毎年、夏休み、お盆前にオープンキャンパスが開かれます。工学部・化学・生命工学科でも参加を受け付けています。参加者は主に愛知・岐阜県からですが、中には新潟や山形など、遠くの県からの参加もあります。(ただし学科全体で参加を受け付けているため、どの研究室の実習に参加するかは当日までわかりません。)
<内容>
大腸菌の細胞抽出液に発光クラゲの遺伝子を組み込んだ DNA を加えて緑色に光るタンパク質 ( Green Fluorescent Protein ) を合成しよう。 また、遺伝の担い手である DNA にふれてみよう。
【はじめに】
自分が父親似だとか、母親似だとか、遺伝を痛感することがあります。それは両親のDNA(デオキシリボ核酸)という物質を受け継いでいるからなのです。DNA こそが遺伝の担い手、遺伝子の本質なのです。では、遺伝子とは何なのでしょうか?
遺伝子はタンパク質を合成する設計図のようなものです。この設計図はある種の暗号を用いて書かれているわけですが、どの生物も共通した方法で暗号を解読し、タンパク質を合成しています(生物が共通した祖先を持っている根拠といえると思います)。そこで例えば、ヒトの遺伝子を酵母に導入することができれば、酵母にヒトのタンパク質を作らせることも可能となるわけです。
遺伝子を導入すると書きました。では、牛肉を食べれば牛のタンパク質を作るようになってしまうのでしょうか?決してそんなことはありません。牛のタンパク質をヒトの細胞が合成するためにはヒトの細胞の中で牛の遺伝子が維持されなければならないのです。食事をすることでヒトの DNA に牛の遺伝子が組み込まれることはありません。細胞で維持されない DNA はやがて分解されてしまいます。
遺伝子工学とは、ある生物の遺伝子を別の生物の細胞中で維持させるための方法と言い換えることができます。そうすることで、細胞をタンパク質の合成装置として使うことができるのです。
では、細胞からタンパク質を合成するための成分を取り出し、遺伝子である DNA を加えれば、細胞を用いなくてもタンパク質が合成できるのでしょうか?答えは YES です。細胞を用いることなく自由自在にタンパク質を合成すること、それが我々の研究室の目標です。
今回のオープンキャンパスでは大腸菌(遺伝子工学でよく使われている病原性のないものです)の細胞抽出液に発光クラゲ(オワンクラゲ)の遺伝子を組み込んだ DNA を加えて、緑色に光るタンパク質(GFP: Green Fluorescent Protein)の合成に挑戦してみましょう。
また反応中に、細胞から食卓塩、ポーランド製の酒、お風呂洗浄剤を用いて DNA を抽出したり、大腸菌が GFP タンパク質を生産している様子を観察したりします。
【参考資料】
GFP とは?
アメリカ沿岸に生息するオワンクラゲ( Aequorea victoria )が持つ発光タンパク質である。自ら紫外線を吸収し、緑色の光(508 nm の波長の光)を発する。発光する際に基質を必要としないので、細胞内で GFP タンパク質を合成させることができれば紫外線をあてることでどんな細胞も光らせることが可能である(図1)。タンパク質中に紫外線を吸収する発色団が自然に形成され(図2)、この発色団が蛍光を発するため緑色に光って見える。既にタンパク質の立体構造が明らかにされており樽型の構造の中心(疎水性の環境)に発色団が存在することが必要とされている(図3)。
図1 GFP タンパク質を合成するバクテリア 暗室で長波長の紫外線をあてたものを緑色の光を通すフィルターを使用して撮影した写真 |
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図2 GFP タンパク質の発光メカニズム
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図3 GFP タンパク質の立体構造 発色団は CPK モデルで示してある。 (赤:酸素、青:窒素、白:炭素) |
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