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De Ruiter's New Roses International B.V

 De Ruiter's New Roses International B.V.社は1990年頃より切りバラの育種に力を入れ始め、現在ではオランダを代表するバラ育種会社の一つとなっています。環境問題にも配慮を行っており、ISO9002、ISO14001も取得しています。
 De Ruiter's New Roses International B.V.社が育成した主な品種には、日本でもおなじみのMadelonやVivaldiなどがあり、最近のものではUniqueシリーズなどが京成バラ園芸株式会社から販売されています。

 

 De Ruiter's New Roses International B.V.社はバラの育種の他、切りバラ生産も行っており、切りバラ生産では循環式養液栽培を導入していました。培土はココピート(スリランカ産)を用い、給液した養液の余剰水はベンチ下の樋で全量回収し、サンドフィルターで除菌した後、加熱殺菌装置で殺菌する「併用式」を採用していました。

   

 サンドフィルターは、Pythium(根腐病)菌やPhytophthora(疫病)菌の除菌には効果が高いのですが、線虫などには効果がないため、加熱殺菌を併用しているとのことです。加熱後の冷却は、給液した「戻り養液(回収養液)」との熱交換で実施しているとのことです。下左の写真が「加熱殺菌装置」です。下右の写真の栽培ベッドの下に深さ150cmのサンドフィルターのタンクが埋設されており、回収された養液はサンドフィルターを経て、加熱殺菌機で再度殺菌されます。殺菌された「戻り養液」に60%の新たな養液を添加して、再度給液する完全閉鎖型循環式養液栽培が行われていました。

 

 積極的な環境対策への取り組みとして、天敵の利用も盛んに試みられていました。下の写真(上段)は商品名「Hypo Line m (Hypoaspis miles製剤)」で、栽培ベッドの各所に設置してあり、ミカンキイロアザミウマ(western flower thrips)とキノコバエ(fungus gnats)の防除に使用していました。また下の写真(中段)は商品名「Phyto line p (Phytoseiulus persimilis製剤)」で、主にダニ類(ナミハダニなど)の防除に使用されていました。
 温室内に設置した粘着性プラスチック黄色板(下の写真下段左)に付着する害虫を毎週1回定期的にチェックし、天敵防除でスリップス(アザミウマ類)については100%の防除を達成しています。同様に、ハモグリバエについては80%、ダニ類については40%の防除効果を達成し、アブラムシについては試行中でした。
 薬剤(農薬)防除を行っていた時期と比較して、コスト増は免れないものの、生産性が向上しているとのことです(薬剤ストレスが回避されることが原因と推定される)。まだ完全な天敵防除システムとはなっておらず、薬剤防除も併用している段階であるが(下の写真下段右はキリ状農薬散布装置)、消費者の動向に対して敏感である必要性や、野菜では既に政府の指導の基で80〜90%の天敵防除の実施が行われている現状を踏まえ、近い将来花き生産においても政府の指導が行われる可能性があり、その事前対応も含めて積極的に取り組んでいるとのことでした。

  
 
 

 オランダの冬季は日照時間が短いことに加えて曇天が多く、極端な日照不足に見舞われるため、補光装置が設置されていました。9月〜5月にかけて5000luxの補光を実施しています。発電と暖房を兼用して行う「コジェネシステム」が導入されていました。

 

 オランダはワークシェアリングが普及しており、正規の従業員とパートタイマー労働者の賃金に差がありません。したがって、パータイマー労働者の時間給は1時間当たり2000〜2500円と日本の3倍程度です。この高い人件費に対応するために機械化・自動化を積極的に行っており、労働効率を低下させる作業については機械の導入を行っています。
 採花する作業では、採花したものを運搬する装置(栽培ベッドの畝間を動く採花箱のようなもので、下には車輪がついており、採花労働者は採花したものを次々と採花箱に入れ、押して歩く。採花箱には200本程度を収納できる)を導入し、採花時間の短縮を図っています。採花したものは採花箱運搬ロボット(採花箱を5個収納でき、通路に設置したレールに従って走行する)が無人で冷蔵庫まで運搬します。これらの運搬装置や運搬ロボットの導入にはかなりの設備投資が必要であろうと考えますが、「毎年支払う人件費を考えると年々の減価償却費の方が明らかに安く、経営上当然のことである」と答えが返ってきました。

 下の写真(左)は採花箱運搬装置の全体像で、一緒に写っている女性の身長が155pですので大体の大きさが判ると思います。この装置はバラの畝間に入っていけるように台車の下に車輪が2つの方式で付いており(下写真左2枚目)、畝間の両側に配置された暖房用配管をレール代わりに利用して移動できます(下写真右2枚目)。採花後は運搬ロボットに採花箱を移し替えます。

   

 このロボット(下写真上段左)の下の赤いボタンを足で押すと自動的にレール(溝)に沿って冷蔵庫まで動いていきます。ロボットが冷蔵庫に近づくと自動で冷蔵庫の扉が開き(下写真上段中央)、無人で冷蔵庫の中に入り、扉が閉まります(下写真上段右)。冷蔵庫にはいると、クレーンが動き出し、採花箱を吊り上げて、ストック棚に移動させます(下写真下段)。
 ロボットの採花箱受け皿やストック棚の受け皿には、殺菌剤(切バラ保持剤「Chrysal Clear」 :Pokon and Chrysal International)が入っています。

  
 

 切花生産部門では、人件費削減に対する配慮から最先端の自動選花機が導入されていました。出荷するバラには消費者の切りバラ観賞用として20本束に1袋の切りバラ保持剤(Chrysal Clear :Pokon and Chrysal International)を添付していました。
 また、事務所の横には育種した新品種の切花保持期間の判定用の恒温室があり、様々な品種が試験されていました。

  

 De Ruiter's New Roses International B.V.社の本来の業務である「バラの育種」温室では数多くの新品種が系統選抜されており、系統番号の品種の花形検定や収量検定が行われていました。