最新更新日:2002/12/27

 川窪伸光                                    戻る
 
 川窪研究室での卒業研究とは? 1

信じるな、されば楽しめる



 大学における卒業研究とは,初めての教科書からの公認脱出である.今まで,ずーっと教科書で,講義室で,先人の研究の思考手順について学んだり,研究成果を記憶したりしてきたかも知れない.しかしこれからはそうはいかない.自分で新しい研究成果を生み出すのだ.

 新たな発見に結びつく研究という作業は,先人の調査結果の単なる確認作業ではない.つまり先人達の業績や発見を鵜呑みにしていたのでは,新たな発見はまったく生まれない.先人達の観察結果,思考結果は,現在の私たちの常識をつくりあげていて,それはそれで非常に重要だ.しかし,それらの成果,つまり現在の常識は,以前の常識を否定して成立してきたことに気づかなければならない.

 新たな発見は,常識を塗り替えることであり,現在の常識を疑うことから生まれてくる.大学の3年間を過ごし,高度な知識と思考力を身につけつつあるのだから,もうそろそろ教科書を素直に信じることはやめ,自分の目や耳などの五感で得た現象に対し、独自の理解をめざそう.教科書は先輩研究者たちの発見したものの集積として捉え,教科書の内容を自らが書き変える心意気を持とう.

 先人の発見は,自らが直接観察確認できなければ,あくまで仮説や仮定として取り扱うべきだ.つまり「先人の発見(考え)が正しいのであれば,自分の観察した事実はこう理解できる」と扱うべきである.その思考過程で矛盾が生じなければ,仮説は仮説のままで保持しよう.

 しかし,先人の記述と自分の観察結果の間に、なんらかの矛盾が発生し,かつ自分の観察結果に絶対の自信があれば,その矛盾は仮定や仮説の不完全さから由来するはずだ.つまり,仮定や仮説とした先人の成果がまちがっているのかもしれないのだ.そう、もしあなたの観察・思考結果が正しければ.