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希薄混合気の水素火炎ジェット点火
Augmentation of Lean Combustion of
Gas Engines by HFJI
水素火炎ジェット点火法とは?
希薄混合気(燃料が少ない)では点火するのが困難になり、燃焼時間も長くなる。そこで、混合気に確実に点火を行い、燃焼を促進させる方法として水素火炎ジェットを用いる。燃焼室は、主室と小さな副室(主室の約1%)からなり、この副室に水素混合気を入れ、点火をする。水素火炎が主室と副室の小さな隙間を通るときにジェット状になり主室内の燃料を燃焼させるのである。
以下に、水素ジェット火炎の様子をシュリーレン写真で撮影したものを示す。実際の速度の 1/180 で表示している。
シュリーレン写真とは?
火炎は、通常 1,500〜2,500 K(1,250〜2,250℃)で、大気の温度 300 K(20℃)と比べて圧倒的に温度が高いので、気体の法則より燃えて熱い部分と燃える前の冷たい部分とでは、密度が7倍ほど違う。
光は、密度が高い部分を通過するのに、時間がかかるので、密度変化の大きい火炎を通るときは屈折することになる。
この屈折を利用して、シュリーレン写真をとるのです。
水素ジェット火炎点火法の燃焼促進効果
水素火炎ジェット点火法による燃焼促進効果を次の図で示す。
- 黒の線が通常点火
- 緑の線が水素ジェット火炎点火(水素+空気)
- 青の線が水素ジェット火炎点火(水素+酸素)(副室体積1%)
- 桃の線が水素ジェット火炎点火(水素+酸素)(副室体積0.5%、中央点火)

図からも判断出来るように、水素ジェット火炎点火により、燃焼時間は通常点火に
比べて大幅に短くなっている。
つまり燃焼時間でみると
当量比φ=1.0の通常点火
‖
当量比φ=0.6の水素ジェット火炎点火法
と言うことが出来る。
水素ジェット火炎点火法の排気ガス組成
水素火炎ジェット点火法により排気ガスの組成に及ぼす影響は、ほとんどの成分において、点火法による違いはみられない。
しかし、水素ジェット火炎点火法により希薄燃焼が可能になるという点が重要になる。先に書いたように、当量比φ=1.0の通常点火法と、当量比φ=0.6の水素ジェット火炎点火法は、焼時間を同じにすることが可能なのである。このことにより、当量比φ=1.0での排気ガスの各成分の濃度よりも、当量比φ=0.6の水素ジェット火炎点火法による排気ガスの各成分の濃度が減少していれば、排気ガのクリーン化と、燃費の向上に貢献しているといえるのである。成分分析の結果、大気汚染の原因となるCO2やCO、またNOX(窒素酸化物)が低減された。
以下に、NOX(窒素酸化物)における結果を示す。
- 黒の線が通常点火
- 緑の線が水素ジェット火炎点火(水素+空気)
- 青の線が水素ジェット火炎点火(水素+酸素)(副室体積1%)
- 桃の線が水素ジェット火炎点火(水素+酸素)(副室体積0.5%、中央点火)

図の当量比φ=1.0の場合に比べて当量比φ=0.6の場合の方が遙かに濃度が減少している
のがみられる。
以上の結果より、
水素ジェット火炎点火法は、希薄燃焼において有効な手段だといえる。
この水素火炎ジェット点火法は、実は若井研の開始とほぼ時を同じくしてオーストラリアのメルボルン大学で始められていた。HAJI(Hydregen Assisted Jet Ignition) と名付けている。ただし、その研究はいきなり実機を用いたものであり、またジェットは導入部に逆支弁を設けて水素を導くものの、出口にはバルブを設けずピストンにより圧縮してくる混合気中の酸素を導入した水素の酸化剤として用いるタイプのようである。これに対して、若井研は、研究である以上ジェットを発生した水素火炎の当量比(空気との混ざり具合)があいまいなままでは定量的な評価ができない、との観点から、バルブを設けて、それが開くと同時にて点火する方式を用いている。また酸化剤としては、空気のみでなく酸素を用いた究極の場合についても調べている。水素-酸素混合気は最も速い燃焼速度を持っているのである。
なお、余談であるが、若井研がこの研究を始めたのは実は 1980年代にプラズマジェット点火法という新しい方法が提案され、それが、熱・流体的な作用によるというより、ラディカルの化学的な作用により燃焼が促進されるという解釈が一般的であったことに対して、反対の立場に有ったからである。その件については、他にページを用意しているので、ご覧下さい。
Originally Written by Y. Takada and Revised by Kazunori WAKAI
[English]
[研究内容]
[若井研究室]