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PrimaRosa Flowers Ltd.
Ol Joro Orok, Kenya

2007年7月26日にPrimaRosa Flowers Ltd.を訪問しました。
 PrimaRosa Flowers社はケニアに拠点を持つ国際的な切花生産・流通・加工会社で,ケニア国内に2つの農場を持っています。第1農場はナイロビ南東60kmのAthi Riverにあり,2003年に開設されました。第2農場はNaivashaの北80kmのNyahururu市の南Ol Joro Orokにあり,2005年に建設されました。バラの生産面積は,第1農場が35ha,第2農場が32haで,この他に80haのキクの切花生産施設があります。キクの年間生産量は約1億5,000万本です。
 インド資本の会社で,インドのムンバイにも生産農場を持っています。

  

 1棟1.6haの施設が20棟あり,2棟は栽植を行っている最中でした。
 温室はイスラエルタイプの近代的施設で,通路も広く,機能的に整備されていました。被覆ビニルはイスラエル製の光拡散タイプで,張り替えた時期(2007/05/24)が記入されており,ビニルの老化による日射量の低下を防ぐための次の張り替え時期が判断できるようになっていました。

   

PrimaRosa Flowers社はドバイフラワーセンターに切花加工・輸出会社のSpectrum FZCO社を設立しています。
 ナイロビ空港の近くにFlora Hollandの集荷場があり,いったんそこで保冷を行った後にドバイフラワーセンター(DFC)を経由してヨーロッパに輸出します。ヨーロッパの輸出先はFlora Hollandで,ほぼ100%を出荷しており,直接販売はほとんどないとのことです。
 小口の取引ではありますが,日本向けとして(株)クラシックを経由して2,000本/週を輸出しています。
 今回の視察では第2農場を視察しました。
 Ol Joro Orokの第2農場はナイロビ空港からは車で8時間かかりますが,ナイバシャ湖周辺と比べて標高2,350mと高いため日較差が大きく,高い日照条件を求めて農場を選定したとのことです。第1農場のあるAthi Riverの標高が1,600mであることを考えると,第2農場はよりバラ生産に好適な条件だと思います。施設内の気温は,最低気温4℃,最高気温33℃で,まさにエクアドルとほぼ同じ気候ということができます。
 当然,面積当たりの収量は多く,切花長,花径が大きくなります。32ha の生産本数を4,500万本と想定していますので,140本/u(460本/坪)と極めて多収です。

    

2つの農場を合わせた従業員数は1,700名で,第2農場の従業員は560人です。従業員の人件費は4,500〜5,000シリング(7,920〜8,800円)/月で,これに諸手当を支給しています。

パミスを用いたHydroponic栽培です。

  

温室で収穫された切花は,ある程度の切花長に選別し,品種毎にバケツに入れて選花場まで運ばれます。
下中央の写真は,肘まである革手袋です。採花する時だけでなく,腕でバラを抱きかかえる時に結構トゲが痛いんですよね!

  

 2つの農場を合わせたバラ生産量は1億本に達しており,第2農場の生産量は2006年が2,000万本,2007年は3,000万本を想定しています。現在2棟について新たに植栽を行っており,2008年は4,500万本に達する予定です。
選花場は近代的な建物で,広い選花スペースと3種類の温度の冷蔵庫がありました。

 

 温室で収穫された切花は選花場の冷蔵庫に直接搬入されます。PrimaRosa Flowers社では葉が傷まないようにプラスチックネットで切花を包んで運搬していました。ケニアの生産会社では珍しい切花の取り扱いです。

  

 温室から冷蔵庫に搬入された切花は充分予冷された後に選花スペースに搬出され,選花が行われます。選花は切花長10cmごとに40〜90cmに規格分けしていました。選花は人力によるものとオランダ製の全自動選花機が導入されていました。
 人力による選花の選花ノルマとして2,000本/人/日が課せられているそうです。これに対して自動選花機の処理能力は8,000本/時間です。全自動選花機には9人の労働者がついていましたので,仮に6時間選花機を稼働したとして5,300本人/日の選花効率となります。人力による選花の2.5倍程度の効率といえます。
 ただ,従業員の人件費が8,000円/月と安いことを考えると,あえてオランダのように全自動選花機をケニアで導入する意味があるのか疑問に感じました。



人力による選花 【上の画像をクリックすると動画が見られます
(人力といいながら,結構選花スピードは速いように見えます。)


(動画を見る限りでは,作業効率はそれ程高いようには見えないのですが・・・。)



全自動選花機による選花 【上の画像を各々クリックすると動画が見られます】

選花されたバラは20本ずつ束ねられて梱包されます。

梱包された花束は最終的な品質検査を受けます。

梱包された花束は速やかに冷蔵庫に入れられ,予冷されます。

  

予冷された花束は,冷蔵庫の中で箱詰めされて出荷まで品温を維持されます。これらのすべての作業は冷蔵庫の中で行われるために,従業員はコートを着て作業を行っていました。
出荷先は「F. Holland (Flora Holland)」と記入されていました。

   

花保ち検査を行っていましたが,検査のための検査室はなく,選花スペースの一角で行われていました。写真の花は25日間の花保ち状況とのことでしたので,定期的に花保ち検査が行われているわけではないようです。

温室に降った雨は雨樋を通じて温室内の集水パイプを経由してポンプで貯水池に送り込まれます。貯水池の水は雨水に加えて井戸水でも補充されます。

  

病害虫の防除には気を使っており,温室の側面はすべて1mm以下の網で覆われていました。農薬は専用のパイプラインが温室の通路に張り巡らされており,加圧散布機で散布します。
事務所には温室ごとに農薬散布スケジュールがビッシリと書き込まれたホワイトボードがありました。

   

生産品種はAKITO,AQUA,MARIE CLAREなど12品種ですが,新品種試作温室ではSchreurs,Preesman,Olij,Lex+などのオランダの育種会社の品種が試作されていました。
定植苗は苗生産会社から購入しており,自社での生産は行っていません。