向井研究室の2大テーマについて


1.多様性について知る「生物地理学」

Paedocypris progenetica
2006年に新種記載されたばかりの世界最小の魚.
(撮影 小林圭介氏)

“生物多様性”について学び,研究することが,この研究室での基本です.

 それでは,生物多様性とは何でしょうか?

 私達が生きている世界には,さまざまな動植物がいます.身近な多くの動植物には名前が付けられていますが,小さな昆虫や魚になると今でも新種が次々と報告されています.もっと小さな目立たない生物になると,ほとんどが新種ということもあるため,実際に地球上に何種の生物がいるのかさえ,未だにわかっていません.

 また,名前が付いている動植物でさえ,地域によってさまざまな姿形を示し,異なる生活をしています.

 このように地球上の様々な場所で様々な生物が多様に存在することが,生物多様性と言って良いでしょう.

 そういった疑問にアプローチすることが,この研究室の第1のテーマです.こうした研究は「生態学」や「生物地理学」と呼ばれます.

アベハゼ・イズミハゼ
本州以南の干潟に棲むハゼで,体の後半部に縦縞があるのがアベハゼ(写真左),横縞がイズミハゼ(写真右)として「別種」として扱われているが,中間型(写真中)もいる地理的に多様な魚.おそらく,違う種類になる途上で,交雑などしているためではないかと考えられるが・・・
(撮影 向井貴彦)

2.守るためのツール「保全生物学」

 また,純粋な学問の対象としての「生物多様性」を扱っているだけではありません.

 人間の社会は多様な生物の存在によって成り立ってきました.長い歴史の中で,それぞれの土地に,それぞれ特有の生物がいるという前提で,文化も社会も成り立っています.つまり,生物多様性は,私達の文化や社会の基礎であると言えます.

 そうした文化や社会の基礎であり,多くの人が愛着を持つ自然がどんどんと破壊され,変容しつつあります.つまり,生物多様性が失われつつあるわけです.

 そのような中で,どうやって破壊から守るのか,という生物多様性を守るための研究もおこなっています.これが第2のテーマです.

 第2のテーマは「保全生物学」と呼ばれることがあります.保全のためには時間の残されていないことが多く,産業とはならないためにお金も無い中で有志の方々が様々なボランティアをしています.したがって,研究以外でもなるべく,現場に出て事実を知り,経験を積み,地域に貢献するために,ゼミ生諸君には協力してもらうことが多々あります.

コクチバス
日本の在来性物に著しい悪影響を与えるブラックバスの1種.環境保全は,無配慮な開発行為をおこなう行政との駆け引きであったり,外来生物を身勝手に放流する人々との闘いとなる.そのため,社会に貢献できるかも知れない反面,苦痛を伴うことも多い.

(撮影 向井貴彦)