(株)東樹園
【球根生産・販売,球根鉢物生産】
(新潟県新潟市)
2007年6月2日に新潟市で開催された「花の国際シンポジウム」に出席した折りに東樹園を訪問いたしました。
東樹園はスイセン,チューリップのほか,ユリ,ヒヤシンス,アネモネなどの各種球根,宿根草を生産,販売しています。
特に,スイセンは自社農場で球根生産し,販売を行っています。調度訪問した6月はスイセンの堀取り期にあたり,堀取り作業を見ることができました。スイセンの圃場面積は11,000uです。広大な圃場にスイセンが植わっていました。
球根生産で最も重要なことは圃場への定植時期を厳密に守りきることだそうです。チューリップは10月には圃場に定植,スイセンは12月までに圃場に定植することで春先には優良な球根が形成されます。
トラクターで根切りを行いながら球根を掘り上げていきます。球根は圃場で調整,選別されてコンテナに入れられて工場まで運ばれます。
掘り取られた球根は充分乾燥して秋から販売されます。乾燥が不十分だと貯蔵中に腐敗の原因となるために,乾燥工程が最も重要です。乾燥は木製の特殊なコンテナを使います。コンテナの上下には通風窓があり,大型送風機で強制的に通風して乾燥した後,保存します。
チューリップは自社農場や委託生産農場で生産すると共に,オランダから直接輸入も行います。チューリップは球根販売と球根鉢物を販売しています。一般に球根販売は球根を乾燥させたものを販売し,業界用語で「ドライセール」といっています。ドライセールは,以前は園芸店での販売量も多かったようですが,現在ではホームセンター向け販売が8〜9割に達しているとのことでした。
球根販売会社の中には,ドライセールで売れ残ったものを鉢物として販売する業者がいるが,鉢物としての品質が低下することが多く,消費者が望む品質を確保することが出来ないため,東樹園では鉢物販売用の球根は特別に区別して生産しているとのことです。
ユリの生産圃場
チューリップの鉢物生産で最も重要な過程が「根出し」操作です。鉢に植え付けた球根を9℃で処理することで鉢内で発根が始まり,充分に発根したものを12℃の温室に搬入することで1〜2週間で出荷が可能になります。根出し操作が不充分だと温室内での生育が遅れて出荷の効率が悪くなります。
新品種については温度反応試験を行って根出しの適切な温度帯や期間を設定し,生産体系を確立しています。
東樹園ではネット販売も行っており,Yahooショップに「キューケンホッフ」という名前で出店しています。http://store.yahoo.co.jp/keukenhof/
ネット販売はお客さんからのクレームを直接聞くことが出来るために,次の商品化の重要な開発戦略情報となります。金子さんというチャーミングな専属職員がネット販売や通信販売を担当していました。
ネット取引や通信販売で最も重要なことは「ブランド」であり,東樹園のブランドイメージを高めながら,現在の数千万円程度の売上げを近い将来には億単位のビジネスに発展させたいと東樹洋介氏は夢を述べておられました。
品種の管理やカタログの整備,鉢物のラベルのデザインなど様々なことに積極的に取り組む東樹園の姿勢を感じました。特にこれからは宿根草の販売も新しい業態を作り上げるには重要と考えておられました。
【日本国内のチューリップ産業についての雑感】
国内のチューリップ球根流通量は,オランダからの球根輸入を受けて1988年以降に急激に増加しましたが,1996年から増加が停滞し,2002年以降は減少し始めています。この原因の1つとして消費者がチューリップに飽きてきたことがあります。
国内で生産されるチューリップの多くは国内で育種された特殊な花型のチューリップが多く,1990年代は国内で育種された珍しいチューリップがチューリップの消費を支えていました。しかし,ホームセンターでの安価なチューリップの取扱量が増加し,高価格ではあるが消費者の目を引く国内のチューリップ生産量が減少すると,店頭に並んでいるチューリップはオランダ産の「普通のチューリップ」ばかりになり,消費者が飽きてきたと考えます。国内のチューリップ球根生産量は1992年から減少していますが,この影響が現れてきたということができます。
今後のチューリップ消費を維持,拡大するためには,ホームセンターでの安価な球根販売ではなく,珍しい花型や花色の少々高価なチューリップの販売を園芸専門店やインターネットショップで積極的に展開する必要があると考えます。
富山県で育成されているチューリップはオランダからの輸入チューリップにはない日本人が好む可憐さと華やかさを持っています。富山県と新潟県はチューリップ競合産地ですが,両県が争っている時ではなく,国産であることを前面に出して日本のチューリップを強調する時期に来ているのではないでしょうか。