希望と絶望の霜月

  予想されたように、11月はじめにはアメリカ大統領選挙戦が終結してオバマ大統領になることが決まりました。これは大いなる「希望」であると思われました が、先月から急激に広がった世界的不況は一向に希望が見えてきません。この中部地方にとっても、自動車産業の世界的低迷のインパクトは大きく、学生の就活 にも多少の影響は出ているようで、内定の取り消しも増えているとか。自動車産業という、一つだけの産業に支えられたこの地方の脆弱性を、今更ながら感じます。
  中部・東海地方は、「ものづくり」の伝統があるといわれます。それがこの地方の経済を支えてきたとも言われてきました。でもそのほとんどは、「自動車とい うものづくり」に絡んだ関連産業ばかりです。国の研究開発予算を投下する場合でも、地域イノベーション開発、などと銘打っても、めざす分析計測装置開発を 僕らと一緒にやっていける企業は本当に少ない。長野や滋賀や北陸まで入れたら、ある程度はそろうとは思いますが、しかし、かなり革新的な装置開発となると 体力のある企業は全国を見渡しても非常に少ないのです。寄らば大樹の陰、的な所が多いために、革新を求められる大事な時には力にならないのです。それはな ぜかといえば、多くの企業が博士号を取得している人材の採用に積極的ではないから、新しいことをするときに力になりにくいのだと、思っています。大樹が傾 いてくれば、どうしようもなくなるのです。

 心なしかいつもより寒冷化が進んでいるような気もします。11月半ばなのに20数年ぶりにここの市街地にも雪が舞ったりしているし、9月には太陽の黒点が消えて、地球寒冷化?などという報道がなされたり。うっかりと温暖化のことを忘れてしまいそう。

  これだけ世界的な不況が続き、いろんな産業経済活動や、人々の消費活動の減少が1年以上続けば、もしかしたらCO2削減目標など、すぐ達成される可能性は 高いかもしれない、とも思えます。これは、CO2削減を本気で推進しようとしている人々にとっては、ある意味、希望かもしれません。しかし、あまりにも悲 しいですね、多くの絶望の上にしか達成できない希望だとしたら。。。
 あのマイケル・クライトン氏も11月4日、66歳の若さで亡くなってしまいました。彼なら、元気で生きていれば、今後の世界の金融経済産業活動のあり方と環境問題について、現在の世界的不況の克服を考えた上でまた面白いアイディアで小説を書いてくれたかもしれません。
 でも、オバマ新大統領は、すでにグリーン・ニューディールといったような、「新しい仕事」 を提案しようとしているようです。危機こそ、チャンスとばかりに、いろんなアイディアで世界をリードしようという、不況の本家本元のアメリカの人々の、希望 への希求力を見た思いがします。それに引き換え、日本の状況はどうでしょう。有効な提言は何一つ出てきてないん じゃないでしょうか。文芸春秋12月号には、世界同時不況についての特集が組まれており、7人の識者がいろんな話をしていますが、榊原さんなどは、もうい ままでのマクロ政策ではもうだめ、ミクロ政策の積み重ねしかないだろう、などと言っています。
 このような、100年に一度の危機、大変な全般的な混乱の時期にこそ、新しい仕組みの芽生えが出てくるはずなのですが、またもや日本から出てくるのを期待するのは無理なのか。EUにこそ、期待したいところではありますが、どうなることやら。
 しかし、生きている限り、絶望はできません。人々は、希望を求めています。その希望に応えるシステムを、誰かが作り出さねばなりません。

(2008.11.29)