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NATUFLORA社
Bogota, Columbia

 JFMA主催のエクアドル・コロンビア視察に参加し、サントリーフラワーズの方々と共にNATUFLORAを訪問しました。
 NATUFLORA社はコロンビアの首都ボゴタに位置し、総面積は81ha、総従業員数600名で、バラを中心としてアルストロメリア、スターチスなどを生産しています。生産したバラのほとんどはアメリカに輸出されています。

 NATUFLORA社は、コロンビアの切り花生産・輸出会社で組織されている「FlorVerde」にも加盟しており、環境に配慮した生産を目指しています。

 フラワーキャップの保温による切り花促進効果が試験されていました。蕾のうちにフラワーキャップが取り付け、収穫直前になるとフラワーキャップを外して収穫を行います。中国で使われているフラワーキャップは、輸送中の花の痛みを防ぐ目的で使われていましたが、NATUFLORAではフラワーキャップによる保温効果を目的に黒いキャップを用いていました。フラワーキャップが付けられた花の数が毎日カウントされて記帳されます。

 

 温室で栽培されている品種は採花後から次の採花までの日数(到花日数)が掲示されており、過去の採花日とこれからの採花予定日が示されていました。Cherry Loveの到花日数は78日、Red Mikadoは84日、Sophieは94日です。赤道直下(北緯4度)で年間を通じて最高、最低、平均気温がほぼ一定のコロンビアだからこそ出来る開花予想ともいうことができます。

  

温室ごとにpHやイオン組成、収穫本数などが定期的に測定され、グラフ化されて温室に掲示されます。土壌分析結果や収量データなどはすべての温室に掲示してあります。

 

また、萌芽の状態を判別するために基準の写真も掲示され、これに基づいて測定が行われます。

農薬散布した温室には、散布した農薬の種類や散布時刻、再入室可能時刻が掲示されます。

 アザミウマの誘因植物としてハーブが植えられていました。害虫防除としてのコンパニオンプランツの利用はあまりみた経験がありませんでした。カモミール (Chamomile;Matricaria recutita)、ミント(Mentha)などが各畝に植栽されていました。

  

 温室は木製で極めて簡単な構造です。柱はユーカリの丸太を使用しており、基礎はコンクリートで出来てはいますが、止め金具がボルトで固定されているだけです。横の桟は番線で固定されており、天井の梁は簡単なボルトで接続されているだけです。この強度で大丈夫なのかと心配になります。

  

ハウスの構造には筋交いなどの補強構造がなく、周囲の柱をワイヤーで引っ張って強度を確保しています。雨水はすべて排水溝を通じて回収して利用します。

 

温室の中には青色の粘着テープが張ってありました。青色の粘着テープはアザミウマの防除に使用されます。

 害虫の進入を防ぐために防虫ネットが張られていましたが網目はそれ程小さくはないため、アザミウマやダニではなく鱗翅目(我の仲間)の進入を防ぐことを目的にしているのではないかと思います。

 

毎年、畝間の通路にもみ殻を数センチの厚さで大量に投与し、人力で耕起した後に再び畝を立て直します。この作業によってもみ殻で気相率が確保されると共に断根効果もあって根の成長が促されて樹勢の維持が可能になります。
このような大規模な畝間の耕起はみたことがありませんでした。このような土壌改良効果もコロンビアの高品質なバラ生産に貢献しているのでしょう。

  

生産面積が広大なため、収穫したバラを選花場に運ぶ方法としてリフトコンベアのレールが縦横無尽に張り巡らされています。

収穫された切花には、温室番号や品種名などが記載されたバーコードラベルが添付され、リフトコンベアに乗せられて選花場に運ばれます。

リフトコンベアには5個のバケットが乗ります。バケットには再使用できるプラスチックケースが4個入ります。
採花した切り花は、このバケットを使用してすぐに水揚げされます。

 

選花場に搬入される前に、リフトコンベアのバラは頭上からの水スプレーで洗浄され、温室から搬出されるまでの土埃と直前に散布処理された殺虫剤と殺菌剤を除去し、その後にコンベア内の鮮度保持剤が回収されます。

バラの選花場です。ベルトコンベアーの両側から選花梱包された花束がベルトコンベアーに乗せられて冷蔵庫に運ばれます。

 

選花台には鏡が付いており、花の開花状態を選花しながら確認できる工夫がされていました。

結束テープ巻き機。花束を左側から円の開口部に入れて一回転させると花束にテープが巻き付く仕組みです。押し切りは万国共通の便利な道具です。

 

選花された花束は結束されて規格の長さに回転ノコギリで切断されます。

バラの花束は、品種名、切花長、本数などが書き込まれた出荷用バーコードと、収穫温室や規格、本数、選花担当者などの内部データ処理用のバーコードの2種類が貼り付けられています。

 

切り花の花茎はとんでもなく大きく、私の手と比較するとの大きさが判ります。

冷蔵庫から出庫する時には内部データバーコードが読み取られ、その日のうちに出荷された品種と本数が電光掲示板に掲示されます。この日はFreedomが19,435束が出荷されていました。

  

選花場の脇で日保ち試験が行われていました。日保ち試験の花には、採花日、冷蔵庫搬入日時、出荷日時が記載され、アメリカへの輸出を想定した温度処理を行った日時などが克明に記載されていました。

 

台木の挿し木萌芽処理施設。ここで台木のNataarbrierが挿し木されます。

 

ここでも台木(Natarbrier)のシュートを折り曲げた仕立て方が行われていました。Natarbrierを挿し木して発根した台木の苗を定植します。台木のシュートが30〜50cm程度伸長したところで切花品種を芽接ぎします。

  

福利厚生施設も充実しており、従業員食堂や休憩所はもちろん、バスケット、サッカー、バレーボールコートなども完備しています。昼食はバーコード付き従業員カードで注文決済されます。

選花場から出る葉や茎などのゴミはすべて堆肥処理されます。また、プラスチックや段ボールなどの分別回収も徹底して行われていました。