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Multiflora社/Vistaflor社
Bogota, Columbia

 切花生産・加工輸出会社で、1969年に設立されたMultiflora社は切花生産を行い、Vistaflor社は花束加工輸出会社です。Miamiに本社があり、アメリカを中心として、ヨーロッパ、アジアに切花を輸出しています。
 コロンビアは日本への切花カーネーションの最大輸出国ですが、Multiflora社の社長のCarlos McAllister Pomobo氏はカーネーションの日本への輸出を初めて成功した人です。
 Multiflora社はコロンビアに4カ所の農場を持っており、生産面積は60haで、契約農場を含めると生産面積は250haに及びます。Multiflora社はコロンビアのほか、スペインとエクアドルにも生産農場を持っています。
 会社設立当初はカーネーションの切花生産から始まったが、その後バラ、スプレーキク、ユリ、アルストロメリアなどの切花も生産を開始しました。
 花束加工輸出会社のVistaflor社の加工場を見学しました。
 花束に使用する切花は、自社農場のほか契約農場からも仕入れています。膨大な量の切花が冷蔵トラックで次から次へと入荷場に運び込まれます。基本的に、当日収穫した切花は当日花束加工されて、アメリカに輸出されます。

 

切花は検品された後、花束加工ラインへの搬送のために花束の種類毎に品種と本数を確認してバケツに分荷されます。

  

 花束加工場では年間2億4,000万本の切花を花束加工しており、毎日280人の作業員が早朝6時から8時間労働で花束加工を行っています。花束加工マニュアルに沿ってバケツに分荷された切花が作業員の基に配置され、次々と花束が作られていきます。花束加工能力は、20,000束/日で、1人あたり1日800束を加工します。労働時間が8時間ですから、1時間当たり100束、1束の加工時間は30秒程度です。

  

 アメリカのスーパーのウォルマート社と契約しており、年間28億円の取引があります。Vistaflor社の年間販売金額は39億円であることから、取扱量の72%がウォルマート社との取引になっています。

 ウォルマート社への納入は販売金額の入ったラベル付きで納入されます。ラベルには販売金額、バーコード、鮮度保証期間のほか、取扱注意などが記載されており、バラ12本入りの花束には10$のラベルが付いていました。

  

 花束加工はデザイン性が重要であり、アメリカのデザイン専門大学を卒業した専門職員を採用して顧客からの要望に応じて各種ブーケを生産しています。また、ネット販売を重視して、カタログを作成するためのフォトスタジオも備えています。
 製造した花束は検査員が検品し、問題があるとすぐに作業員に修正を指示していました。

花束加工場では切り口などからの病菌の侵入を防ぐために特に衛生に気を配っていました。
作業員の体調管理のため、毎日3回の一斉体操時間が設けられていました。

ウォルマート社に納品する花束の輸送は乾式横箱で行われます。ウォルマート社以外の一部の輸入業者の支持で、湿式バケット輸送も行われていました。
製造された花束は2〜5℃の冷蔵室で急冷された後、冷蔵トラックで空港まで輸送されます。各工程での温度管理は厳しく管理されていました。

  

 製造された花束は、夕方には空港に運ばれ、深夜便でアメリカのマイアミに輸送されます。マイアミのVistaflor社物流センターで湿式バケットに移し替えられて、全米のウォルマート店舗に搬送されます。Vistaflor社を出てから最大で3日以内に全店舗に配送されるとのことです。
 Multiflora社のカーネーション生産農場を見ました。大面積でのカーネーションの生産が行われていましたが、シュートの生育が均一ではなく、生産技術はそれほど高いとは思えませんでした。恐らく定植苗の選別が充分ではなく、ピンチの時期や肥培管理にムラが生じて生育が揃っていないのではないかと思います。

   

生産施設からの廃液が排水路に流れていましたが、排水路にはアオコが発生しており、過剰な肥料が施与されていることが伺えました。

 

 視察後に社長の自宅を案内いただきました。良く整備された広大な庭と歴史を感じさせるコロニアルな大邸宅でしたが、植民地的農場主の感じがして私はあまり好きではありませんでした。この大邸宅を毎日みながら従業員はどのように感じているのでしょうか?気になりました。

 生産会社に重要なのは支配−被支配の関係ではなく、生産の喜びを共有できる人間関係ではないかと思います。カーネーションの生産農場で感じた低い生産技術力はヒョッとするとこのような感情が基になっている可能性が感じられました。

 花束加工輸出会社のVistaflor社の高い技術力と雇用管理による完璧な花束生産と、切花生産のMultiflora社のギャップは大きく、将来的にはMultiflora社はコロンビアの切花生産会社から切り花を購入して加工輸出する切花加工輸出会社になるのではないかと感じました。