森林動物管理学研究室では、主に以下のようなテーマに取り組んでいます。
・哺乳類の採食生態
あらゆる動物にはそれぞれの採食メニューがあります。甘いもの、脂肪分の多いもの、ミネラルに富むもの、様々なものを食べますが、中には「なぜそんな物をたべるの?」というものもあります。
例えば、ニホンジカは草食動物であり、植物の葉を主に食べています。しかし、シカは木の皮(樹皮)を食べることもあり、地域によっては造林地に大きな被害が出たり、天然林の植生が衰退するなど、大きな問題となっています。一方で、植物の葉が栄養に富むのに比べ、樹皮は栄養価が低く、消化も良くありません。なぜシカが樹皮を食べるのか、実はこの問いに対する明確な答えは未だに明らかになっていません。
また、ツキノワグマもある時期に樹皮を剥がして内部を齧るように採食することが知られています。
これはクマ剥ぎと呼ばれ、植栽されたスギやヒノキの樹皮をめくってしまうため、林業に大きな被害を及ぼしています。この行動についても、現時点では発生メカニズムの解明が十分ではありません。
人間と野生動物がつきあっていく中では、野生動物の生態を理解し、人間の受ける被害を十分に防ぎ、人間と野生動物との摩擦を極力少なくする事が重要となります。森林動物管理学研究室では、野生動物の採食生態の解明を通して、人間と野生動物とのより良いつきあい方を模索していきたいと考えています。
・野生動物の生態と保護管理
近年、日本全国で野生動物と人との軋轢が深刻化しています。ニホンジカやイノシシによる農林業被害の増加、里に下りてくるようになったツキノワグマ、人を怖がらないニホンザル等、かつてはそれほど人目に付かなかった野生動物が、現在ではそこら中に出没しています。また、現在日本各地でニホンジカの採食による天然林の衰退や人工林の被害が報告されています。なぜこのような状況になったのでしょう?
野生動物と人間社会を取り巻く環境にどのような変化があったのでしょう?人間は野生動物とどのように折り合いを付けていけば良いのでしょうか?
これらの問いに対する答えはなかなか見えてきませんが、当研究室では野生動物の生態とその周辺環境について、国(環境省、林野庁等)、都道府県および市町村、さらには様々な調査・研究機関と協力しながら研究を進め、野生動物の捕獲から生息環境の保全までをふまえた「野生動物の保護管理」のあり方について考えていきます。
おまけ