Miyasaka・Asahara Laboratory
Aerospace Propulsion Laboratory

製鉄排熱を利用した水素製造装置の性能評価


 東京で開催された水素閣僚会議において,水素エネルギーの社会実装に向けた挑戦的目標が掲げられました。国内のCO2排出量の現状として、産業分野は排出量の約3分の1を占めており、その内の約40%を占める鉄鋼業は国内CO2排出の全体量で見ると約13%という大きな割合を占めています。 現在NEDOでは、高炉法におけるコークスの一部を製鉄所内で発生する水素で代替すること及び高炉から発生するCO2を分離・回収することでCO2排出量を削減する技術(COURSE50)の研究開発が行われており、2030年頃の実用化が目指されています。本研究では、高炉、転炉、電気炉などの製鉄工程で発生する排熱を用いた水素製造装置を開発し、水素製鉄で必要とする水素や、分離・回収したCO2のメタネーションに必要な水素の供給システム確率を目指しています。

本研究は以下の補助を受けて実施しています。

  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業
    官民による若手研究者発掘支援事業/マッチングサポートフェーズ(環境・エネルギー分野)/製鉄排熱を利用したCO2フリー水素製造装置の開発(実施年 2022年3月~2024年4月)



    紹介動画


  • ■ 製鉄排熱の利用 ■

     現在製鉄のプロセスにおいて水素が利用されています。 また、図1に示す転炉において高温のガスが未利用のまま排出されており、高温のメタン熱分解時には反応炉の熱損失が大きいため、水素生成におけるエネルギー効率の低下が課題となっています。 そこで本研究では転炉からの高温排ガスとの熱交換によりメタンを分解し、この方法での多目的最適化を行うことで安定的に大量のCO2フリー水素と高純度炭素を製造する技術の開発を目指しています。



    図1 製鉄排熱を利用した水素製造装置


    ■ 数値シミュレーションによる多目的最適化 ■

     多目的最適化は多目的関数のパレート最適解から自己組織化マップや固有直交分解などのデータマイニング手法を用いて設計に役立つ知見を抽出する方法です。実際に実現可能な解の集合を目的関数の最適な方向(今回はどちらも最大)に広げることで優れた解を見つけていき、最終的に劣解(それまでの解)にならなかった解がパレート解になります。そしてパレート解をつないだラインであるパレートフロントが多目的最適化のゴールとなります。



    図2 多目的最適化のグラフの簡易説明


     本研究ではこの多目的最適化を用いて目的関数である水素の流量とモル分率を最適化させ、効率よく大量のCO2フリー水素を製造する条件を探査します。多目的最適化を行うことで最適な条件を知ることができるため、実験回数を少なくすることができ、効率よく研究を進めることが可能となります。図3.4は本研究の最適化の一例であり、図3ではオレンジの点がパレート解であり、水素の流量とモル分率は負の相関を持ち、流量が少ないとモル分率は高くなることがわかります。図4からは設計変数のメタンの流量が目的関数との相関が強く、影響を与えていることが分かります。



    図3 パレート曲線



    図4 最適化によるヒートマップと散布図

     
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