DNA組換え実験

 -大腸菌にクラゲの遺伝子を入れてみよう-

                  
   生徒用テキスト


このテキストは、pGLO バクテリア遺伝子組換えキット(BIO-RAD社)添付のCDをもとに、加筆したものです。ここに記載していない事柄は、添付CDをご覧ください。

<日程>

一日目

 ・DNA組換え実験

  -大腸菌にクラゲの遺伝子を入れてみよう-

 二日目

 ・結果と考察


<目次>

 実験  DNA組換え実験

      遺伝子組換えについて

      原理

      準備

      実験

      結果

      考察

 付録A 実験に出てくる用語の解説

    B 発現調節、1遺伝子=1タンパク質

 


DNA組換え実験

 -大腸菌にクラゲの遺伝子を入れてみよう-

遺伝子組換えについて

 この実験で、形質転換の工程を理解しましょう。遺伝子は生物特有の性質を表す タンパク質を作り出すもとになっています。「形質転換は、他の生物に遺伝子を挿入すること」でその生物の性質を変えることを意味しています。形質転換は、バイオテクノロジーにおいて、広範囲に使われています。農業の分野では、霜や病害虫、干ばつに 耐えるための遺伝子など、環境科学では、流出した原油を分解できる性質を持つように遺伝子などが利用されます。医療では、欠陥遺伝子が引き起こす病気の治療をするために、患者の細胞に健康な人の遺伝子を取り込ませる、遺伝子治療が始められています。

 人間や動物、植物のDNAから一部分を切り取って、バクテリアの細胞中に取り込ませることができます。例えば、バクテリアにヒトのインシュリン(ホルモンの1種)をコードした 遺伝子を取り込ませることができます。そのバクテリアは、ある環境に置くとヒトのインシュリンを作るようになります。こうして得られたインシュリンは、治療のために、糖尿病の患者へ投与することができます。

原理

<遺伝子>

 遺伝子組換えには、バクテリアの細胞内に新しいDNAを取り込ませる操作(遺伝子導入)があります。バクテリアは1つの大きな染色体遺伝子の他に、 *プラスミドと呼ばれる、環状DNAを1つ以上持つことがよくあります。通常、プラスミドDNAはある性質や特徴を有するための(コードする)遺伝子を最低でも 1つ含んでいます。細胞がもともと持っていない性質や特徴を持たせるために、プラスミドを利用して、目的の性質や特徴をコードする遺伝子を細胞に取り込ませるます。このような技術は遺伝子工学として知られています。

 今回の実験では、オワンクラゲのDNAからとってきた緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP)をコードする遺伝子と、抗生物質アンピシリンに対して 耐性のある細胞にするための遺伝子(bla)を含む、pGLOプラスミドで大腸菌の形質転換を行います。

 また、pGLOは細胞に取り込まれた後、糖の一種 アラビノースの有無によりGFPの発現がコントロールされるようになっています。

* プラスミド… 通常、プラスミドDNAは、バクテリアが生き延びるのに有益かもしれない1つ以上の機能を持つ遺伝子を含んでいます。これらの有益な遺伝子をバクテリア同士が 共有するために、プラスミドDNAを細胞内に取り込んだり、外へ放出したりします。バクテリアは新しい環境に順応するために、このメカニズムを利用します。 最近話題になっている、抗生物質耐性バクテリアは、こうして生まれてきたのです。

<遺伝子組換え実験>

 遺伝子の導入は主に以下の、3つのステップで行われます。これらのステップは大腸菌の細胞内にプラスミドDNAを取り込ませ、そこにコードされている遺伝子を 発現させるための環境を与えるために行われます。

 プラスミドDNA・pGLOが細胞膜を通過するために、
  1. CaCl2 (塩化カルシウム)を含む形質転換用緩衝溶液を使用する。
  2.ヒートショックを与える。
 獲得した遺伝子を発現させるために、
  3. 短時間のインキュベーション(アンピシリン無で)をします。

