次 に備えるための8月

 「この8月はゆっくりしたいなぁ。」と呟いた先月末でしたが、お盆休みの1週間ほど以外は、酷暑の強烈な陽射しを浴びて構内を往復する会議など多く、概して ゆっくりはできなかった印象です。
 お盆休みに一服した時に、下呂小坂の滝を見てきました。巌立公園から少し歩くと、もうそ こは涼風漂う別世界。滝が出す微小液滴(マイナスイオンが出ているといわれていますが、マイナスだけじゃないでしょうし、そんなことはどうでもいいので す)が小坂の滝風 にのって顔や体に当たってくると、実に涼しい感じになります。右図は歩いて10分ぐらいのところにある滝(三ッ滝の一部)で、この左手に作ってある鉄製の 階段を登っていきます。少しめまいを覚えるくらい急なところもありますので、体力のない人はご注意。この滝の下流での体感温度は26度ぐらいかな、と思い ますが、下界は36度ぐらいでしたから、10度ぐらいは違う感覚でした。
 この時は道路も混んでいなくて、一応一息つけたかな、という感じになりましたが、家に戻るとそこはまた酷暑でありました。
 
 お盆休みが明けると、そこにはまた会議の嵐が。そして、大学院入試。
このような業務が続いていても、世の中はまだ次への準備であまり大きな動きは出てきていません。7月に起こったディオバン問題も、美白化粧品問題も、尾を 引く大きな問題だと思いますが、深く調査が続けられている状況でしょう。
大学院入試は、私にとっては来年度以降は院生を取れないので一応最後の作問業務がありました。ちょっとひねった新傾向問題を出すと、学生はとたんに点数が とれなくなるということが改めて確認できました。原理をちゃんと理解しておれば素直にわかる問題なのに、見たことない問題に出くわすと頭が真っ白になり思 考が停止してしまう学生が多い。これでは、企業に入ったら困るよねぇ。いつものことをこなすのは大丈夫だが、新しいことにチャレンジしたら新問題ばかりな んだから。
 この院入試というのは学生にとっては次に備えて頭を整理し鍛えるための機会、という位置付けで私は見ています。ここで一定のレベルに達しなかったら、次 の機会もすぐあるのでまた鍛えましょう、ということです。次は卒業研究で頭を鍛えることになりますが。

 こんな状況の8月でしたが、学問的には面白い発表もありました。Natureの8月29日号に発 表された論文は、「Cerebral organoids model human brain development and microcephaly」というタイトルで、AustriaとUKの研究者によるものです。脳のオルガノイド(組織の種?)が幹細胞からできた、というもので、作成され た脳海馬組織のような大きさ数ミリの構造を持った画像には惚れぼれとするほどで、美しいものでした。iPS細胞とES細胞のメディウム等を使ってバイオリ アクターの中でかき混ぜていると1ヶ月ぐらいで神経ネットワークの働いている組織が形成された、というわけで、ちゃんと条件さえ整えれば脳のような複雑な 組織といえどもある程度までは自発的に形成する、というのがわかったのは大変面白いことです。少なくともバラバラにした細胞レベルの研究よりは意味があり 面白いと思います。これを解析するための新しいMRIが開発されるかもしれません。そのうちこのオルガノイドを使って「思考させる」ことができるか、など という実験をする人が出てくるかもしれません。

 8月下旬になったら急に秋らしい涼しい日もあったりして、酷暑の夏も終わりけり、という感じで次へ向かいましょう。

(2013.08.30)