後倒しの功罪

 4月に入って、中旬ごろから急に暑さを感じる日が多くなりました。初旬~中旬は雨の日が多く、まだ肌寒く、菜種梅雨を実感していましたが、17日頃からで しょうか、晴れの日が多くなり、気温も25度を超え、30度近くになる日も増えました。全国的にも同様で、東北や北海道まで夏日になる日が出てきました。初旬 には、4月中旬(12日)頃に大地震があるのではないか、という「予 言」がネットで話題になり、大量にイルカが打ち上げられるという事象もあったりして、菜種梅雨の鬱陶しいときにネット上を賑わせましたが、実際は 12日は大地震は起きず、その「予言」の日から2週間ほど経った25日にネパールに大地震(M7.8)が起こり、5千人を超す人が亡くなったりして、大災害に なりました。地球の地下はすべて繋がっています。

 ところで、学生さんは中旬ごろまでは、就活が本格化してまだ間がないので、多くは初旬は週2,3日ラボに顔を出して、卒業研究のための準備作業が半分ぐらい 終了するテンポ だったのですが、中旬以降はパタッと顔を見せない学生さんが大部分になりました。今年度は、卒研生を持つのも最後になりますので、5人中4人は就職予定で動い ています。昨年までならば、大体5月までには就活はほぼ一段落し、多くが内定をもらってきて、5月初めには卒研をぼちぼち開始できる時期だったのですが、今年 は全然様子が違います。
 経団連などが申し合わせで、企業のリクルート活動は今年からは後ろにずらし、基本的には4月から説明会を開始し、夏ごろから面接を本格化し、8月以降に内定 を出していく、という「就活の3ヶ月程度の後ろ倒し」となったので、4年生の前学期は、就職希望の場合は、ほぼ全部就活で潰れるということになったわけです。 真 夏の就活は大変でしょう。
 ただ、3年生の後半や、修士1年生の冬場は、今年はしっかりと授業にも出れて、修士の実験もできるようになったという印象があります。
しかし、一番学生時代の能力の上がるはずの「卒研の前半」の学期が、就活でほぼ潰れ、実質9月~12月のほぼ4ヶ月ぐらいしか、卒研に打ち込めないことになる 感じが しています。修士2年の後半だって、1年の時の未熟な実験データだけをただまとめるだけの時間になってしまいそうです。

 これでは、ますます、学部4年で就職するよりも、6年一貫で、修士まで出る方が「大学で力をつける」うえでは有利になるはずです。現在、ほぼ50~60%が 修士に進みますが、今後はこの割合が70%ぐらいまでに上がった方(よその大学院に進学する人も増えることで)がいいかもしれません。またこの世の中、幾分多 くの家庭の収入が上がっていれば、これも可能になるでしょうが、格差が拡大している現在、恐らくそうもいかないのではないか、と思います。となると、奨学金な どの制度を今よりもっと充実させないと、修士の途中でドロップアウトする人も増えてくる恐れがあります。
 しかしながら、実際には少し景気が良くなっているこの頃では人手不足ぎみで、売り手市場とかで、早く良い学生を取りたいと思っている企業が増えているわけで すか ら、やっぱり学部4年で良い企業に就職するに越したことはない、と考える学生が多くいるのも事実。であれば、今年のように、比較的景気の良い時に就活を後倒し することは、あまり力の付いていない学生の就職を増やしてしまい、企業も大学も矛盾を拡大するだけになる可能性が高い。
 むしろ、景気の良くなっている今時ほど、ある程度(学部卒程度)力の付いた学生をたくさん取るために就活を早めにして(3年生の1月頃から)、卒業研究に掛 け る時間を増やせるようにした方がいいのではないか、と思います。今年後倒しにしたのは、少しはやまったな、と思いました。

 とは言いながらも、どういう状況であっても最低やるべきことはやらねばなりません。大学での活動はやりにくくはなっていますが、それでも少しずつ、やってい きましょう。

(2015.03.30)