<大腸菌の取り扱い>

 実験で使用するK-12:HB101は、世間を騒がせているO-157:H7のような病原性は持たない種類の大腸菌です。もちろん、遺伝子組換え実験を行った後の 大腸菌も同様です。この大腸菌は組換えDNA実験(形質転換実験)には非常に適した生物であり、バイオテクノロジーを用いた研究では頻繁に利用されています。 その理由は、単細胞生物で、20分毎に増殖し、さらにこの種類の大腸菌は人間に対して毒性はなく、研究室外の環境では生育できないからです。

準備

<器具>

各班(4名/班) 

    ピペット                   1袋

    植付け用ループ                1袋

    チューブラック                1

    氷水の入った発泡スチロール          1

     (緑と青のチュ−ブが入っている)

    マーカーペン                 1

     はさみ                    1

    ビニ−ルテ−プ                1

    オ−トクレ−ブパッグ             1

    ゴミ箱                    1

    ゴーグル                   4

    スタ−タ−プレ−ト              1

    UVランプ                  1

共同  42℃ウォーターバス              2

    37℃インキュベーター             1

<試薬>

各班 大腸菌スタータープレート(LB)             1 

   寒天培地プレート(LB×1、LB/amp×2、LB/amp/ara×1)  計4

   形質転換用緩衝液 (Buと書いた赤チューブ)…氷上     1

   LB培地(LBと書いた黄チューブ)…氷上           1 

共同 pGLOプラスミド溶液                   1

 

実験を始める前に

 @ 手を洗いましょう。

 A 器具の取り扱い方に気をつけましょう。

B ゴミの分別をしっかりと理解しましょう。

 

実験

1. マクロチューブの蓋を閉めて、緑チューブに“+DNA”、青チューブに“−DNA”とペンで書き、チューブラックに差しておきます。(ここでいうDNAは プラスミドのことです。)

 

2. “Bu”チューブの蓋を開けて、滅菌済みピペットを使用して*形質転換用緩衝溶液を250μl ずつ、 “+DNA”、“−DNA”チューブに加えます。

  

 

3. マイクロチューブを氷水上に置きます。


4.       植付け用ループを用い、スタータープレートからシングルコロニーを一度に 3つすくいとります。このとき、寒天を削ってしまわないように注意して下さい。        

“+ DNA”チューブの底までループを入れて、人差し指と親指をこすり合わせるようにしてループをまわし、先についている大腸菌を緩衝溶液に溶かし入れ、ダマがないようにします。同様に、“−DNA”チューブにもコロニーを取ります。大腸菌をチューブに溶かし入れた後は、チューブの先端(溶液の入っている部分)を持たないようにしてください。(手から体温が伝わって、菌液を暖めてしまわないようにするため)

 

5.      @ pGLOプラスミド溶液および形質転換前の大腸菌の生えたスタータープレートに UVランプを当ててみて、それらの状態を観察しましょう。

  A新しいループの、輪の部分が全部浸るようにプラスミド溶液に入れ、シャボン玉を作る時のように輪の部分に溶液の膜を張らせます。その状態で“+ DNA”チューブにループを入れたら、チューブの蓋を閉めて、氷上に戻します。“− DNA”チューブにはこの操作を行わないでください。また、この時もチューブの先端を持たないようにしてください。

6. マイクロチューブの蓋がしっかり閉まっていることを確認し、チューブラックに差し、ラックごと氷水上に10分間置きます。この時、チューブがきちんと氷水中にあるように、チューブを最後まで深く差しておきます。

7. チューブを冷やしている間、寒天培地プレート(計4枚)の底面にそれぞれにまくサンプル名を表記します。(できるだけプレ−トの端に記入しましょう。)

LB”プレート;−DNA

LB/amp”プレート;+DNA、−DNA1枚ずつ)

LB/amp/ara”プレート;+DNA

8. ヒートショックを行います。チューブラックごと、42℃に調節しておいたウォーターバスに50秒浸けます。ウォーターバスに浸ける前に、チューブがラックに深く差し込んであることを確認します。50秒経ったら、チューブを氷水上に戻します。氷水上とウォーターバスとの間の移動を速やかに行うことがポイントですので、ウォーターバスのそばまで、氷水にさしたまま運んで下さい

      

 

