7月21日(土)飛騨高山美術館
高山市役所からの依頼で「高山の景観について」と「美術作品の鑑賞の楽しみ」というテーマで、昼と夜の2回講演してきました。マチネとソワレ。なんか芸人みたいですね。そのとき10年くらい前の教え子が今、高山市役所に勤めていて、ぼくの講演を聴きに来ていました。その教え子から、飛騨高山美術館が、最近出版されたミシュランの日本のガイドブックで三ツ星にランクされていることを知りました。高山市自体が三ツ星評価だということは知っていたのですが、高山に三ツ星美術館があるとは・・・。そこでいったいどんな美術館なのだろうと行ってきたわけなのです。
JR高山駅から市バスで10〜15分ほど、「飛騨の里」の次のバス停で降りたところの小高い丘の上に美術館はある。朝9時開館にちょうど間に合うように着いたら、玄関前の植え込みの手入れをしていた美術館の女性従業員がさっと立ち上がって、にこやかに「おはようございます。いらっしゃいませ。入り口はこちらでございます」と、しょっぱなから丁寧に案内されたのにはびっくりした。
館内に入っても、その歓待ぶりはどの従業員にも共通していて、美術館というよりホテルの接客に近い印象だ。ちなみにぼくが宿泊した高山駅前のワシントンホテルとは比べものにならないほど愛想がよかった。
企画展の「あいだみつお展」はパスして、常設展だけを見て回る。
この美術館のコレクションはヨーロッパ世紀末のアール・ヌーヴォーに的を絞っていて、フランスのルネ・ラリックとエミール・ガレのガラス作品が多数展示されている。メインはルネ・ラリック制作の噴水で、美術館の建物それ自体が、噴水を収納するために設計されているようなものだ。そのほかイギリスのマッキントッシュ、オーストリアのウィーン分離派のデザインも、その室内装飾を部屋ごと再現している。中身のコレクションと美術館建築が有機的に結びついている点は高く評価できると思う。ミシュランによる三ツ星の理由は、このあたりにあると思うが、ひょっとしたら、従業員の接客能力の高さによるところが大きいかもしれない。
また、ミュージーアム・ショップの売り場面積が大きくて、品数が充実している。入館料のいらないこのショップだけでも十分楽しめる。
帰りは美術館とJR高山駅を結ぶ無料のシャトルバスに乗った。乗客はぼくひとり。ということもあってか、バスの運転手が話しかけて来て、訊きもしないのに、いろいろと美術館のことを教えてくれた。
ここはある会社が運営している私立の美術館で、10年ほど前に開館。社長個人の趣味で集めた美術品を展示公開するために建設。シャトルバスにしている赤い2階建てのバスもじっさいロンドンで走っているものを購入。バスの大きさが規格に合わないため、運行の許可が下りなかったが、このバスは館所有の美術作品ということで認められたという。街の中を美術作品が走る。そのアイディアはとってもいい。赤いロンドンバスが高山の街並みに合うとは思えないが。
さて、この美術館、みなさんにおすすめできるか、というと、アール・ヌーヴォー様式が好きな人はぜひ行くべき、というところでしょうか。入館料は、割引券があれば(ぼくはホテルのロビーで見つけました)、大学生は800円です。