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環境の中での農業の役割
−農業に関わる環境問題−

★環境庁が水質基準に硝酸性窒素を追加
 環境庁は、1999年2月22日に、水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準及び地下水の水質汚濁に係る環境基準
 (以下、「環境基準」という)に硝酸性窒素を追加し、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を10ppm以下と定めました。
★硝酸性窒素が何故問題となるか?
 硝酸性窒素は、体内に入ると体内の嫌気的条件下で亜硝酸性窒素に還元され、酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンと結合し、特に乳幼児に酸素欠乏症(メトヘモグロビン症)、いわゆるチアノーゼ症状を引き起こす原因物質となる可能性がある。また、硝酸、亜硝酸は、強力な発ガン性物質であるニトロソアミン類の生成にも関与するといわれている。
★農水省による全国297地点の地下水調査結果(1987〜1991)
 地下水の硝酸性窒素の平均濃度は4.83ppmで、最高濃度の地点は77.4ppmであった。
 また、施設園芸地域の平均濃度は9.1ppm、畑作地域では8.9ppmであった。
【10年前に行われた農水省の地下水調査結果は、かなりの施設園芸地帯や畑作地帯の地下水の硝酸性窒素濃度がこの環境庁による環境基準を越えていることを示しています。】
【地下水汚染を積極的に回避した実例】
◎【岐阜県各務原市の例】
 岐阜県各務原市は全国でも有数のニンジン産地として有名であるが、同時に名古屋から30分以内の距離にあることから、名古屋のベッドタウンとして人口が急増している地域である。
 1974年に各務原市は、人口増加に伴って新たな地下水水源を求めて井戸を試掘し、その水質を分析した結果、硝酸態窒素濃度が水道基準値(10ppm)の2倍以上であることが判明し、問題となった。そこで、各務原市地下水汚染研究会(岐阜薬科大学、同志社大学、岐阜大学)に調査を依頼した結果、1979年に研究会は報告書を作成し、【ニンジン産地の肥料が地下水汚染の原因である】と断定した。
 そこで、岐阜県に対策を委託し、下記の方策が取られた。
  ◎春夏作については施肥量を約30%減らす。
  ◎ニンジンの生育に伴って施肥量を調節し、窒素利用率を高める。
  ◎作付け期間以外は牧草などを栽培し、土壌中に残留している余分な肥料を吸収させる。
 上記の対策を実施した結果、地下水の硝酸性窒素濃度は基準値以下に低下し、『環境庁長官賞』を受賞した。

★現在、各務原のニンジンは「環境に優しい」との評価を消費者から受けており、新ブランドを確立した
◎施与した肥料(窒素)の行方【トマトの事例】
 施与した窒素肥料がトマトに吸収された割合を調べた結果、植物体全体で35%が吸収され、そのうち葉7%、茎4%、根1%で、果実では23%を占めていた。土壌中には残留51%が残留し、地下水への流失や気化したものが14%であり、作物に吸収される量は予想外に少なかった。

★水質汚染を軽減するための改善策
  ◎施肥量の低減
    @作物の肥料吸収効率を上げる → 作物の生長にあわせて肥料をこまめに与える
    A土壌中の硝酸性窒素を測定しながら肥料を与える
    B作物の樹液を測定しながら、肥料を与える
    【土壌診断・栄養診断による施肥管理の適正化】
  ●これらの対策は、生産コストを上昇させる原因ともなり、生産上問題となるが、消費者との相互理解を深めることで解決できるものと考えます。