9. 氷水上に2分間置いた後、ラックごとチューブを実験台の上に移し、室温に戻します。もう片方のチューブの蓋を開け、新しいピペットを用いてLB培地を250μl加え、蓋を閉めます。もう片方のチューブにも同様に、新しいピペットを用いてLB培地250μlを加えます。10分間室温で放置します。(以後、これを大腸菌サンプルとする)

 

 

 

10. チューブの蓋が閉まっていることを確認し、タッピングして溶液を混ぜます。 新しいピペットを用いて9.で調製した大腸菌サンプルを100μl吸い取り、プレートの蓋を開けて滴下し、蓋を閉めます。それぞれの大腸菌サンプルには違うピペットを用い、決まったプレートに滴下します。

“+DNA”チューブを “LB/amp”、“LB/amp/ara”プレートに まく

“−DNA”チューブを ;“LB/amp”、“LB”プレートに まく

 

11.新しい植付け用ループを使って滴下した大腸菌サンプルを広げます。プレートの蓋を開け、ループ先の輪の部分を培地表面と平行に滑らせるように、手早く、プレート表面にできるだけ広い範囲に広げたら、蓋を閉めます。操作はプレート1枚ずつ行い、新しいプレートごとに新しいループを使用してください。

      

12. 4枚のプレートに大腸菌サンプルを広げたら、プレートを裏返して積み上げ、テープでくくります。班名を明記し、37℃インキュベーターに次の日まで入れておきます。

               

最後に、手を洗いましょう。


結果

1. 実験室 の光の下4つのプレートを、次の点に注意しながら観察し、表にまとめましょう。また、左側の円の中にはコロニーが生えている様子を書きましょう。

@ それぞれのプレートには、どの程度コロニーが生えていますか?

A コロニー(大腸菌)の色は?

B それぞれのプレートに生えたコロニーの数を数えましょう。

2.プレートにUVランプを照射し、観察しましょう。

 

プレート

プレートの様 子

UVランプを照 射した時

DNA-LB

 

 

 

 

 

 

DNA-LB/amp

 

 

 

 

 

DNA-LB/amp

 

 

 

 

 

 


+DNA-LB/amp/ara

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考察

1.−DNALBプレートと−DNALB/ampプレートを比較してわかることを書きましょう。 

 

2.+DNALB/ampプレートと −DNALB/ampプレートを比較してわかることを書きましょう。 

 

3.+DNALB/ampプレートと +DNALB/am/ara プレートを比較してわかることを書きましょう。 

 

 

感想

 

 

 

 


付録A  実験に出てくる用語の解説

 

寒天培地 ;バクテリアの生育をサポートする固形物質。炭水化物やアミノ酸、ヌクレオチド、塩、ビタミンを含みます。

コロニー ;寒天培地上で生育した、同じ遺伝子を持つ細胞の凝集塊。一つのコロニーにあるすべての細胞は同じ遺伝子を持つので、クローンと呼ばれます。

培地 ;液体や寒天のLB培地のような、液体や固体の培地は、バクテリアの生育に必要な栄養源である炭水化物、アミノ酸、ヌクレオチド、塩、ビタミン等を含む酵母の抽出物や肉をタンパク質分解酵素で処理したものから作られています。寒天(アガロース)はご存知の通り、海草から抽出されたもので、加熱すると溶解し、冷却すると固形化する性質を持ち、バクテリアを培養する際には良く使われています。

形質転換用緩衝液 :形質転換用緩衝液 50mM CaCl2pH7.4)中のCa2+イオンがDNAplasmid)の負電荷(リン酸基を持つため)を中和し、同じく負電荷を持つ、細胞膜のリン脂質との静電的反発をやわらげます。そして、DNAは 細胞膜の外側から内側に通り抜けることができるのです。

ヒートショック:ヒートショックを与えることにより、DNAの細胞膜を通り抜ける割合が増加します。メカニズムについての詳細は未だ解明されていません。細胞にヒートショックを与える時間は経験的に最適な条件が見つけられていて、研究者が使う細胞の種類によって違っています。

