福井の Home に戻る


 スリップスの防除対策
 アザミウマ(スリップス)のなかで、大きな被害を及ぼす種類としてミナミキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマがある。

ミカンキイロアザミウマ
  成虫は体長1.0〜1.7mm。黄色黒褐色。
  1990年に千葉県と埼玉県で初めて確認された北米原産の害虫。
ミナミキイロアザミウマ
  成虫は体長1.3o前後、全体が黄色で翅の合わせ目が黒く筋状に見える。
  1978年に南西日本で初めて発生した。

 ●卵〜成虫までの期間は10〜20日
 ●成虫の寿命は30〜40日
 ●成虫の1匹の雌は150〜300個を産卵し、1ヶ月後には300倍に増殖する
 ●蛹の時期が近づくと地表へ移動し、土中で蛹となる
 ●多種多様な植物に寄生する。
 ●休眠しないので、施設内では冬でも発生する。
 ●施設では2月下旬から増加し始め、5〜6月に最も活発に活動し、初夏〜初秋に大量の増殖する
 ●成虫の飛翔能力は低く、自力では5m程度しか移動できない
 ●成虫は青色、黄色に誘引される

防除対策
★耕種的防除
 @施設では、作付け前に除草を行い、ハウスを閉め切り、次の作付けまで20日以上あけ、成虫を餓死させる。
 A本種の発生した施設では土壌消毒を行い、蛹または成虫を死滅させる。
 B株や苗で持ち込まれる場合が最も多く、株や苗を購入する場合は本種が寄生しているかどうかよく確認する。
 C育苗専用ハウスを設けて隔離栽培し、育苗時の防除を徹底する。
 Dハウス内の雑草はこまめに除草を行う。
 E側窓開口部にアルミ蒸着フィルム交織ネットや寒冷紗を張り、スリップスの侵入を防ぐ。
 F青色、黄色に誘引されやすいため、ハウス入り口などに黄色や青色の肥料袋などを放置しない。
 Gシルバーフィルムによるマルチは忌避作用を持つ。
 H近紫外線除去フィルムを利用して虫の行動を抑制する。
 I収穫後不必要な株や苗、残渣は速やかに焼却処分する。
 J圃場周辺にある鑑賞用の花きや雑草は発生源になるので処分する。
 K施設周辺(最低5m)の除草を行い、施設内への飛び込みを減少させる。
 L黄色、青色の粘着トラップで発生の有無を観察して、発生動向に充分注意する。
 M強風の吹いた直後には近隣に発生地域がなくても、綿密に調査を行う。
 N木酢液を噴霧することで、スリップスを忌避する効果がある。
 O砂糖を200倍〜500倍に希釈し、有機リン剤を溶かして噴霧すると、新芽や蕾から這い出し、舐めて死滅する。
 Pククメリスカブリダニ(天敵資材)を放飼し、防除する。

★薬剤防除
 本種は薬剤に対する抵抗性が発達しているため、効果のある薬剤が少なく、防除が困難な害虫である。効果のある薬剤としては有機リン系殺虫剤、ネライストキシン系殺虫剤、キチン合成阻害剤などがある。

【基本的に薬剤防除は困難で、薬剤耐性が出やすいので、【耕種的防除】を組み合わせて発生を抑えることに務め、殺虫剤での防除は最後の手段として用いる】
【薬剤耐性の変異は10万分の1の確率で発生すると推定され、10万匹が発生している大発生の状況まで放置した後に殺虫剤をかけると、速やかに耐性を持つ変異が出ると考えられるので、薬剤防除は初期発生の段階で実施する。】
【初期発生の判断は黄色や青色の粘着とラップを用いて行い、定期的に粘着トラップに付着した個体数を計数する。】