燃料タンクを別の場所に移す必要があります。燃費が良いのだから、容量を30Lに減らして前席の下におけば何とか収まりそうです。(シビック・ハイブリッドも同じ燃料タンク配置になっていますが、低床化技術の採用で50Lタンクになっています)蓄電池は、トランク内に置く必要があるようです。できれば重い蓄電池はもっと前に置きたいのですが、置けそうな場所がありません。こういう重い物を後ろに置くと、前輪・後輪の加重比が後ろ寄りになります。FF駆動の場合、前輪加重が小さいと加速時に車輪が空転しやすくなります。前輪と後輪の加重比率が65:35位が滑りにくくて実用的ですが、後方に電池とキャパシタを積んだことで60:40位になりそうです。濡れた路面での発進は、前輪が空転しないようにアクセルをデリケートに扱う必要がありそうです。(実際、シビックハイブリッドは発進時にアクセルを開けすぎると、簡単に前輪が空転します)私が想像したパッケージングは、ほとんどシビック・ハイブリッドと同じでした。他に置きようがないから、同じになるのは当然なのですが、シビック・ハイブリッドを購入して初めてボンネットを開けて、中をのぞき込んだとき驚愕しました。そうか、エンジンが小さくなった分モーターの重量を加えても軽すぎるのか...それは気付かなかった。エンジンの重量が軽くなることを見落としていました。シビック・ハイブリッドの前後加重比は私が予想したとおり60:40なのですが、エンジンが軽い分一工夫必要だったようです。
 普通、エンジンは前輪と前輪の軸線上に置きます。ところがエンジンが軽すぎるため、前輪より前に配置しています。私は、これを「フロント・オーバハング・マウント」と呼んでいます。常識では考えられない実装です。12Vバッテリーまで前縁すれすれに配置する念の入れようです。
 う〜ん、なりふり構わない技術者の設計は、背筋が凍る思いがします。(笑)
 これが、フロント・オーバハング・マウントです。

奧が運転席側ですが、エンジンやバッテリーがやたらと手前にあるのが判りますか?



横から見ると、エンジンがずいぶん前にあるのが判ります。エンジンと室内の間は広々とした隙間があり ます。見方を変えると、正面からの衝突安全性が高い車と言えるかもしれません。

  
5. 4 マン・マシンインターフェース(メーター)
    これについては、専門家にかなうはずがないのでノーアイデアでした。実際のメーターは、以下のようなものになっています。

 
  タコメーター  




    スピードメーター    



積算燃費 トリップ計
瞬間燃費計(棒グラフ)


発電 アシスト




水温計


 



運転しながら見るには、やや情報が多すぎる感じがしますが、仕方がない事だと思います。この写真では、給油してからの走行距離が837.4Kmで23.6Km/Lの燃費になっています。燃費計は、やや高めに表示される傾向があるので、実際は23.3Km/L程度だと思います。燃料計は残り15L程度残っている事を示しています。25Km/Lを越えた写真を載せたかったのですが、時節柄渋滞が...渋滞には本当に弱い車です。

  
5. 5 自動車の未来
    私が考えたハイブリッド車は、電源の複雑さに問題がありました。電源は1つの方が良いのは当然気付いていました。本当は、キャパシタだけにしたかったのです。しかし、キャパシタは体積あたりの蓄電率が低くて大き過ぎますから、全面的に採用できません。なぜキャパシタが良いかというと、その蓄放電効率の高さも魅力ですが、最大の魅力は寿命が長くて劣化しにくいという点にあります。今、ハイブリッド車を使っている人は、ある意味でモルモット状態です。蓄電池の寿命がいつなのか誰も知りません。そして、時間が経過すると確実に劣化して蓄電容量が減ります。キャパシタの寿命は蓄電池の3倍といわれています。それだけの寿命があれば、車の寿命と大差ないことになります。
 もう一つ重要なことは、キャパシタは希少金属を一切必要としないという点です。リサイクルコストが、費用面でもエネルギー面でも軽減できることは重要なことです。
 近年、容積あたりの蓄電容量が蓄電池並みの新しいキャパシタが開発されました。 ナノゲート・キャパシタというものです。製造に使う資材は、外部容器と電極は普通に鉄や銅で、内部構造にはアルミと炭素を使うようです。全てありふれた資源です。 今はまだ、「ビックリするほど高価」だそうですが、原料を見る限り量産効果が簡単に得られそうです。近い将来、キャパシタに蓄電して走るハイブリッド車が現れる可能性は非常に高いと思います。現在の蓄電池を使うシステムでは、蓄放電ロスが大きすぎます。捨てる運動エネルギーを回収するから、現状でIMAシステムが有効であっても、蓄放電効率が高ければもっと良い燃費が実現できるでしょう。また、プリウスシステムはキャパシタを蓄電に使うことで町中の走行燃費にさらに磨きがかかるでしょう。将来、石油が使えない時代になったときに、生き残っているのは案外キャパシタ電気自動車かもしれませ ん。燃料電池車は、水素の確保と運搬に無理があります。太陽電池で作った電気で水素を作るのは、若井先生がおっしゃるとおり非常に非効率です。ましてや、エネルギーが制限されている状況で何百気圧という高圧でタンクに詰めるのは、状況的に不可能というかあり得ないでしょう。太陽電池で作った電気は、電気のまま使うべき。若井先生の意見は非常に的を射ています。でも、それでは車は走れない。もし、そういう状況で走れる車があるとすればキャパシタ電気自動車のようなものでしょう。もちろん、暖房も冷房もありません。運用速度が低いから、事故時の安全強度は低く設定できるでしょう。非常に軽量に作られた、実用本位の車になる可能性が高いと思います。