デトネーションエンジンに関する基礎研究
■ デトネーションとは ■
可燃性混合気中における燃焼は、大きくデフラグレーション(爆燃)とデトネーション(爆轟)に分類されます。デトネーションは、衝撃波とそれに誘起される燃焼波がカップリングしながら極超音速で伝播する現象で、デトネーション波の速度は音速の5~8倍と速く、高温かつ高圧な燃焼形態になります。そのため、デトネーションによる爆発事故が起こった際の被害は甚大であり、安全工学的見地による研究が必要とされています。一方で、デトネーションを動力源に応用する研究もおこなわれています。
パルスデトネーションエンジンロケット
■ デトネーションエンジン ■
航空機に使用されているジェットエンジンは、回転式の圧縮機により空気を連続的に圧縮して取り込み、高圧の状態で燃焼することで効率良く推進力を得ています。一方、デトネーションエンジンでは、衝撃波が前方の未燃ガスを瞬間的に断熱圧縮し、高効率な作動が実現できます。さらに、デトネーションエンジンは機械的な圧縮機構を必要としないため、ジェットエンジンに比べて簡潔かつ軽量なエンジンです。
盛んに研究されているデトネーションエンジンとして、パルスデトネーションエンジン(Pulse Detonation Engine, PDE)とローテーティングデトネーションエンジン(Rotating Detonation Engine, RDE)の2つがあります。PDEは燃焼器内で間欠的にデトネーションを伝播させ、デトネーション波面後方に生成される既燃ガスを排気することにより推進力を得るエンジンです。一方、RDEは進行方向に対し垂直方向にデトネーションを旋回させ、連続的に推進力を得るエンジンです。
燃料の旋回噴入によるPDEの小型化
■ 旋回流によるDDT距離の短縮 ■
旋回噴射装置の性能調査実験
管内の周方向成分特性をPIV(粒子画像流速測定法)によって調査しました。PIVとは、空間平面内の速度分布を測定するために粒子を流し、レーザーシート光によって照射された2枚以上の粒子画像から瞬間的な速度を測定する方法です。図のように、実験装置はアクリル円管部,噴射装置,円管によって構成されています。オイルミストを含む気体を旋回流入させ、図のようにレーザーシートを照射し、管端部からオイルミストによって散乱する光を撮影しました。
撮影後の画像に対し、PIV処理を施すことで、動画のような速度の時系列データを取得することができます。
旋回するオイルミストと平均速度分布 PIVによる旋回速度の時間変化
旋回噴射によるDDT距離短縮実験
PIVで旋回流の特性を把握した後に、同様の条件において可燃性混合ガスを着火する燃焼実験をおこないました。全長2500mm,内径25mmのアクリル管に、水素-空気予混合気を供給する旋回噴射装置を連結して設置し、上流側端部において放電することで着火し、高速度カメラを用いて、形成される旋回流中での火炎伝播挙動を観察しました。
下の画像と動画は、旋回流中を伝播する火炎の挙動を示しています。混合ガス中を火炎が旋回しながら伝播する様子が確認できます。火炎は、着火直後にゆっくりと伝播しますが、しばらくして突然に高速で伝播します。この高速伝播の瞬間がデフラグレーションからデトネーションへと遷移したタイミングです。
本実験により、燃料と酸化剤を旋回流入することで、DDT距離を短縮することができることがわかりました。本研究で得られた知見により、PDEのさらなる小型化が期待されます。
燃焼実験の様子
デフラグレーションからデトネーションへ遷移する様子
■ 管内における旋回流のシミュレーション ■
シミュレーション概要
シミュレーションにより、管内における旋回流の挙動を示しました。下の図と動画より、噴射位置から管の出口に近づくにつれて旋回流が弱まる様子が確認できます。シミュレーションにより、旋回流が維持される領域が明らかになり、火炎が高速で伝播する領域を予測することができます。
シュミレーション動画
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