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Batian Flowers
P.O. Box 266 60203 TIMAU, KENYA

Terra Nigra社のFeici Smit氏の案内で,Batian Flowers社を訪問しました。
 Batian Flowersはケニアの首都ナイロビ(Nairobi)の北220kmに位置し,ケニア山の北西山麓の高原地帯にあります。標高は2400mで,ケニア国内の他のバラ産地の標高が1500〜1800mであるのに比べて最も高いところにあります。社名の「Batian」はケニア山の主峰Batian peak(5,199m)にちなんでいます。
 1997年にオランダ人のRene Mulder氏とSimon van der Burg氏が設立したバラ生産会社で,生産面積は15haです。社長のRene Mulder氏(37歳)はオランダ国内でもバラ生産会社Asante Maua b.v.を経営しており,毎月オランダとケニアを2週間ごとに往復しているとのことで,ケニア訪問直前にアールスメール花き市場でお話を伺うことが出来ました。(ちなみに会社名の「Maua」はスワヒリ語で「Flower」の意味だそうです。) 日常的な管理はケニア人のマネージャーが担当しています。
 生産施設はイスラエルAzron社製の天窓開放式の無暖房ハウスで,15棟(1棟の面積1ha)です。ケニアでは農業資材の輸入品に対して無関税の政策を取っているため,ハウスの建設コストは10$/u(3,600円/坪)と安く,イスラエル製の資材が多用されています。Batian Flowers社の総面積は100haで,ハウスは年々2haずつ増設されています。ケニア人従業員は約300人で,5000uあたり8人で生産を担当しています。1人あたりの人件費は1.5$(保険などの福利厚生費を含めて2$)です。
 案内してくれたケニア人マネージャーは礼儀正しく,労働者のリーダー的印象を受けました。全般的に労働者の質は高く,勤勉な印象でした。 

   
     イスラエルAzron社製の無加温ハウス                事務所棟            ハウスの建設年

ナイロビの気温と降水量
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
平均気温(℃) 19.0 20.6 19.8 19.9 18.7 17.9 16.4 16.6 18.0 20.1 19.3 18.3
最高気温平均(℃) 25.1 27.9 26.3 24.9 21.9 21.8 20.3 22.0 24.7 25.8 23.8 24.0
最低気温平均(℃) 12.9 13.1 13.4 14.9 15.4 13.9 12.5 11.2 11.3 14.4 14.9 13.6
降水量(mm) 73.6 57.9 89.0 209.0 190.5 38.4 17.8 22.8 35.7 55.7 148.3 90.6
年間平均気温 18.7 年間降水量 1,029.3mm ケニア中央統計局調べ(1991年)
生産品種はSchreurs社の中輪品種を中心に11品種を栽培しており,台木は一部の覆輪系品種ではInermisも使用していますが,ほとんどがNatal Briarを使用しています。苗はオランダのOlij Rozen社から輸入しているとのことです。栽植密度は10株/uで,主な品種は「Marie Clare!」,「Trixx!」,「Poem!」,「Red calypso」です。株の更新は6〜7年ごとに行われます。
年平均収量は200本/m2と日本に比べて著しく高く,高日射量が影響していると考えます。上の表を見ると,年間降水量が1,029mmと日本の半分程度で,晴天日が多いことが伺われます。また6月から9月は乾季にあたり,ほとんど雨が降りません。訪問した7月中旬は乾季のまっただ中で,空の青さがまぶしいくらいでした。
 ハウス内の平均気温は23〜24℃で,採花日数は年間を通じて45日程度です。したがって年間8回程度の採花が可能で,1株あたり3本の花を年間8回収穫し,栽植密度が10株/uという数値から,3本×8回×10株=240本/u/年という収量になるものと思います。ハウスは無暖房ですので,最低気温は8〜10℃に下がります。上の表の最低気温は標高1,600mのナイロビでの気温です。Batian Flowersの標高は2,400mですので最低気温は5℃低く,訪問した7月は6℃位に下がっていたと思います。ハウス内平均気温は23〜24℃ですが,天窓のみのハウスの構造上,昼間のハウス内の気温は30℃以上に上がり,夜間が10℃以下と日格差が大きく,採花日数は短いものの花径は大きくなります。(平均気温が採花日数に大きく関与し,花径には最低気温が大きく関与します。) したがって,栽培品種は中輪系品種ですが,とても中輪品種には思えないくらいの大輪でした。
養液土耕が主体ですが,5haのロックウール栽培も行われています。養液土耕の点滴潅水システムはイスラエルのネタフィム社製です。

   
ハウス内の通路は一日数回清掃が行われ,ゴミ一つ見られません。
点滴チューブ方式の養液土耕の点滴潅水システムが完備されています。

 
ケニア山からの豊富な雪解け水を貯留槽にポンプアップし,養液調整室で調整して各ハウス毎に潅液されます。

  
5haの面積でロックウール栽培が行われていました。
ケニア国内でロックウール栽培が行われているのはBatian Flowers社のみと思います。

 
農薬散布は手散布ですが,マスク着用義務が厳しく指導されています。違反すると即日解雇もあるとのことです。

 
大型の冷蔵庫が2棟あり,低温管理が行き届いています。

   
収穫は朝,昼,夕の3回行われ,収穫された切花はハウス内で一時選別されて,人力で出荷場まで運ばれます。

   
収穫された切花はハウス内でも選別が行われており,規格に合わないバラは惜しげもなく捨てられます。
選別されたバラは前処理剤の入ったバケツに入れられて冷蔵庫に運ばれます。

    
出荷場では人海戦術で選別が行われます。オランダで見たような自動選花機はありません。
手際よく選別されたバラは25本束で梱包されて箱詰めされ,冷蔵庫内で保管されます。
最終的な選別はオランダのAsante Maua b.v.で行われます。恐らく製品にBatian Flowers社の名前がでることないと思います。

上の写真の従業員の服の色を見ると,赤,緑,青に区別されています。
この服の色で作業担当が区別されており,赤い作業服は収穫部門,茶色の服は栽培管理部門,
青色が選別部門,品質管理部門というように,一目で作業部門がわかるようになっています。


生産されたバラの全量がアールスメール市場に輸出されます。
保冷車で毎週5回の定期出荷が行われ,高速道路を経由してナイロビ空港からアールスメール花市場に輸出されます。