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福岡花市場
 【地方卸売市場】
 (福岡県福岡市)

 2004年6月25日に福岡花市場を訪問いたしました。
 福岡花市場は,福岡県花卉農業協同組合が開設している花き市場で,いわゆる生産者が設立し,有利な販売経路を確保するために作られた「生産者市場」です。平野和彦場長,小澤照幸部長,中村栄治係長から色々と情報をいただきました。
 福岡花市場は福岡市東区の本場のほかに3市場を持っており,北九州市小倉区の北九州花市場,八幡東区の北九州八幡花市場,福岡市西区の福岡西部花市場があります。本場の取扱金額は,年間85億円で,3市場を合わせると130億円に達しています。しかし,近年の切花価格低下の影響を受けて,平成10年以降で10億円の売り上げが減少しているとのことでした。福岡花市場は切花が主体の市場で,全体の取扱金額の80%を占めています。
 福岡花市場は福岡県花卉農業協同組合が設立母体であるということもあり,福岡県内の花き生産物の占める割合が多いのが特徴です。例えば,切りバラは取扱量の75%が県内だということです。とは言っても近年の価格低下の影響から,取扱量の確保が重要課題であり,九州・中四国を中心とした県外産地の開拓にも力を入れています。買参人の95%は小売業者で,仲卸業者は5%程度だということです。しかし,取扱金額でいうと5%仲卸業者が全体の半分以上を占めているとのことでした。
 取り扱い品目別にみると,キクが全体の25%,バラが15%となっており,バラについてみると,スタンダード:スプレーの割合は6:4となっています。以前は7:3であったことからみると,スプレーバラの割合が増加しているのが判ります。

 福岡花市場では海外からの輸入品についても取扱量が増加しています。福岡市は,韓国・中国の玄関口という立地条件も重なって,韓国や中国からの切花が特に増加しています。海外からの切花の占める割合は,現在,全体の9%程度ですが,キクとバラに関しては年々急増する傾向にあります。

 携帯電話が普及したことによって,大手買参人のなかにはセリ開始と共に他市場の参加者と携帯電話で価格のやりとりを行っており,全国的な価格の統一時代が到来するのではないかと予想されます。以前は中央市場に対して地方市場の独自性が前面に出て,なかには特徴的に価格の高い品目がある場合もみられたようですが,最近では東京の中央卸売市場とほとんど差がみられないとのことです。今後,市場法の改正に加えて,大手買参人の全国展開などの影響もあって,福岡花市場としては市場の特徴を前面に出した品揃えや市場オリジナル商品の開発なども積極的に取り組みたいとのことでした。

 今後の市場の動きとしては,セリ売りの占める割合が減少し,前取りや注文,花店との契約栽培流通が増加すると推定されます。また,ネット取引も増加の傾向にあり,福岡花市場としても現在のセリシステムを全面的に改変する予定だとのことです。近い将来,セリ売りと予約注文が半々になる時代が到来するとの予測を持っておられました。
福岡花市場の花の一連の動きを紹介します。
入荷ヤードにはトラックから直接台車で入庫します。品目毎に台車に積まれた後,集荷ヤードに集められてセリ場にむかいます。   
福岡花市場では,集荷ヤードからセリ場,分配場までの全ての施設,全館冷房されています。市場の荷物に対する心遣いがみえる思いがしました。
セリは7レーンで行われており,キク,バラ,ラン,切り葉は専用レーンで行われています。
セリはいずれも手ゼリで行われています。現在,電光掲示の時計ゼリへの切り替えが計画されています。私の気持ちとしては,1品目の取り扱い量が多い中央市場では,オランダのようなセリ下がり式の時計ゼリが有効であると思いますが,品目数が多くて,数量が少ない地方市場としては,必ずしもセリ下がり方式の時計ゼリが有効であるとは思いません。電光掲示の時計ゼリを採用しながら,これまでの経験を生かしたセリ上げ方式を採用している市場もあります。どちらが適しているかは近い将来明らかになってくると思います。
  
 セリ落とされた荷物は分荷レーンに移動され,手際よく買参人ごとの台車に積み分けられます。現在の段階ではバーコードなどを効率よく利用した方式にはなっていないようなので,この点については電子化される意味は大きいと思います。
   
【バケット流通】
時代の流れでもありますが,切花のバケット輸送が主流となっています。バラに限ってみれば,バケットの利用率は70%に達しているとのことです。しかしバケットの種類は千差万別で,ELF(エルフ)バケットシステムから,自家製のプラスチックバケット,段ボールの縦箱湿式輸送など形状もバラバラです。
市場としては統一した方が好ましいとの意見ですが,以前同じような問題が発生した流通台車においても同様であったように,オランダのように全国統一規格で実施することはとても難しい問題といえるでしょう。
    

韓国から輸入されているバラの段ボールを開けて見せてもらいましたが,韓国の輸入バラも段ボールケースのなかに水受けが入っており,湿式輸送方式でした。韓国産のバラは品質からみても,かなり良いものだと思います。
このような高い品質のばらが輸出されてくると,エクアドルからの輸出攻勢を受けたアメリカの二の舞(pdf file)になりかねない恐怖が感じられます。ただし,韓国は国内の経済情勢が良くなっており,国内需要の増加の影響で日本への輸出量が伸び悩んでいるとの情報ですので,エクアドルとアメリカのような関係にはならないとは思いますが・・・。
   
 視察中に見た最も高い価格のバラです。
(有)たなまち園芸場(福岡県三井郡大刀洗町)のバラで,50本で30000円(600円/本)の高価格がついていました。
確かに品質は最高でした。
市場内でみかけた輸入の切花です。
韓国から輸出される切りバラは,共選共販体制が取られており,フローラ・インターナショナル社が輸入代理店でした。
中国からは,昆明で生産されたユリの切花(品種名:シベリア)が輸出されていました。
ニュージーランド産のシンビジウム切花も見ることができました。
  
 
 
 たなまち園芸場からは,白いバラを着色した黄色,スカイブルー,パープルのバラも出荷されていました。白バラが大量に収穫できた場合に値崩れを防ぐ目的で着色して出荷しているとのことです。
 このような青いバラが出回ることで,近い将来出てくると推定される「遺伝子組換えの青いバラ」に対する消費者の受け入れ土壌が熟成されてくるのかもしれません。
現在岐阜大学園芸植物生産学研究室で研究を行っている「ヤエヤマノイバラ(Rosa bracteata)がセリにかけられていました。