抗生物質による選別;抗生物質であるアンピシリンに耐性を持つ、β-ラクタマ−ゼというタンパク質をコードする遺伝子を組み込んだプラスミドDNAをバクテリアに導入します。そのプラスミドを持つバクテリアはβ-ラクタマ−ゼを産出し、分泌します。分泌されたβ-ラクタマ−ゼはLB/寒天培地に含まれるアンピシリンを不活性化し、バクテリアが生育できるようにします。プラスミドを持ち、β-ラクタマ−ゼを産出できるバクテリアだけがアンピシリン存在下で生き残ることができます。形質転換されなかった細胞、すなわちプラスミドを持たないバクテリアはアンピシリンを含むセレクションプレート上では生育できません。

アラビノース;バクテリアが通常食物として利用する炭水化物、糖の一つ。

β-ラクタマ−ゼ;β-ラクタマ−ゼは抗生物質であるアンピシリンに対しての耐性を、細胞に与えるタンパク質です。β-ラクタマ−ゼタンパク質はβ-ラクタマ−ゼ遺伝子を 含むプラスミドを持つバクテリアによって産出、分泌されます。分泌されたβ-ラクタマ−ゼはアンピシリンを不活性化し、それによってバクテリアが生育し、新しい、例えばGFPのような目的の遺伝子が発現されるのです。

バイオテクノロジー;生存している生物に対して、生物が実際に行っている分子レベルでの生命活動を利用して有益な物質を産出できるように、主に遺伝子レベルでの操作を施すこと。

遺伝子工学;生物の遺伝 子DNAに、他からの遺伝子を組み込んだり、そこから切り出したりという操作を行うこと。

ローニング;ある一つの細胞を培養することにより多数に増やした時、それらの細胞はすべて、同じ遺伝子を持つことになります。この増やされた多数の細胞をクローンといいます。そして、クローン細胞を作り出す過程をクローニング、といいます。特異的なDNA配列または遺伝子のコピーは、導入された細胞(宿主)の細胞分裂により作られます。

遺伝子発現調 節;全ての生物の遺伝子発現は環境に適応するために、その時に不要なタンパク質が無駄に生産されないように入念に調節されています。食物の運搬と消化に関与する遺伝子も、発現調節されている遺伝子の良い例の一つです。例えば、糖であるアラビノースはバクテリアにとってエネルギー源と炭素源の両方に使われます。例えばバクテリアでは、アラビノースを食物として消化する消化酵素をコードする遺伝子は、アラビノースがないと発現されませんが、アラビノースが存在すると発現されます。そして、アラビノースが消化されてなくなると、遺伝子発現もストップします。言い換えれば、バクテリアの周りにアラビノースがあると消化酵素がつくられ、アラビノースがなくなると消化酵素は作られなくなるのです。付録Bに、遺伝子発現調節におけるアラビノースの役割と、GFP遺伝子の発現について詳しく説明がありますので参照してください。

Green Fluorescent ProteinGreen Fluorescent ProteinGFP)は生物蛍光を発するオワンクラゲ、Aequreavictoriaから単離されたタンパク質です。GFP遺伝子は最近になってクローン化されました。特徴的な構造ゆえに、紫外線を照射するとそのエネルギーを吸収し、吸収されたエネルギーは緑色のきれいな光となって放出されます。

プラスミド;環状のDNAで、自己複製ができます。抗生物質耐性タンパク質やGFPのようなクローン化された他の生物の遺伝子を組み込むことがでます。

pGLOGFP遺伝子とアンピシリン耐性であるβ-ラクタマ−ゼ遺伝子を含むプラスミド。

組換えDNA技術;遺伝子を単離したり、それらの構造や機能を変えるために、目的のDNA断片を切り取って、他の遺伝子に組み込む操作。

スクリーニン グ;たんさんのバクテリアの中から、目的のバクテリアを選別する過程。無菌操作“清潔”に操作を行う、という規則のもと、実験中に外部からのバクテリアの混入を最小限にするために、注意深く行う実験操作。

プレートにま く;植付け用ループにバクテリア溶液をつけ、寒天培地プレート上に広げる操作。

ベクター;例えば、プラスミドのように、他の生物からのDNA断片を組み込まれ、宿主となる細胞に導入される、自己複製するDNA分子。


 

