この1ヶ月間は夏の後半に当たりますが、何か2,3ヶ月にも相当するような、ずいぶん長かったなという印象でした。理由は、スポーツイベントの目白押しで、昼も夜も、興味をひきつけられたためでしょう。そう、高校野球あり、アテネオリンピック大会あり、喜多郎さんコンサートあり、酒田市で学会あり、大手企業研究所で研究員を前にしたセミナーあり、地震と大型台風あり、マンションで防災訓練あり、などが点描のポイントでしょう。
それにしても、甲子園大会の優勝旗が、一挙に北海道に渡ったというのは、歴史的なことでした。しかし、東北生まれのボクとしてはちょっと複雑な気分。もう80年以上も「白河の関」を越えたことのない優勝旗が、東北を飛び越えて津軽海峡も飛び越えて、苫小牧に降り立ったわけですから。だから東北の人たちの気分としては、「まだ白河の関は越えていない」でしょうな。
それにしても、これも地球温暖化の兆候のひとつかもしれない。北国は冬は雪深くて練習は長い間できない、という考えは、もう、しなくて良い時代かもしれません。設備も整ってきたし、練習量も南の方の高校に絶対的に劣っているということも、なくなってきているわけだし。次は、いつ東北地方に優勝旗がもたらされるか、というのが「歴史的」ということを超えて悲願になるのでしょう。
それから、アテネオリンピックでした。今では、もうずいぶん前のような感じですが。これが開始される前は、ギリシャかギリシアかで、論争が再び起こるのではないか、と密かに期待したのですが、そんな議論はどこにもおきませんでしたね。それこそ、どうでもいいことでしたが。テレビ・新聞マスコミはずっと、ギリシャと表現していましたが、教育レベルや辞書の世界ではギリシアですから、そろそろどちらかに統一してくれ、という議論があってもおかしくない。でも、そこは素通りで、ほとんどギリシアのギの字も出ないで、アテネで統一してくれました。
それはそうと、ショックは柔道・井上康生選手の敗北でした。これは、野村選手の3連覇のうれしさを消し去ってしまうほどのインパクトがありました。期待の大きさに押しつぶされた、などと評価するものがあるかもしれませんが、そんなものを軽く吹き飛ばすほどの強さを持っている男だと思っていた井上が、あれほど技が掛けられずに弱くなってしまったとは。そんな、アホな、と思わずつぶやいてしまいました。人間が優しすぎたのか。
全体的に予想以上に、日本人選手の活躍が目立った大会だっただけに、絶対金確実、と思われた選手の敗北は、やはり深く記憶に刻み込まれました。期待が大きいほど、うまくいかなかった試合もありましたね。男子野球、男子サッカーに女子ソフトボール。ま、男子サッカーはあの組ですから、順当と言えば順当。女子マラソンでの野口選手の優勝は感動ものでしたが、やはり高橋尚子選手も出ていたら、どうなっていたろうか、とつい思ってしまいます。東京国際の二の舞はしないはずだから、ラドクリフのようにはならなかったでしょうが、野口を振り切ることができたかどうか。予想と結果の意外性に感動するのが、スポーツのおもしろさの一つなんだと思いますね。
オリンピックが一段落した土曜日の夕暮れ、長良川河畔では、喜多郎さんの野外コンサートが(無料)開かれ、ようやく聴きにいけました(右図)。闇に浮かび上がる金華山・岐阜城をバックに、「水に祈りて」や「古事記」などの音楽が静かに、しかも力強く、心地よい川面の風とともに流れてくると、ずんずん引き込まれました。やはり、良かった。地元の太鼓演奏家たちの音楽と古事記演奏とのマッチングもすばらしかったですね。
それから2週間ほどして、例年行っている学会が今年は山形県酒田市で行われて、参加してきました。久しぶりの東北旅行だったので、JRを乗り継ぎ、7時間掛けてたどり着きました。大分にいたころは6時間以上のJRの旅はごく普通のことで、結構集中して本が読めるので好きでしたが、最近は急ぎの旅が多くて長くてもJRは2,3時間。7時間も掛ければ、本を読みながらゆっくりと空想を羽ばたかせることができます。酒田市は、昔は「西の堺、東の酒田」と言われたほど豪商の力が強かったわけですが、例の「おしん」の奉公先の話が今も記憶に残っています。本間様という豪商の力は相当なものだったらしく、「本間様には及びでないが、せめてなりたや殿さまに」と詠まれたほど、その威光はいまでも記念館やら美術館などに残っています。ただ、残念ながら今回はゆっくり見物する暇がなかったのですがね。学会の懇親会では、学生の太鼓演奏があったり、お座敷用の珍しい花笠音頭の踊りもあったりで、(幼いころは)東北人の私にも楽しめました(が、経費のことが若干心配に…)右図→
宿泊は、学会会場の最上川をはさんで向かい側にあるホテルで、朝食のバイキング時には巨大な最上川の河口の眺めを楽しむことができました。最上川といえば、芭蕉さんですね。有名な句が出てきます。「五月雨を集めてはやし最上川」「暑き日を海に入れたり最上川」「涼しさや海に入れたる最上川」とか「風の香も南に近し最上川」 ・・・ これらは、かなり雄大さを印象付ける句ですな。しかし、実際この目で見た最上川は、9月の秋を思わせるいい気候のときのもので、あまり雄大さという印象でなく、むしろ「ゆったり」を感じました。そこで一句。
ゆったりと 時代(とき)を流るや 最上川
学会から帰る途中に、東京墨田区にある、ある企業の研究所でセミナーをして所員の方々とお話をする機会がありました。彼らはかなり基礎的な研究もしながら、日々商品開発を目指しているわけですが、競争の激しい分野だけに、その努力が少しでも遅れると一挙に業績低下になってくる。研究の過程で、素晴らしいデータが得られても、それが商品開発につながり、さらにそれが人々の間に大きく受け入れられるようにならない限り、だめ。だからそれぞれのステップで、本当に細かなところまで気を配らないと、長期にわたって売れるようにはならない。このような状況をしっかり見ると、大学発ベンチャー企業を1000社作って産業を興し、金を稼ごう、などとどこかでやっている掛け声がうそっぽく見えてきます。
色々先端の現場で頑張っている人々の気持ちに学ぶことが多いと思う、大学での教育研究の今日この頃でした。
このような出張の間に、ちょっと大きな地震が2つも中部から近畿地方を襲い、家に戻ってからもまた風速50mを超える風を吹かせた台風も近くを通ったり、と自然災害への不安が大きくなっているこのごろですが、こういうのを見るたび日頃からの防災のための準備が必要と思うものの、訓練のようなものがないとやはりなにもできない(しない)のですね。それで、わがマンションでは、あの9月11日に、防災訓練をやってみました。警備会社の人の立会いで実際に火災警報ベルを押して、住民の避難を行いました。警備会社の人も、あまりマンションではやったことがなく、マーサ21などのショッピングセンターでは経験があるけれども、とおっしゃっていましたが、警備会社の人の予想外のことも起こりました。警報ベルの音をリセットして消す方法を、その方は全然勘違いしていたようです。このようなプロでも間違えるのですから、やはり、実際の訓練は必要なんですね。現場はいろんなことが起こる。
急ぎ足の夏点描後半でしたが、やはりいろんなことが起こってました。そして、あっというまに秋です。学生もそろそろ戻って実験しないと遅れちゃうぞ。カリキュラム改革はまにあうのか?そんなこと考えていたら歯が痛くなってきた!
(2004.09.18)