災害と向きあう9月

 9月初めに学会があり参加しましたが、台風12号の影響が心配されました。当初、関東を直撃するかもしれないと思い、学会大会開催時に暴風雨警報がだされたらどうするか、など本気で気をもみましたが、外れてしまいまして結局9月3日に 高知県に上陸し、四国中国地方を縦断して日本海に出てしまいました。雨の災害が酷く、関東の方でも降りまして、大会最後の日、帰り際にかなりの雨に降られ ました。新幹線は名古屋までは定刻に運転しており、夜10時頃には岐阜に帰り着きました。ただ、岐阜と米原の間で雨のため、新幹線は遅れたようです。この 台風では、紀伊半島、特に和歌山や奈良、三重県への影響が大きく、山の土砂崩れで大きな被害が出ました。
 また、9月20日~25日頃に来た台風15号は、東海地方にも大きな被害を及ぼし、雨の被害が大きく報道されていました。名古屋周辺の交通機関も大きな影響を受けました。3月の津波による被害はまだ記憶に新しいところですが、この台風に因る川の氾濫による洪水被害の報道も、3月の被害の記憶と重なって「水災害」の怖さを改めて思い知らされました。21日頃の京都での大きな学会には行きませんでしたが、さほどの被害は無かったようです。学会に参加するまでが参加者にとっては大変だったことでしょう。
 東北でも、これらの台風の影響で、避難してきている土地でまた洪水にあっている様子が報道されていましたが、本当にふんだりけったり、気の毒でなりません。

 このようにたくさんの災害と出くわした今年の9月でしたが、1000年に一度の大地震といわれる東日本大震災があって、その夏に大きな台風の被害が出ている。では、1000年前はどうだったのでしょう?日経サイエンスの6月号に、歴史的な記述がありました。

 869年7月13日     貞観地震(M8.4以上)
 2ヵ月後(つまり9月)   熊本に台風大災害  
 
 平安時代にあった貞観地震のときも、9月には台風の大災害があったと記録には残っているようです。やはり、歴史は繰り返すのか。
偶然の一致ということももちろんあるでしょうが、警戒するための資料としては一級品だと思います。
  その歴史には実はまだ続きがあって、その貞観地震の9年後の11月に関東に大地震があった、と記録されています。そしてさらに、その9年後(貞観地震から 18年後)に南海大地震が起こった、とされています。ということは、この千年に一度の大地震はさらにあと20年以内に歴史的に大きな地震・災害の起こる時 代に入ったことを示す、ということなのかもしれません。
 これらはいわば自然災害であり、地球の地殻と大気環境の「身震い」とでも呼んで良いと思 いますが、今回の大震災にはその自然災害に加えて、人間が作り出した地球環境にはなかった放射性物質による汚染、という災害が加わっていますので、よりた ちが悪い。福島県の約1/3が2μSv/h以上の汚染があるのがマップを見ると分 かります。子どものためにも除染を急ごう、という呼びかけにもなかなか国や自治体は動きが遅い。除染してもその後の汚染した土をどこに運ぶのかも決まって いない、というのはもともと原発の放射能廃棄物をどう処理すべきなのかすらきちんと解決していない、という世界の原子力政策の問題と同根なのです。
  地中に深く埋めるというのが現在唯一の方法ですが、あと数万年、数十万年経つと地殻変動してまた地表に出てくる可能性もあるわけで、マグマの中に放り込ん でも火山からまた地表に出てくることもありうるわけです。ウランの核分裂生成物としては、セシウム-137(半減期30年)と同様に出てくるテクネチウム -99やジルコニウム-93など(それぞれ半減期21万年や150万年)は、数十万年以上経たないと減らないようなものまであり ますから(ヨウ素-129だと1570万年ですからね)、ますます地球は(核爆発もあったし原発事故もあったし)人工の危険物質での汚染が続くということ です。やはり、人類は自分で作ってしまった汚染 物質で自ら滅ぶ運命にあるのか、と嘯きたくもなりますが、他の原因で人類は滅びるでしょうから数百万年も待つ必要もないのかもしれません。希望、という言 葉は輝きのある言葉ですが、実はその希望は人類の後の別の生命体に託すしかないのかも、知れません。最強の絶滅危惧種、人類・・・・。

 どうも暗い予想しか出て来ませんが、また10月の爽やかな風に吹かれれば、気分もフレッシュになるかもしれません。

(2011.09.30)