意外な変わり目
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月というのは、8月のいろいろ忙しい業務が一段落して、10月の新学期が始まるまでの、自分の時間が持てる貴重な1ヶ月です。それに、今年の9月は、春か
ら夏への変わり目にあたる5月に似て、大型連休もあって、夏から秋への変わり目としては意外にもいろいろ経験できた月でした。5月の連休はゴールデンウィークといいますが、今回の9月の5連休はシルバーウィークと呼ばれているようです(敬老の日が入っているので良い命名だとは思いますが)。ただ、長すぎる休みというのも、変にエネルギーを消耗し調子が狂います。3連休ぐらいがいいのかも知れません。実は次のシルバーウィークは2015年9月にあるんですけどね、このように希少価値があるのでプラチナウィークと命名したほうがあっている気がしています。
この9月は、初めて政権交代が行われて最初の、外交活動など重要な政治活動を開始する変わり目の月になっています。去年の9月には、食品への毒物混入事件が目
立っていましたが、今年の9月にはまたエコナ油が問題になりました。マリナーズのイチロー選手は9という数が好きだそうですが、9年連続200本安打の大リーグ記
録をつくりました。変わり目にはいろんなことが起こるものです。
新政権になってはじめての、鳩山首相の国連での気候変動問題での演説
は、結構格調高かったと思います。いままでの政権でこのような場で「世界を主導しよう」というような、注目すべき演説というのはついぞ聞いたことがなかっ
たので、内心の不安は置いておいて、少し感動しました。特に、「I am resolved to exercise the political
will required to deliver on this promise by mobilizing all available
policy tools.」あたりでは鳩山さんの強い政治的意志を感じました。
それにしても、2020年までにCO2排出の1990年比で25%削減、という国際的公約は大変なものです。地球温暖化がCO2を削減することで本当に抑
えられるのかどうかは、明確ではないとしても(CO2排出と地球温暖化の因果関係は実は逆ではないかという考えも置いておいて)、CO2を大きく削減しようというのがグローバルな意思として捉えられてきているわけですね。これは人類のグ
ローバルな規模での壮大な実験だと思います。人類の意思で地球規模の環境をコントロールできるのかどうか、この複雑系としての地球環境を人類の智慧に
よって、良い方向にうまく調節できるようになるのか。もしできたなら、人類の未来は明るいと思いますが、希望のみがそのエンジンとなるでしょう。絶望して
いる余裕はない。
そのためには、まずCO2量の変化の測定とその公開が基本ですね。そして、各個人は使う電気やエネルギーを3割ぐらい減らす努
力をし、活動も仕事量も3割ぐらい減らす。テレビ放送やコンビニも、夜の11時には終了する(あとは寝るだけ)。建物に4台エレベータがあったら、いつも
動いているのは3台までとする。公共の施設は、土日はほぼ停電状態にする。JRや私鉄、バスなど交通機関は、土日の運行は半分とする。個人が乗用車を使う
のは週1回は完全にやめる。仕事が遅れたり減らしたりして怒られたら、エネルギー削減に協力していることを言って、上司やお客さんに理解してもらう。給料
も減っているので、成果主義はとらない。。などなど、活動を減らすには色んなアイディアがあるでしょう。仕事も給料も減らしても、幸福な生活ができるような工夫
をすることが、課題といえば課題。(以上のことには幾分冗談も入っていますが)
また、活動を減らしてCO2削減、というのだけでは芸がないので(積極性がないのでつまらん)、別の活動をしてCO2を削減できるとすれば、それは植物や
樹木を増やす仕事でしょう。つまり、農業。あとCO2削減できる新エネルギー技術の開発でしょうか(ただし、エコ技術を開発するために余計な電気を使って
CO2を増やすようならあまり意味ないんですけど)。
◇
食品の問題では、食用油脂であるエコナ油(花王)は、これまで主成分であるジ
アシルグリセロール(DG)の安全性を中心に検証されてきて、食品安全委員会などでも発ガン性などに関しては一応安全であるという結論が出ていたはずです。トクホにも認められて
いました。ところが、ヨーロッパのほうでは、油脂の中にグリシドールと
いう化合物が入っていると発ガン性の危険性が指摘されていて、そのグリシドール脂肪酸エステルが食用油脂中に微量成分として入っていることが指摘され、さ
らにエコナ油には普通の他の食用油脂中のグリシドール脂肪酸エステルの100倍もの量が入っていることが分かったと発表されました。そのため、その化合物
の量を大きく減らすことができるまで、エコナ油を市場から引き上げることが行われてきています。トクホに認められてもいますので、その中に新たに危険性が指摘されて
いる成分が見つかったとなると、トクホを認めた国の機関の責任も問われますから、当然その油脂中のグリシドール脂肪酸エステルが安全なレベルなのかどうか
を検証する必要が出てきたわけです。
ところが、人体の中でグリシドール脂肪酸エステルはどのように代謝されるのかは、ほとんど分かっ
ていませんでした。それが摂取されたらどれくらい遊離グリシドールが生成されるのか、そしてそれがヒトに関して発ガンなどの危険性がどれほどあるのかどうか、これらの
ことがまったく分かっていなかったようです。
グリシドールというのは、エポキサイド構造をもっているので、脂肪酸の酸化生成物ではあるのですが、体内では危険物なので通常エポキサイド構造をもったものは、直ちに水酸化物に変換されます。例えば、アラキドン酸からリポキシゲナーゼによって最初生成されるロイコトリエンA4という化合物にはエポキサイド構造をもっていますが、不安定ですぐにロイコトリエンB4という水酸基を持った化合物に酵素的に変換されます。
ですから、普通に考えればごく微量なエポキサイド構造をもったグリシドール脂肪酸エステルが体内に入ったらすぐさま水酸化物に変換されてしまって、あまり
危険なものが出てくる可能性は低いのではないか、と思います。しかし、相当長期間摂取された場合や、変換酵素の活性が低い人の場合などは、安全性に懸念は出て
くるでしょう。またグリシドール以外でエポキサイド構造を持った微量物質はどれほどあるのかも分かっていない、というのも懸念材料です。そのあたりを研究
によって明らかにしてから、不純物の量を大きく減らして、安全な油脂であることがわかれば、安全宣言して販売を開始できるようになるで
しょう。
それにしても健康に良いといわれる食品の中には、新しい合成化合物や天然物であっても微量な危険物が多種類含まれていることもあるので、食品中の極微量成分(通常は微量不純
物として)の代謝的安全性までみないといけない時代になってきたのですね。食品の安全性をいうには、高度な分析技術が必要です。食品関係の企業も大変で
す。
◇
変わり目には、新しい状況に対応するためにいろいろ準備が必要です。10月1日から、また新しい後学期の授業が始まりますし、新しい活動が始まります。新型インフルエンザが広まらなければいいんですけどね。
(2009.09.28) 一応記念すべき100回目書き込み!