付録B

発現調節、1遺伝子=1タンパク質

 私達の体は、たくさんの異なった役割を持つ、何千ものタンパク質から成り立っています。消化酵素も、その一つですし、私達の体中に走っているホルモン信号や病気から守ってくれる抗体もタンパク質です。その、タンパク質を作るもとになる情報は、DNAが持っています。タンパク質を作り出す暗号を含むDNA部分は遺伝子と呼ばれ、人間にはおよそ3万の遺伝子が存在します。それぞれ1つの遺伝子は、1つのタンパク質をコードしています。たとえば、消化酵素をコードする遺伝子は消化酵素だけをコードし、抗体や目の色素をコードする遺伝子とは異なるのです。

 私達生物は、私達の遺伝子が発現するのを自身で調節することで、進化や細胞特異性、環境適応など、さまざまな理由から、細胞中で機能するタンパク質の量や種類を調節します。遺伝子発現調節は、状況変化への適応だけでなく、不必要なタンパク質が過剰生産されるのを防ぎます。食物の運搬と消化に関与する遺伝子も、発現調節されている遺伝子の良い例の一つです。例えば、糖であるアラビノースはバクテリアにとってエネルギー源と炭素源の両方に使われます。バクテリアは食物としてアラビノースを消化するために、3種類の酵素(タンパク質)を作り出します。これらの消化酵素をコードする遺伝子は、アラビノースがないと発現されませんが、アラビノースが存在すると発現されます。これはどういうことでしょうか?

 タンパク質の発現調節はDNAからRNAが転写されるときに起こることもあります。この調節はプロモーターと呼ばれる、テンプレートであるDNA上にあり、RNAポリメラ―ゼが結合しRNAへの転写が始まる、という非常に特異的な位置で行われます。バクテリアでは、関係のある遺伝子はある場所に集中して存在し、一つのプロモーターで転写調節されています。この遺伝子の集団(=クラスター)はオペロンと呼ばれ、1つのプロモーターで転写調節されています。

 アラビノースを分解する酵素を始めとした、3つの消化酵素はaraBaraAaraD3つの遺伝子によってコードされています。これらの遺伝子はクラスターを形成しており、アラビノースオペロンとして知られています。これら3つのタンパク質はPBADという1つのプロモーターによってRNAへの転写が開始されます。3つの遺伝子の転写はプロモーター、オペロンを含むDNAテンプレート、RNAポリメラ―ゼ、araCというDNA結合タンパク質が必要になりま す。araCRNAポリメラ―ゼが結合するアラビノースオペロンの始まるDNA配列部分に結合します。アラビノースが存在すると、バクテリアはアラビノースを細胞内に取り込みます。取り込まれたアラビノースはDNAに結合しているaraCと作用します。RNAポリメラ―ゼがDNAに結合することを手助けできるように、アラビノースとの作用によってaraCは形を変え、3つの遺伝子の転写が始まるのです。3つの酵素が作られると、その酵素が機能してアラビノースが消化され、なくなっていきます。アラビノースがない時には、araCはその形を変えることがないので、転写は行われなくなります。

 pGLOプラスミドのDNAには、アラビノースオペロンの一部分が組み込まれています。プロモーターPBADaraC遺伝子が存在しています。しかし、アラビノース消化酵素をコードするaraBaraAaraDは含まれておらず、変わりにGFPをコードする遺伝子が1つ、組み込まれています。このことによって、アラビノース存在下ではaraCRNAポリメラ―ゼの結合を促し、GFPが作り出されるのです。細胞が緑色に光るのはGFPが細胞内でたくさん作り出されるからなのです。アラビノースがない場合は、RNAポリメラ―ゼがDNAに結合する手助けをしないため、GFP遺伝子は転写されません。GFPタンパク質が作り出されないときは、細胞はもともとの細胞の状態、光らない、白いコロニーになるのです。

このことは、DNARNA>タンパク質>性質・特徴という、生物を理解する上で、大変重要な1つのしくみ(セントラルドグマ)の格好の例なのです。