岐阜大学長
吉田 和弘
ジェンダー平等の実現に向けて
2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けて世界が2030年までに達成すべき17の国際目標を指しますが、その5番目に掲げられている目標が「ジェンダー平等の実現」です。ただし日本のジェンダーギャップ指数(2021年)は、先進国の中でも最低レベルの120位で、アジア諸国の中でも韓国や中国よりも低いのが現状です。
岐阜大学では、2010年4月に「男女共同参画推進室」を設置し、10月に「岐阜大学男女共同参画宣言」および「岐阜大学男女共同参画行動計画」を策定以降、文部科学省「女性研究者研究活動支援事業(女性研究者支援モデル育成)」(2010~2012年度)や「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(連携型)」(2015~2020年度)などを通じて、女性研究者の研究力向上や研究環境整備に取り組んできました。その一つである研究助成制度を活用した女性研究者からは、特許出願や書籍・論文など数多くの成果が毎年報告されています。また、育児や介護等により研究時間の確保が困難な研究者を支援するため、研究補助員の配置や学内保育園の定員拡充も進めてきました。しかし岐阜大学における女性研究者の在職比率は16.8%(2022年3月現在)と依然として低いため、第4期中期目標では、4%アップを目指しています(国立大学協会は2025年までに24%以上を目標)。今後も女性をはじめとする多様な人材がその能力を遺憾なく発揮できる環境の整備に向けてより一層取り組んで参ります。
さて、2020年4月、岐阜大学は名古屋大学とともに国立大学法人東海国立大学機構を設立し、新たな門出を迎えました。「国際的な競争力向上と地域創生への貢献を両輪とした発展」をスタートアップビジョンに掲げていますが、その実現のためには多様性、包摂性そして男女共同参画が不可欠です。名古屋大学は、2015年に国連機関であるUN Womenよりジェンダー平等を推進する世界10大学として日本から唯一選出されたほか、ジェンダーダイバーシティセンターやジェンダー・リサーチ・ライブラリなどの調査研究機関を擁し、大学における男女共同参画推進に向けて積極的に活動を展開しています。本学も名古屋大学ジェンダーダイバーシティセンターおよび国立女性教育会館(NWEC)と共同研究(「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)」(2020~2021年度))を実施するなど、共に女性活躍を推進してまいります。
現在、本学の男女共同参画推進室は、「多様な研究者と拓く岐阜の未来プロジェクト」(「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(連携型)」の後継事業2021年度より)を立ち上げ、岐阜薬科大学、岐阜女子大学、アピ株式会社と共同で研究を進めています。今後は岐阜圏域の自治体をはじめとする連携機関など、学内外から大いに刺激を受けながら、引き続きジェンダー平等の実現とさらなる飛躍を目指します。
2022年4月
岐阜大学長 吉田 和弘
副学長(多様性・人権・図書館担当)
大藪 千穂
皆さん、こんにちは。この度、2021年度に男女共同参画推進室長に就任しました大藪千穂
です。どうぞよろしくお願いします。
岐阜大学は、皆さんもご存じのように、2010年4月に「男女共同参画推進室」を設置以
来、前任の林正子名誉教授のもと、「岐阜大学男女共同参画行動計画」の策定に基づいて、
教育・研究環境及び就業体制の確立、教育・研究及び就業と家庭生活との両立を図るための
支援、教職員・学生への男女共同参画に関する啓発活動等を推進してきました。
具体的には、研究補助員配置制度、メンター制度、在宅研究支援システムなど、女性研
究者が子育てや介護などのライフイベントと研究を両立できる環境を整備(男性研究者に
も適用)してきました。また女子大学院生による出前講義「サイエンス夢追い人育成プロジ
ェクト」として、中学校・高等学校で自分の研究について説明することで、生徒に女性研究
者というロールモデルを身近に感じてもらう仕組みづくりもしてきましたが、これは院生
にとっても研究活動へのモティベーションが高まるという効果があります。同時に大学運
営における意思決定への女性参画、国・岐阜県・各市町村、企業等諸団体との連携もすすめ
てきました。
これらの支援は以下の2つの事業が基盤となっています。「多様性活力発揮に向けての
女性研究者支援」(文部科学省科学技術人材育成費補助金女性研究者研究活動支援事業
2010~2012年度)と、「地域循環型女性研究者育成・支援プログラム(清流の国 輝くギフジ
ョ 支援プロジェクト)」(文部科学省科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環
境イニシアティブ(連携型)2015年〜2020年度)ですが、特に後者は、岐阜大学が基幹校
となって、岐阜薬科大学・岐阜女子大学・アピ株式会社との4機関連携事業という特徴を持
っています。この連携事業は2020年度で終了しましたが、62件の研究が連携型共同研
究費助成制度を利用し、延べ110人が研究補助員の制度を活用するなど、各機関の活性化に
つながったことから、2021年度からは引き続き「多様な研究者と拓く岐阜の未来プロジェ
クト」として再スタートしています。
岐阜大学では2011年に「多様性人財活用推進会議」を設置しており、2014年から「岐
阜大学における多様性人材活力推進の基本方針及び同行動計画」を策定しています。
2021年5月現在での女性比率は16.5%であり、残念ながら第3期中期計画の目標であった
21%には届きませんでした。今後は国立大学法人東海国立大学機構として、名古屋大学の先
進的な事業を学びながら、ともに大学での女性比率を上げ、男女共同参画を進めていきたい
と思っています。
また男女共同参画推進室の情報媒体である「かもみーる通信」によって、男女共同参画
推進室での取り組みをこれまで同様紹介することで、多くの人に関心を持ってもらいたい
と思っています。前任の林名誉教授が多くの先駆的事業を積極的に実施されてきたので、
それらを滞らずに進め、そして新たな事業にも取り組んでいきたいと思っています。今
後とも皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
2021年7月
副学長(多様性・人権・図書館担当) 大藪 千穂