奈良絵本「小しきふ 上・下」
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書 誌
解 題
翻 刻『小式部』は、紫式部・和泉式部・小式部という三才媛を親・子・孫の関係として語る 御伽草子(室町時代物語、中世小説とも)の佳作である。内容は多彩で、歌徳を軸に、石 山寺での『源氏物語』六十巻執筆説・酒呑童子譚・道命説話・女庭訓・捨子譚・大江山説 話など、種々興味深い説話や伝承が綴り合わされている。
伝本には、次の五本が知られる。(1)天理図書館蔵本(藤井乙男氏旧蔵本。挿絵なし写本。『近古小説新纂』『室町時代物語大成 五』所収)。
なお、他に東洋大学に同名の奈良絵本が蔵せられているが(岩波文庫『続お伽草子』『和泉式部全集 本文編』所収)、これは内容を異にする別本である。
(2)岐阜大学附属図書館蔵本(反町茂雄氏旧蔵本。奈良絵本)。
(3)小野幸氏蔵本(前田善子氏旧蔵本。奈良絵本。但し挿絵を欠く。『大成 補遺一』所収)。
(4)戸川濱男氏旧蔵本(巻子本。内題『いつみしきふの物かたり』。『小式部』の下巻に相当。挿絵なし。『大成 二』所収)。
(5)赤木文庫旧蔵本(奈良絵本。下巻欠)。
本文の関係については、岐大本・小野本・戸川本・赤木本が近似し、天理本がやや離れた位置に立つようである。いずれにしても、本書は奈良絵本系の唯一の完本であり、貴重な資料ということが出来よう。
(解説 岐阜大学教育学部教授:弓削 繁)
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