未経験の頂きで

 この8月で大きな話題になったこと、一つはベルリンでの世界陸上100m走でウサイン・ボルト選手が9秒58という人類未経験の頂きに立ったこと、さらに二つ目は人類未経験の新型インフルエンザが日本においても急激な感染力を見せ始めたこと、そして三つ目は、人類ということではありませんが、日本において憲政史上初の308議席をとって民主党が政権交代を成し遂げたこと。
  この8月は、やはり冷夏だったようです。じめじめした蒸し暑さはあったものの、あの岐阜特有の「くそ暑い」という日はほんの数日ぐらいしかなく、このよう な冷夏のときは何か画期的なこと、というか、歴史の分岐点になるようなことが起こるということがたびたびあったので、この8月に起こったことは、やはり ね、ということで根拠なく納得してしまいました。

 ボルト選手が前回の記録より0.11秒縮めた、というこの世界記録ですが、0.11秒 縮めたというのは実は1968年にも起こっていました。この1968年という年もいろんな世界的な出来事が集中して起こったことはしっかりと記憶に残って います。そして、2009年の今年、やはり世界的な出来事、世界的な不況ということですが、が起こりました。それと、日本における自民党から民主党へ、と いう初めての政権の交代が起こる年になったようです。
 これまで長いこと、自民党1党だけでは政権が持たなくなって、色んな連立政権が作られてきたわけですが、事ここに至ってつぎはぎができなくなってきて、ようやく2大政党間の交代のようなことが生まれるようになりました。
  民主党のマニフェストを読むと、大学に関しては毎年来ている「運営費交付金」の1%削減など、大学を疲弊させている要因に対して見直しをすることが言われ ておりますから、大学など高等教育に対しても、人材育成に関しても、医療医学に対しても、研究費の使い方に対しても、今までとは違った方針が出てくる可能 性が期待できそうです。
 特に理科教育とか、工学部などへの希望者の減少など、理科離れに対しても新しい政権はちゃんとした対策を出してくれるで しょうか?それには、どうしても政治家に理系出身者が増えないといけません。それで、次期政権を担う予定の民主党の、今までの(改選前の)衆議院議員の出身 大学学部を調べましたら、14人(110人中)が理系出身でした。内訳は、医学部1名、薬学部1名、農学部2名、あとの10名は工学部(あるいは理工学 部)の出身でした(この数字は、特に多いわけではなく、自民党にも実は33人(300人中)もの理系学部出身者が衆議院におられます)。さらに興味深いの は、鳩山由紀夫氏(次期総理大臣候補)自身は、東大工学部からスタンフォード大学大学院に進み経営工学の分野で博士(Ph.D.)をとっています。最適化 などをテーマにしたらしいので、数学が主体の分野だったのでしょう。あと、管直人氏も、東京工業大学理学部応用物理の出身で弁理士資格ももっておられると か。今度の当選議員の出身学部はまだ調べていませんが、どう変わっているでしょうか?(あまり変わってないとは思いますが。)
 このように大きな政党では、現在、理工農医歯薬系出身の割合が1割強しかいませんので、これが3割程度まで増えないといけませんね。
このようなところから変わっていかないと、科学者や技術者が大事にされる国になっていくことはできないでしょう。

(2009.08.31)