「退活」の梅雨

 のっけから変なタイトルで始めました。退活、これは私の造語ですが、退 職に向けた活動、ということで作りました。今年も半年が経って、退職後の生活設計を 色々考え出す時期なのかもしれません。梅雨時で、雨の多かった6月でしたが、さほど蒸し暑くはなく、エルニーニョの影響なのでしょうか、30℃を超える気温の 日は数えるほどしかありませんでした。それで、あまり鬱陶しくなく、「鬱陶しい退活」のことを考えることが出来ました。
 退活、というのは一種の「終活」なのでしょうが、考えようによっては健康であればあと20数年を生きなければいけない、という新しい人生なわけですから、軽 い問題ではないと思います。
 まあ、退職後は、普通の研究者ならばどこかの私立大学や短大など70歳ぐらいまで働かせてもらえるところで、現在の大学生活の延長として、生物とか化学とか 数学 とか教えて過ごすことを考えるのでしょう。どこかの学長さんや役員として70ぐらいまでやる人もいますね(こういう仕事は私の方から願い下げですが)。昨年あたりは そんなことも考えましたが、二十歳ぐらいの男女を相手に、大学というところで常勤で「教える」(卒業資格を取らせるだけのために)のは、もう止めにした方がい い、と考えるようになりました。非常 勤は別ですが。それは、他にやりたいことが色々とあるから、というのが理由の一つですが、その一つが実は博物館活動とか科学館活動なんです。
 これは、昔、アメリカやフランスの科学博物館をあちこち見て回った時に考えていたことで、自分自身が大変面白いと感じることができますし、それを他の人たち に伝えること も大変面白いと思っていました。大学で自分がやるべき研究教育が終わったら、是非科学館活動をやろうと思っていました。それも、若い人たち、小学生や中学生の多感 な時期の生徒たちを相手にやってみたい、また一般の成人でも科学や技術にすごく興味を持って知りたいと思っている人たちを相手に話してみたい、と思っていまし た。そういう想い も ありましたので、今年の5月からある科学館で、半分ボランティアですが小学生を相手に発明クラブの指導を始めています。もちろん、現在はまだ退職していな いので大学での学生さんたちの指導という仕事がありますが、月1~2回日曜日に、片手間にですが、意欲のある子供たちを指導するというのは実に新鮮で、楽しい のです。これは、たぶん来年以降も続けていると思います。
 ただ、退活で最も気になるのが、生活費、お金のことですね。年金暮らしになれば、夫婦で現在の給料の半分以下しか年金はもらえません。足りない分は、これま で貯めた預貯金から削っていくしか、ない。現在の預金金利はほとんどゼロですから、資本主義の体をなしていないわけですが、この段階になってようやく最近の年 金暮ら しの余裕のなさが理解できるようになりました。1980年頃(1979~1982)、私はアメリカのNY州立大学で3年間働いていましたので、その時民間の年金退職金基金 機構 TIAA-CREFに一部積み立ててもらっていたのですが、たった3年の積立ですが30数年置いておいたら、当時の金利が相当良かったのでそれなりの額になっ ていました。今の日本経済からは想像もできません。80年代前半までは安定成長しているまともな資本主義万歳の時代があったのですね(つくづく思います)。た だ、そのあと、80年代後半から90年代にかけて大きな金融危機が起こり、金利が大きく低下していきます。今ではなんでもグローバルに なって、小さな国の小さな資本主義経済が世 界全体の経済の不安定さを引き起こせる時代になっています。ゼロ金利やマイナス金利などもある、不安定でおかしなグ ローバル資本主義です。

 退職後、新しい人生を楽しむにはどうしていったらいいか、まだまだ退活は続きます。学生さんの就活は、大体終盤を迎えつつあるようです。お互い頑張りたいも のです。

(2015.06.30)