夏の宴のあとに秋

  2ヶ月ぶりに雑記を再開します。8月はじめに身内に不幸があり、四十九日法要が過ぎるまで服喪ということでネットに出ずに、結局7月下旬から9月下旬 までこの雑記を休みました。この期間は、ほとんど大学の夏休みと重なってしまったので、大学院入試業務以外は、大学に関することでは気を引くことはあまり ありませんで したが、この間、世の中はかなり激しく動きました。
  夏枯れが起こることもなく、この夏2ヶ月間ではやはり、総選挙と愛地球博の盛り上がり、というのが中心だったでしょうか・・・。ただ、博覧会のほう は、確かにこの中部地区ではあらゆるメディアが宣伝するお陰で、その盛り上がりっぷりが良く伝わってくるのですが、東北なんかに行くとテレビでニュースを 見ない限りあまり触れられてはいませんね。新聞でも扱いは小さいですし。特に夏に期待をしていた観光関係の業界では「お客を万博に奪われた」という嘆きも 聞こえていますし、愛知やこの中部地区が盛り上がっているからといって全国が同じような感じでいると勘違いしてはいけませんね。やはり、悲喜交々というこ とで。全体的な総括はあと1ヶ月ぐらい先にちゃんとしたものができてくるでしょうから、それを見てまたこの万博の意味を考えて見たいと思います。

  盛り上がりというなら、全国的には総選挙がかなりのものだったそうで。今まではあまり動かなかった層が、800万人も新たに与党を支持した、というの ですから、どんな立場であっても驚きもものき、 だったのでしょう。人の心の動きは、それ自体は大変複雑なわけですが、その結果としてのアウトプット(ある いは行動)という点では大変単純なもののようです。その結果、議会では何でも出来る2/3以上の勢力になった与党が、基本的にはあと4年間続くわけです が、どうなっていくんでしょうね。「郵政改革の賛否」で酔いしれた夏の宴は、だんだんさめて時間が経ってくると、秋から冬への厳しさが身に染みてくるん じゃない でしょうか。

  愛・地球博も9月25日で閉幕で、そのあとのことが色々議論にはなっていますが、あのグローバルコモンでの熱狂は、どのように冷めていくんでしょう ね。どのようにやったら、人は動いていくのか、集まってくるのか、このイベントをきっちり総括すれば、何か出てくるはずです。
  閉会式の番組をみました。そしたら、リピーターが4割もいる、というデータにびっくり。中には180回も来たとか、80回も来たとか、夫婦で15回ぐ らい、だとか、まあ呆れるくらい足を運んでいる人たちがいるんですね。こんなイベントだけではなく、普通のお店でも、流行っているかどうかは、リピーター が多いかどうかだ、ということを聞いたことがあります。しかし、こんな世界的なイベントにこれだけのリピーターが来るというのは、この博覧会自体が市民参 加を重視した、ということの結果なのでしょう。極端なことを言えば、毎日どこかで新しいことをやっている、面白そうなことが日替わりでやっている、という くらい、多様さが多くのリピーター、子供から老人までを含むリピーター、を生んだのでしょう。120カ国以上の参加というたくさんの国、機関が参加してい ることもあって、多様さが生み出された面もあるでしょうが、周りの学生さん達の中にも手伝っているようなイベントもあったり、市民参加が大きな力を持った 感じはします。大学からも展示のコーナーがあったりしていましたから、地元のにとってはかなり身近なイベントで、主催している人たちと参加している人たち との関係はかなり近いものであったことも、リピーターを増やす貴重な要因だったのでしょう。



  ここでちょっと視点を変えて、大学というものに目を向けると、万博も目的は教 育イベントであるわけだから、同じ教育を旗印にしている大学 だって、やりかたによっては万博並みの人気を出せる可能性だってあるんじゃないか?などということを思います。大学は、基本は20歳台前後の若者(だけで はないですが)を対象にした「学士」という資格を取らせるための機関ではあるが、大学で開いている授業の内容の多様さは、全国規模で見れば万博の多様さに 決してひけを取らないものであろうと思います。そういう意味で、子供から老人まで、多様な人々を引き付けリピーターを作っていけるシステムを、本来大学と いうものはもっているんじゃないだろうか、と思ったりもします(民芸品は売ってないけど、東大なんかお酒を売っていたりするじゃないか、岐 阜大でも野菜を売ってたり・・・)。
  今後、生徒の数が減っていき、国立大学法人の経営が厳しくなることがわかっているのだから、万博のような老若男女を引き付ける内容をプロデュースし恒 常的に新しいものを見せていく、という側面を持たせてもいいんじゃな いだろうか、もちろん本来の機能をしっかりとした上での話しだが。そ のためには、地元においても、大学と科学館・博物館が一緒に計画を立てる必要があるんじゃないだろうか、と思ったりもしています。このことは、昔15年位 前に、フランスの科学館を見て思っていたことでありますが、そこでは規模は小さいですが、国家プロジェクトとしてそのようなことをやっているように思いま した。今回の、愛地球博では、そのことをまた思い出させてくれました。

(2005.09.25)