高次精度圧縮性流体解析手法の開発

本研究では,少ない格子点数で高解像度の結果が得られる圧縮性流体解析手法の開発を行っています.格子点とは,空間的に配置されたデータを持つ点のことです.同じ解析手法の場合、格子密度が大きいほどより高解像度の結果が得られます.しかし,格子点の数を多くすることは計算時間や計算に使用するメモリの増加につながります.そこで,より少ない格子点で高解像度の結果が得られる“高次精度”の解析手法に注目し,研究を行っております.


以下の3つの動画は同条件におけるデトネーションをTVD法,MUSCL法,高次精度手法(WCNS)を用いて解析した結果を示しています.TVD法,MUSLC法は従来頻繫に用いられてきた解析手法です.TVD法やMUSCL法の結果に比べて高次精度手法の結果では詳細に流れ場を捉えていることがわかります.このように高次精度手法を用いることで,格子条件は同じでも高解像度の結果を得ることができます.


TVD法


MUSCL法


高次精度手法(WCNS)

デトネーション



既往研究で開発された圧縮性流体高次精度解析手法では,下図のxj+1/2の値を求めるために風上型ステンシルを用いていました.このようなステンシルを用いることで安定に解析することができますが,散逸誤差が大きくなってしまいます.一方,中心型ステンシルは安定性には乏しいですが,散逸誤差が少なく,高精度な解を得ることができます.そこで,本研究では,重み付き平均によって,中心型ステンシルと風上型ステンシルをハイブリットさせた高次精度解析手法を開発しました.

下図のように物理量の勾配が小さいところでは中心差分の重みが大きく,物理量の勾配が大きなところでは風上差分を用いて安定に解きます.


同条件において解析した,既往研究で開発された圧縮性流体高次精度解析手法による結果と開発手法による結果を下図に示します.既往研究で開発された圧縮性流体高次精度解析手法では捉えることができていない渦を開発手法では捉えることができております.開発手法はスクラムジェットエンジン内の流れ場,デトネーションなど様々な圧縮性流れにおいて使用できます.


既往研究の高次精度手法                   開発手法

マッハ10の衝撃波と壁との衝突


気液二相流解析手法の研究

スクラムジェットエンジン内における液体燃料の微粒化の数値解析に向けて,気液二相流解析手法の開発を行っています.液体の微粒化では,非常に複雑な界面変形が生じます.そのため,実験だけでは微粒化現象を明確にはできません.そこで,数値解析によって微粒化を再現することを目指しています.


気液二相流が単相流と異なるところは界面を含むことです.界面を挟んで不連続的に物理量が変化します.例えば,水の密度は空気の約1000倍です.また,界面は流れに沿って移動するため,複雑な変形が生じます.このような界面における物理量の不連続や界面変形に対応するために,本研究では,Level-set法とGhost Fluid法を用いて気液二相流を解析しています.


Level-set法では界面を距離関数を用いて表現します.界面からの符号付き距離を示す陰関数Φ(Level-set関数)を導入します.Level-set関数は二次元の場合下図のようになります.この陰関数Φの輸送方程式を解くことで界面の移動を解きます.Level-set関数を導入することで本来物理量が不連続的に変化する界面を連続的な距離関数で表現できるため,輸送方程式は数値的に容易に解くことができます.


二次元Level-set関数

Ghost Fluid法は界面付近に仮想流体を設置して解析する手法です.気相を解くときは液相の領域に気相の仮想流体を置きます.同様に,液相を解くときは気相の領域に液相の仮想流体を置きます.そして,気液を別個に解析します.このように仮想流体を用いることで界面を挟んだ物理量の不連続を避けて解析するため,安定かつ鋭く界面を捉えることができます.


Ghost Fluid法

以下はLevel-set法とGhost Fluid法による水中爆発の解析および気体と衝撃波の干渉の解析結果です.


水中爆発





密度の大きな気体と衝撃波の干渉


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