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稲長園芸
 【カーネーション切花生産・育種】
 (愛知県幡豆郡一色町)

 2007年10月4日に花き市場協会地方卸売市場部会研修会の現地視察に同行して稲長園芸を訪問しました。

 カーネーションの全国の生産面積は471haで、愛知県は61haを占めて全国第2位の生産県です。一色町と西尾市は愛知県の中でもカーネーションの大産地で生産農家数は103名、26haを占めています。

 稲垣長太郎氏は1966年にカーネーションの栽培を始め、1881年(昭和56年)から26年間育種を行っており、国内のカーネーション育種家の第一人者です。育種で最も注目している形質として、花形,花色,樹勢に加えて,花持ちの良さをあげておられました。また、近年の地球温暖化の影響を受けて夏の高温多湿が問題となっており、日本の高温多湿環境で育種を行うことの重要性を語っておられました。日本の環境で選抜を行うことで高温多湿に適応した品種が育成できます。

 

生産は土壌病害対策のために隔離ベッド栽培が行われています。

 

 稲垣長太郎氏が育成・登録した品種の登録名には「INGU」が付されており、INGUギャレット、INGUホワイト・ギャレット、INGUセーラームーン・オレンジ、INGUメモリー、INGUフローネなど35品種を登録しています。
 育種の品種割合としては、スプレーが70%、スタンダードが30%で、海外からの輸入カーネーションに対抗できる高品質の切花品種をねらっています。

  

 育種と切花生産の両立はなかなか大変とのことで、経営に占める育種の割合を大きくしたいとの話でした。「育種への挑戦、行き着くところまでやってみたい。」、「振り返って自分の足跡が見える人生を送りたい。」
 昭和60年(1985年)に初めて品種登録した「クミコ」の登録証書です。これが稲垣氏の育種の始まりです。

中部国際空港開港にちなんで「セントレアセーラームーンオレンジ」を登録

日本国内のカーネーション生産は、コロンビアや中国からの輸出攻勢によって大きな危機をむかえようとしています。コロンビアと中国からの輸出量は現在でも留まるところを知らず国内流通量の40%に近づいており、1995年の5億9千万本から2006年には4億1千万本と急速に国内生産量が減少しています【pdfファイル】。生産農家数はこの10年間で3割減少しています。
アメリカのバラ生産の事例では、海外からの輸入量が国内流通量の40%を超えた時点で国内生産が急速に崩壊し始めており、いわゆる「40%の法則」と呼んでいます。日本のカーネーションはまさにその状況に限りなく近づいており、予断を許さない状況です。

中国からの輸入カーネーションは船便で輸送されてきており、生産コストと輸送コストが低いことが有利です。これに対してコロンビアのカーネーションは高品質で優れています。
日本国内のカーネーションはコロンビアや中国に対してどの様な点を消費者メリットとして打ち出していくかが重要な課題となっており、戦略を間違えると大変な事態を引き起こしかねない状況です。
長年カーネーションの生産指導をしてこられた兵庫県の宇田花づくり研究所の宇田明氏が切花産業の将来に対して警鐘を鳴らされておられます。
http://www1.sumoto.gr.jp/a-uda/suishinkaigi.html
カーネーションの技術指導をされておられる研究者や指導者の皆さん!是非とも責任ある指導を期待したします。