★「凌源市のユリ切花生産」
(遼寧省凌源市)
2010年5月7日に凌源市を訪問しました。
凌源市は「北方花郷(北の花生産地)」といわれ、“南有云南、北有凌源”(南に昆明あり、北に凌源あり)といわれています。
凌源市は古くから日光温室での野菜生産団地として発展してきた地域です。1980年代にユリの切花生産が始まり、1990年代に凌源市政府の支援の基で急速に生産面積が増加し、大産地として急成長した産地です。産地設立当時は農民が主体の生産でしたが、近年は共同出荷組織が形成されると共に、大規模生産会社も設立され始めており、「凌源ブランド」の確立を図っています。
凌源市を一望できる小山に登ると、「遼寧省農業総合開発」の石碑があり、見渡す限りの日光温室群を見渡せました。
2008年の凌源市の野菜と花きの生産面積は25.5万ムー(17,000ha)で、14.5万棟の日光温室があります。花き生産面積は6万ムー(4,000ha)で、施設面積は3.5万ムー(2,300ha)で、ユリやチューリップの切花生産が行われており、2.5万ムー(1,700ha)の露地生産ではグラジオラスの切花生産やユリの球根生産が行われています。
主な切花品目は、ユリ、チューリップ、グラジオラス、ガーベラ、バラなどで、年間3億5000万本が出荷されており、昆明について第2位の生産量を誇っています。ユリやグラジオラスの球根生産では年間3億球が生産され、中国国内第1位の生産量を誇っています。
大規模な切花市場「凌源花卉交易市場」がありました。市場面積は90,000uで、辛杖子村が市場を開設し、凌源市野菜花卉局が監督しています。
花き市場の目の前に高速道路が走っており、北京などの大都市への輸送も便利です。
ちょうど相対取引が始まっていましたが、すごい人でした。
この相対市場では、農家は市場利用料を支払う必要がありません。購入者はオリエンタル系ユリ1束(20本)につき0.5元、その他の花は1束につき0.3元を支払います。
市場には大型のディスプレー掲示があり、昆明や広州、北京での花き市場取引価格が刻々と掲示されており、昆明の価格が基準価格となっています。
旧正月の平均単価は1本18元で、70m〜80m×7mの日光温室で年間10万元の収入があるとのことでした。
ここから出荷されるユリは北京市のユリ流通量の70%を占めています。北京までの距離は350kmで、高速道路を使ってトラック輸送しています。凌源花卉交易市場は高速道路に面しており、陸路での輸送に最適の場所に位置しています。朝7時に凌源を出発すると、12時には北京に到着します。北京から中国北方航空と契約して上海などの全国の大都市に空輸しています。また、近年は日本やロシアなどへの輸出も行っています。
交易市場の裏には農薬などの農業資材販売店と球根貯蔵庫がありました。
球根貯蔵庫にはオランダからの輸入球根コンテナが山のように積んであり、シベリア、ソルモンヌ、レッドセンセーションなどの品種名を見ることができました。
訪問したある農家の事例です。1球4.2元でユリの球根を購入し、切花は1本7.4元(5月)で販売できます。切花収穫が終わった切り下球は球根業者に販売します。農家によっては切り下球を冷蔵して定植し直し、2度切りを行う場合もあります。冬季の低温期には収穫後2度切りを行います。
凌源市には遼寧省農業科学院の東遠科技有限公司があり、ユリの組織培養や栽培試験を行っていました。