急激な変化

 まもなく10月、後学期が始まりますが、この9月ほどいろんな急激な変化を体感した月はありませんでした。
 時系列順に述べると、まず、9月3、4日に行われた日本脂質栄養学会(犬山市、名鉄犬山ホテルが会場)に参加・発表しました。3日には院生も会場係として何人か手伝ってくれましたし、4日には誠くんがポスター番を手伝ってくれました。(お陰様でポスター賞ももらったりして)
 例 年と違って、今回の学会にはたくさんメディアの方が参加されて、またテレビカメラまで入って報道ステーションで結構放映されたりして、あとで全国からの注 目度がとっても高くなりました。学会のホームページへのアクセスも10倍ぐらい増えました。それは、この大会で、はじめて「長寿のためのコレステロールガ イドライン」が発表されたからで、2007年に発表されていた動脈硬化学会のガイドラインとは、コレステロール(特にLDL-C)の捉え方、対処の仕方が 真逆の方針なので、色んなメディアが取り上げたわけです。そのあとも、「長寿コレステロールガイドライン」を巡ってパブリックコメントを募集することにな り、僕の方でホームページに募集のページを作って、ご意見を頂く係になったものだから、大会が終わってからも(現在も)色んな意見をもらっては、策定委員会に転送するという作業を続けています。一般の方からのご意見も頂いていますし、資料をよく読んでもらって、いろんな意見が寄せられることを願っています。
  これに関しては、今後も議論は続きます。なにしろ栄養管理の現場では、指導方針をめぐってかなりの影響があるようです。栄養士さんたちの意識としては、急 激な変化という感じでしょう。長年の議論が、このようなガイドラインがでることで再び活発になり、新しい指針の設定に向かうのかどうか、見ものです。コレ ステロールの基準に関しては、日本の基準はかなり特異で(メタボの基準もそうですが)、その根拠が、最近の様々な臨床研究データからより強く疑問視される ようになってきたので、とうとう新しいガイドラインを発表するところまで来た、ということです。たかがコレステロールというなかれ。その影響は大きいので す。
 このように暑い夏をますます熱くした大会でした。

 その1週間後、この糞暑い岐阜を離れ、別世界のような札幌に降り立ったのは、9月9日でした。「生体医工
学シンポジウム2010」に参加・発表するためですが、M1の誠君といっしょに23℃の札幌に着くと、32℃の酷暑の岐阜とは大違い、「今はー、もう秋♪」、2010Sapporo SymposiumMEを実感させてくれました。証拠に絵を挿入しておきます。どうも、例年より参加者が多く(183題の発表と、320名を超える参加者)、みんな避暑を 兼ねて来ているのかな、と思ったら、事務局の発表では登録の締切は酷暑が始まる前であったと解説があり、避暑(だけ)に来ているのではないだろう、と考え ているようです。まあ、それはともかくとして、実に過ごしやすい北大の中でのシンポジウムでした。我々はポスター発表したのですが、右の絵にもあるよう に、結構たくさんの方が質問に来てくださいました。誠君も応えるのに大忙しでした。ある電気関係の大手の会社の方も、新しいプロジェクトの参考にというこ とで、熱心に聞かれていました。本場のみそラーメンを駅の近くの有名店で2回食べ、これまた有名になった「カツカレー棒」という、ご飯も入ったモバイル型 のカツカレー飯を探しまわってゲットして、北大の中のベンチに腰掛け追加の昼飯にした(美味かった!)、というのも、思い出になっています。また、ホヤと か海のものなどを炉端焼きで食しましたが、8年前にも函館であった学会の時にも食して感動しましたが、今回もこれらはまた美味しく、たまに食べる珍味は旅 の思い出となって記憶に残っていくと思います。
 名古屋→岐阜に戻ってきたのは、12日の日曜日でしたが(所要で札幌→仙台から福島に寄り)、夜 9時頃の駅ホームですがまさに蒸し風呂の印象。覚悟はしていましたが、またこの30数℃の中で生活するのかと思うと、うんざりでした。ところが、このうん ざりも、数日で収まり、日中でも30℃を切る日が続くようになって、ようやく岐阜にも秋が来たか、と嬉しくなりました。

 コレステロール 基準についても言えることですが、「権威」に対する急激な信頼性の変化、というのは、担当する現場の方だけではなく、本当に一般の国民の意識への影響とい うのは大きいものです。大阪地検特捜部の一人の検事が行ったとされる証拠品であるFDの改竄、というのは本当にびっくりしました。こんな幼稚なことをし てまで犯人に仕立て上げようとするのか、と唖然としましたが、被害を受けた方には本当に同情の念を禁じえません。私たちはもうフロッピーディスクを使わな くなって久しいですが、このようなFDが活躍する場面がまだあるんですね。証拠データが全部クラウドになっていたら、捜査は楽になって信頼できるようにな るのか、はたまたビッグブラザーのような方たちだけがプラチナデータにアクセスできるので改竄の証拠すらも残さずに操作できてしまうのか、秋の肌寒さのよ うな寒気も感じます。
 あと尖閣諸島を巡っては、中国の態度が急激に変わってきています。レアアース資源での優位性をチラつかせながらの強い態度 には、昨年見ていた韓ドラの時代劇ドラマ(チュモンやテジョヨン、チョンチュテフなど)での漢や中原での支配国のアクドさを思い出させます。昔も今も変わ らんなぁ、と。

 10月からの新学期には、そう急激な変化は無いと思いますが、ただ大学の運営費交付金の削減10%近く、という問題はく すぶっているので、来年度までには結構大きな変化はありそうです。経済は回復基調にはあるという話でも、学生の就職難は酷く、まだこれからも続きそうです し、ポスドク対策も真っ当な雇用が増えなければ、奨学金や授業料免除が増えても博士号を取る人が増えるとはあまり思えないので、まだまだ「永い永い忍耐の大学」の時代が続きそうです。


(2010.09.30)