人を動かすもの
紅葉の季節、だいぶピークは過ぎたようですが、岐阜の横蔵寺も11月下旬は名所だけのことはあって、たくさん人が出ていました。人は、美しいものに引かれ動いていきます。また、先日、新幹線で東京へ行く途中、見事
に美しい富士山の姿を見ることができました。北側の座席に座っていた多くの人は、携帯カメラで撮影したりして動き出しました。(右は、普通
のデジカメで撮ったもの)眠気も醒めました。
やはり、人を動かすものの一つが、美しいもの、ですね。
人は何によって動かされるのか?
文系の人にはマーケティングの問題だよ、そりゃ、と思うでしょうが、理系的には脳の問題でしょ、そりゃ、って思うのかな。どちらにしても、個人差はあ
れ、美しいもの(あ、そういえばどこかのお偉いさんがそれに類したことを語ったり本にしてますね)だけではなくて、悲しみや憎しみや快楽というのも、場合
によっては人を、また国をも、動かす大きな力になるでしょう。
これらは、端的にいえば「古い脳」に働き
かけた結果です。ここに働きかけられると、脳(というか、こころ)の核心を揺さぶられる感じです。「感動」とい
うのは、まさにそのことで、感情が「動かされた」という状態をあらわすのでしょう。「Moved!」というわけです。
人が動かされる、ということでは、それら以上に最近とても気になっているのが、人の「恐怖心」に働きかける、ということが、頻繁に起きている、ということです。この
恐怖心も、「古い脳」が起こしている情動の一つであり、とても強いものです。
前にも書きましたが、例の「メタボリックシンドローム」や「血中コ
レステロール値」の問題でも、こんな長寿命な日本の国民の40代以上の男性の約半分が
その危険水域にある、という「メタボの恐怖」を1年ほど前から全メディア総動員であおってきている、というのも、考えようによっては人の恐怖心に働きかけ
る「政策」の一つであるということです(記
事)。そこまで恐怖心にうったえる前に、もっと科学的な根拠をしっかりと公開しなきゃだめでしょ。「お腹周り」の長さだけを問題にしすぎます。本
来のメタボの問題は、統計的な問題であって、「お腹周り」X「高血
圧」X「低HDL」X「高血糖」という色んなファクターを統合的に見よう、ということな
んだから、「国民の半数は危ない領域にある」などということを大々的に宣伝して、あまり効かない薬(効き過ぎても問題なのだが)やトクホ食品を買わせよ
う、という動きは是正して欲しい
と思います。一昔前の「リノール酸神話」の二の舞になりますよ。
最近自分も経験したことですが、恐怖心は正しい選択を抑えてしま
う、と言うことがあります。
もう、3年近く前に「ビール喘息」様症状になって、しばらくお酒が飲めなくなっていたのですが、かかりつけのお医者さんからは、ステロイド薬を薦められ
ていました。最近のステロイド薬は良くなっており、データ的にも改善するはずだ、と言われていたのです。しかし、昔抱いた「ステロイド薬」は「怖い」とい
う印象を取り去ることができず、自分としては、漢方薬を使っていました(もちろん状況次第ではステロイド薬は怖いというのは間違ってはいな
いのですが・・・)。なかなか、そのお医者さんからの提案を受け入れることができなかったのですが、1ヶ月ほど前から自分で調べた色んな
データを元に、これくらいなら大丈夫だろう、という確信のようなものが出てきたので、一番弱いステロイド薬の段階(○ル○イド100μg;の半分の量)か
ら始めてみる
ことにしました。初めの2週間ほどは漢方薬との併用でしたが、なんと、そうしたら始めてみて1ヶ月足らずでかなり効いていることが実感できるようになり、
先日の集まりでは、フルボディワインも焼酎もスパークリ
ング酒も、なんでも大丈夫であることを体験したんです。
もともとあった恐怖心を打ち破れたのは、やはり科学的なデータがあったからでした。「古い脳」の働きを、科学的データに裏打ちされた「勇気」とともに
「新しい脳」(理性)の判断が制御してくれたわけです。その場合でも、恐怖心の中でその薬を試すわけですから、自分の体がどのように応答するか、をいつも
微細なところまで感じ、見ようとしていました。もし、ちょっと異常を感じたらすぐ止めようと思っていましたが、まったく悪い方向に向くことは無かったので
続けられて、なんとか「ビール喘息」を克服できた感じはしています。(あともう少し様子を見る必要がありますが・・・。)
人を動かすには、感情も、勇気も理性も、それらに訴えかけることが大事だ、というありふれた結論かな。
(2006.11.26)