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●上海錦美月季種植有限公司 (上海市)
    上海市南匯縣下沙鎮滬南公路4740号

 2004年7月に上海錦美月季種植有限公司を訪問しました。上海錦美月季種植有限公司は,その前身は1985年に設立された上海錦美月季園で,1994年に現社名に改称しました。主な業務はガーデン用と鉢バラ用のバラ苗生産です。
 中国国内では日本のように切りバラ生産用の苗は流通していません。その理由として切りバラ生産の苗は挿し木で増殖しており,自家増殖が行われているためです。
 上海錦美月季種植有限公司は1990年に京成バラ園芸の鈴木省三氏の技術指導を受けて日本輸出用のバラ苗生産を開始し,1996年には年間50万本の接木苗を京成バラ園芸を通じて輸出した実績を持っています。しかし,1997年以降は日本のバラ苗価格の低迷や中国国内のバラ苗価格の高騰を受けて,国内販売を主体としたバラ苗生産に変わっており,上海市内の花卉市場で平均2元(26円)でバラ苗を販売しています。
 台木は,日本から導入したトゲ無しのノイバラ(Rosa multiflora)系統「K2」を使用しており,年間100万本の台木生産能力を持っています。休眠苗生産は年間30万本を生産しています。バラ苗の生産技術は高く,日本への輸出を行っていた時期には,植物検疫でクレームが発生したことは一度もなかったとのことでした。
 現在は日本への輸出は行っていませんが,日本へのバラ苗輸出に対する希望は依然として持っており,芽接ぎ苗(休眠苗)でFOB価格は3.5元(45円)とのことでした。

 
圃場にはノイバラ「K2」の採種用親株が植えられており,多くの果実が結実していました。
中国でもノイバラは川辺に植えられているのが印象的です。

  
台木が植わっている圃場の光景です。芽接ぎが行われており,ほぼ100%の活着率で,技術水準は高いと思いました。
日本では芽接ぎを行う時期は8〜10月ですが,訪問したのは7月でしたが既に芽接ぎが完了していました。
土壌病害対策として,2年輪作体系を取っていました。

 生産しているバラは,アメリカ,フランス,オランダ,カナダ,ドイツ,日本,インドから導入した品種で,庭院系 (HT)、豊花系 (FL)、潅衆系 (SH)、地被系 (TC)、藤本系 (CL)、壮花系 (GR)、微型系 (Min)、ハマナス系 (RU)など1000品種の親株を維持し,切り接ぎ,あるいは芽接ぎを行って苗を生産・販売しています。
 聞き取り調査では詳細には語りませんでしたが,日本への輸出が停止した1997年は日本でのパテント管理が厳しくなった年で,恐らく,京成バラ園芸から注文を受けた品種を無断で国内販売したことが理由の一つとなっている可能性があります。実際に,カタログやインターネット・ホームページの生産品種の一覧には「貴族(ノブレス)」,「巴列奧(パレオ90)」,「坦尼克(ティネケ)」,黒魔術(ブラックマジック)」などのパテントを有する登録品種の名前が掲載されていました。(当然パテント料は支払われていません。)

    

  
上の写真左の芽接ぎのポット植えのバラ苗の価格は3〜5元(39〜65円)です。

 上海錦美月季種植有限公司の最近の話題としては,黒竜江省の大学と共同で耐寒性バラ品種を育種し,1996年に「錦寒1号」,「錦寒2号」,「錦寒3号」,「錦寒4号」を登録しています。