福井の Home に戻る

(株)トヨタフローリテック
 【鉢花生産】
 (青森県上北郡六ヶ所村)

2004年10月29日に水野勝義取締役に案内していただき,施設の視察を行いました.
 (株)トヨタフローリテックは,1999年10月にトヨタとハクサンが共同出資して設立した鉢花生産会社です.トヨタが所有していた六ヶ所村の小河原工業地帯の社有地の有効活用に加えて,ハクサンが持つ有用な海外品種情報と生産技術を用いた鉢花生産を行う目的で設立されました.

 従業員は10名,常時雇用のパートタイマーが20〜30名です.養液管理や潅水管理,病害虫防除などの栽培管理のほとんどは自動化されているため,従業員の主な仕事としては,植物の生育状況のチェック,パート従業員の労務管理,出荷・調整作業の管理などです.

 温室面積は6100坪(20,328u:88m×231m)でアジア最大の花き生産施設です.年間400万鉢の生産能力を持っています.全ての施設はムービング・プールベンチでEbb & Flow方式の自動潅水,自動養液供給システムが導入されています.
 六ヶ所村は下北半島中央部にあり,厳冬期は氷点下10℃程度になりますが,太平洋側ということもあって津軽地方に比べると積雪量が少なく,夏季は25℃以上にはならないため,天窓開閉だけで30℃以下の温室環境が確保できます.したがって,生産温室には側窓がなく,フェンロー型の温室外観からみてもデンマークやオランダの施設を連想させます.

 養液は循環式で,潅液した養液はベンチ下の養液タンクに回収され,養液濃度を再調整した後,再び潅液されます.


 生産品目はミニバラ,ポインセチア,カランコエ,ミニ観葉植物など20品目以上で,品種数を含めると60以上になります.生産する鉢花サイズは6cmと9cmの2種類で統一されており,販売価格として200〜500円を想定しています.
 年間で最も出荷量が多い時期は母の日で,1日2000ケース(1ケース60鉢/6cm,30鉢/9cm)を出荷するとのことです.販売先は,市場出荷が20〜30%,トヨタ販売系列での注文販売が10%で,その他はホームセンターや大規模園芸店などへの直接販売です.
 下の写真は,鉢の土詰機(ポッティングマシーン)と潅水装置,ベンチへの鉢並べ機です.土詰めからベンチへの鉢のセットは全て自動化されています.

  

 栽培されている植物は全てが栄養繁殖性の植物であるため,挿し木を行います.挿し木は密閉挿しで行っており,挿し木活着率は100%です.

  

 挿し木が終了すると栽培コーナーに移動して,養液管理で栽培されます.ベンチの移動はベンチ移動ロボットとベンチクレーンが行います.生産施設のハウス間の移動はベンチ移動ロボットが,ハウス内のベンチの移動はベンチクレーンが行っていました.これらのベンチの移動位置や移動時期などは全てコンピュータで管理されています。

  

  

 生育が進むとベンチ上の鉢の間隔を広げる必要があります(スペーシングといいます).これにもデンマーク製の自動化機械が導入されており、一人の従業員が担当していました.

 ハウス内の環境は,環境計測装置で常時計測し,天窓の開閉がコントロールされています.また,施設内には循環扇が設置されており,最適環境が維持されています.
 また,ミニバラ生産のための施設として補光ランプが設置されており,一定の照度を下回ると自動的に点灯し始めます.夜間は2時間照明を停止するだけで,一晩中補光栽培を行います.この補光はミニバラの生産には極めて重要で,計画生産・出荷の大きな役割を果たしています.

  

 潅液された養液は排水パイプを経由してベンチ下の養液タンクに回収されます.現在のところ,特別な殺菌装置は設置していないということでしたが,六ヶ所村という寒冷地が関係しているのかもしれません.同様に,病害虫の発生も少ないということですが,冬季の施設外の気温が-10℃以下という低温が害虫の越冬を阻害していることや,夏季の冷涼乾燥条件が病気の発生を阻害しているのだと思います.殺虫剤や殺菌剤の散布は,下の写真にあるように,ベンチに設置されたミスト散布装置をベンチクレーンが移動して行います.人体への農薬被爆にも充分に配慮がされていました.

  

 特殊な装置として,ベンチ洗浄装置とミニバラの自動ピンチ装置がありました.

 

 栽培が終了して出荷段階に達した鉢は,出荷調整ヤードに移動されます.一鉢ずつラップをして,段ボールトレーに移し替えて,段ボールに2段で詰めて出荷します.フォークリフトでトラックに詰め込んで,全国に出荷されていきます.

 
   

一方,パート従業員の主な作業は出荷・調整作業で,この点の省力化が今後望まれています.