うらぎりの六月

 11日からFIFAワールドカップ南アフリカ大会が始まりました。
 また、8日には、鳩山民主党内閣から、菅直人内閣に変わりました。
 6月の話題は、やはりこの2つでしょうか。この2つの話題に共通するキーワードはなんだろう、と思っていましたが、うらぎり、裏切り、ではないかと思い至りました。

  サッカー日本代表は、昨夜29日深夜に放映された、決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦では、PK戦の末、敗れ去りましたが、その戦いぶりは見事でし た。1次リーグが始まる前のいくつかの国との親善試合の無残な負け振りからすると、我が日本代表は、恐らく1次リーグを勝ち上がることはないだろう、と僕 も、それから多くの人達も予想していたと思います。その予想は、いい意味で見事に「裏切られ」、どうしてこんなに強くなったの、と驚きの連続でした。負けを予想していたデンマーク戦も、見事3対1で完勝し、予想の「裏切り」 は最高潮に達しました。そして、16強になって、決勝トーナメントでの強国パラグアイとの息詰まる熱戦。〇対〇。延長戦でも〇対〇。PK戦になったら、も うどうでもいいんです。同等の力であることが証明された戦いだったのですから。あとは、偶然性が支配する世界。でも、多くの人は、僕も含め、これまでの戦 いぶりを考えて、これは8強になれるんじゃないだろうか、と期待したのではないでしょうか。それは、やはり、ですが、裏切られました。
 ポジティブに期待したことが、それに反した結果になったとき、「裏切られた」と普通、使います。逆に、ネガティブに予想していたことが、反対に良い結果になったときは、「いい意味で裏切られた」 と表現することが日本語では普通です。他の表現て、ないんでしょうかね。「いい意味で裏切られた」に代わる表現。英語ではなんて言うのかな。 Unexpected luckiness かな?一言で言い表す良い日本語を知らないので、とりあえず、ここでは「いい意味で裏切られた」を、ひらがなを使って単純に「うらぎられた」ということにします。悪い結果の時は、普通に「裏切られた」、良い結果の時は「うらぎられた」。
  ということで、見事に予想をうらぎられた日本代表の戦いぶりでしたが、強いパラグアイとも同等な力を発揮できたのは、サッカーというある程度カオスのちか らが支配する世界のせいもありますが(つまりボールを蹴る直前の状態のほんの小さな違いがボールの飛んでいく方向の大きな違いをもたらしたり、選手の位置 取りのごく小さな違いが成功と失敗の紙一重の差をもたらす、というような意味で)、団結力・意思統一の力、さらに海外で揉まれて個の力としても強くなった 選手が増えた、ということがあると思います。でも、守備力は世界でも通用することがわかりましたが、点を取る方程式がまだ未熟のようですから、今後ベスト 4を本気で目指すチームにしていこうとするなら、そこを世界一流のものにするよう努力するしか、ありませんね。難しいでしょうけど。
 まだまだ面 白い試合が続くワールドカップですが、一番裏切られたのは、フランスとイタリアのチームの1次リーグ敗退でした。特に、フランス。内紛を起こして自壊して しまうような代表チームじゃしょうがない。でもこういうのもフランスという国のある側面なのかも、知れません。個というものが強すぎる、という側面。その 強い個というものが、一つにまとまったときは、それは強いものになり、W杯優勝、というところまでいける。日本ではそういうことは起こらなでしょうけど、 たとえ内紛の種を抱えているとしても。。。

 それから、民主党政権になってからも、政治の世界は「裏切り」の連続ですね。残念ながら、い い意味の「うらぎり」はほとんどありません。期待していないで活躍してしまって、いい結果をもたらす、というようなヒーローは、まあ政治の世界ではでない でしょうね。いいことをやることを約束して、そしてやっていい結果をもたらすというのが当然と思われているのが政治ですから。公約になかったことをやろう というのは、ある意味、裏切りでしょう。でも、ある程度の裏切りは織り込み済み、ということで政治や選挙とは付き合っていかなければならないのかもしれま せん。

 大学の学生さんも含め、期待しても裏切られる場合も、あまり期待していなくて見事にうらぎられ良い結果を出すというような場合も、周りにはいろいろあります。それが人生、セ・ラ・ヴィ。

(2010.06.30)