社 会現象を愉しむ

 例年通り9月初めの学会出張のために高知に行きました。高知は何年ぶりだろう?2000年に岐阜に来て、2001年に非常勤講師として高知大学に呼ばれて以 来かもしれません。それ以前では大分にいた時は4,5回車で訪れていましたが、JRは使わなかったのであまりJR高知駅の印象がありませんでした。今回は木曜 日の午後に高知に入ったのですが、すぐ理事会の会合があるので、高知駅についてすぐにお土産売り場に直行して、主として海のものを数点手に入れておきました。 学会の期間中はほとんど買い物に出る時間がなかったのでそれは正解でした。帰りもJR高知駅を使ったのですが、お弁当が売られていませんでした。岡山までの間 に高知の名物のお弁当を、と思っていたので、残念至極!まあ、そのこともあってJRの旅はあまり愉しむことはできませんでしたが、学会そのものは色々興味ある 話もあり、今回は発表はしませんでしたが、他の人の話をじっくりと愉しむことができました。コレステロール論争もたいぶ落ち着いてきたという印象ですが、7月 頃から話題になっていた高血圧治療薬ディオバンの臨床試験の論文捏造事件のこともあり、糖尿病とスタチン薬をめぐる論争も広がっていきそうな気配です。
 臨床試験や基礎研究でも論文捏造の話題は色んな所で起こっていて、もう一種の社会現象化している気がします。憂鬱で楽しめない社会現象ではありますが、ディ オバンの論文捏造事件は厚労省の調査委員会では「誇大広告」という位置付けで立入検査を行う流れになってきています。しかし、この臨床試験での問題は、法律的 には何の罰則もない状態なので、今のままだとまた起こりえます。こういうことが二度と起こらないようにする厳格な仕組みをどう作るか、という議論を医師や製薬 企業以外の第三者で行なっていって欲しい、と思います。このままでは日本の臨床試験に対して海外からも疑いの目で見られるようになります。

 もっと愉しめる社会現象といえば、テレビドラマの「あまちゃん」と「半沢直樹」でしょうか。これらのドラマにより、流行語が生まれ、一種の社会現象となりま したが、でも別にグッズを買い求めるとかCDを買うとかはしていませんが、ドラマの中で発せられる一言一言に含まれるなぞなぞを考えてみる愉しみがいっぱい詰 まったドラマでした。特に「半沢直樹」の原作者である池井戸潤氏の「下町ロケット」を読んで彼のファンになっていたので、「半沢」の原作も全部読んでいました から、最終回の頭取の言葉も違和感なく、心のなかでOKのサインを出していました。これらの社会現象化したドラマが、なぜそうであったのか、というのを考えて みるというのも大いなる愉しみではあります。
 ところで、池井戸氏は岐阜のご出身で、県立加茂高校の卒業だとか。その2年先輩に脚本家の北川悦吏子女史がいて、これまた昔高視聴率(歴代3位)を叩きだし た「ビューティフルライフ」というドラマの脚本をされています。「半沢直樹」が歴代2位の高視聴率でしたから、なかなかすごいことですね。その高校での教育が 彼らに何らかの影響を与えたのではないか、と想像しますので、えらいぞ、加茂高校と言ってやりたい感じです。
 この9月は、他にも東野圭吾の最新作「祈りの幕が下りる時」という小説にも大変感銘を受けました。もうちょっと近松門左衛門を読んでみようか、と思っていま す。
 すっかり文系の頭になってしまった、9月でした。

(2013.09.30)