危機の「すべてがFになる」
先日行われた定期試験で、医用工学の授業でやっていた(軽く触れた)16進数に関する問題を出しましたが、案の定、あんまりできていませんでした。授業
時間にも、森博嗣の「すべてはFになる」の話に触れながら、デジタルな世代の皆さんはちゃんと16進数→10進数変換の仕方ぐらいは知っておきなさいよ、
ということを話したのですが。その時、度忘れして、森博嗣の名前が出てこなくて、学生さんに「えーっと、「すべてがFになる」の推理小説を書いた、名古屋
の某国立大学助教授の作家の名前は誰だっけ?」と聞いたら、一人の男子学生が、ちゃんと教えてくれました。
最近は、森博嗣氏の推理小説はあまり
読まなくなったのですが、5年以上前まではよく読んでいました。でも、最近は、押井守がアニメ化した「スカイクロラ」の原作を作るなど、その作風がかなり
変わってきましたね。森氏は、まだ二足のわらじを履いているのかな?最近の事情は、よく知りません。このキルドレのアニメ、結構人気そうですな。それに、
第65回ヴェネチア国際映画祭のコンペ部門に選出されたとか。楽しみですね。
この話から入ったのにはわけがあります。最近家に配布された、市の広報誌に市長さんが書いていたのですが、「現代の危機として、3つ、あるいは4つのF、と言われていることがある。それは、Fuel、Food、Fresh water、それにFinance である」と。それで、4つのF。FFFFhです。65535.
現代の危機のすべては、「原油(燃料)、食糧、水、金融経済」の問題に集約される、というわけです。環境問題、CO2排出規制の問題も、結局この4つのFになっていきます。それでタイトルの、危機のすべてがFになる・・・・。
それにしても、ガソリンを含め、物価の値上がりのスピードは凄いですね。家計は火の車。家の外は、燃えるような酷暑。先週は、真夜中でも32度ぐらいあり
ましたからね。なんで、中部とか、関西が、沖縄より暑いんですかね?気候変動は、複雑系で、予想できません。18日あたりには、全国の漁師さんたちがいっ
せいに抗議の休漁を行いました。いつもの魚が取れにくくなってきたのに、さらに重油が値上がりして、漁師さんたちは暮らしていけない。大変です。数年前に
は、食卓から魚が消える、ということが言われました。少し、漁を休んで、魚が値上がるの待って、魚を食べるのをスローにしないといけませんから、良い機会
なのかもしれません。それにしても、100円の回転寿司のような、安く魚を食べさせる、というのは、もうできなくなるでしょうね。魚の価格の決め方にも、問題がありそうですが、これは経済の問題。
これらに付け加えるならば、将来の科学技術を背負って立つべきポスドク、つまりPost-Doctoral Fellow、のFellowshipの問題が、やはり深刻になっています。このFを入れて、5つのFかな。
ある新聞の「私の視点」コーナーに、榎木さんが書かれていて気付いたのですが、公的機関の博士研究員は博士取得から5年以内になる、ということが決められ
つつあるそうです。5年以上ポスドクで過ごす人はざらにいます。その人たちは、公的研究機関(大学も含め)には残れないということになったら、どこに行け
というのか。企業は相変わらず博士研究員の採用は増やしていないし、現場の先端的研究を支えている5年以上のポスドクに、去れ!といったら、研究機関自体
のレベル維持にも支障が出るでしょう。
そこで、5年くらいの任期付きで、5年以上のポスドクには、小中高校の理科・科学実験の補助につくことを
優先させる、という政策が出てくれば、補助だから教員免許は必要ないでしょうし、現場の教員にとってはすごく助かることではないでしょうか。今度の8月の
お盆前に、一応現役の小中の教員のための「理科離れを防ぐ理科実験講座」を
この大学工学部でも開きます。僕も、生物を担当しますので、今準備をしています。ただ、あまり現役教員は忙しいらしく参加は多くはありません。教員免許の
更新のための講習をいろんなところで試行的に始めているようですが(教員に木登りさせたりしている映像がテレビで流れていました)、こういうのにポスドク
を積極的に、自治体の支援のもとで(秋田県では始まっているらしい)、参加させていけば、危機の解消の一手になるのではないかな、と思っています。小中高
校の学校だけじゃなく、大学にも、助教の下のレベルでよいから「教育研究補助者」という5年任期ぐらいの仕事を作ってほしいですね。この大学では、助教の
ポイントは60ですから、30くらいのポイントに相当するポジション。これを助教のいない講座に作ると、すっごく、助かります。ヒトを減らしカネを儲ける
方向しか考えない事業所は、発展はしませんね。ヒトを残す事業をしないと(サンド商道の受け売り)・・・・・。
学生にとっては長い夏休みが始まりますが、大学教員にとっても、他の学校教員にとってもいろんな意味で、書き入れ時、というか、何かと忙しい8月になりました。
(2008.08.01)