常識と意外性
この6月にあったこととしては、マイトピック的なことを挙げるとすると、スピード社水着問題、岩手宮城内陸大地震、13日の金曜日、花嫁の父、それから
基礎物理学の授業、ということになります。あと、再びの食品偽装(飛騨牛、うなぎ)もありましたか。
北京オリンピックが近づいてきていますから、スポーツのいろんな分野で代表選考が盛んにおこなわれています。6月初めころは競泳で使う水着の問題があっ
て、スピード社の体を締め付けて細くして水の抵抗を少なくするLZR水着をつけた選手が世界新記録や日本新記録を作ったりして、結局選手の意向を尊重する
ということで決着することになりました。これまでに競泳の水着はスピード社のものを使う、というのが世界の大方の常識になっていたわけですが、いろんなスポンサーシップの問題があって日本では
使いづらかったようです。しかし、日本のメーカーでも山本化学のSCS水着が開発されていてもなぜかあまり使われなかったのはなぜでしょうか?スピード社
は、国際的に規定の改正される前から相当積層水着の準備をしていて、政治的にも積層水着が認められるよう働きかけがあってはじめて、国際的な常識になっていったようです。日本のメーカーではこのような戦略的な準備がな
かった、ということなのでしょう。最近では、意外にも、酸素カプセル
というのも「ドーピング」にあたるという認識になってきて、規制もでてきているようです。薬でヘモグロビンを増やすなどというのはドーピングにあたる、と
いうのは理解できますが、酸素濃度をただ上げただけでもドーピングになる、というのはどうも解せません。これなら、LZR水着も物理的に体の形を変え
るほどのことをやるわけですから、外的ドーピングにあたるのではないか、とも思えてきます。
5月12日月曜日に中国の四川省で大地震がありましたが、過去の記録でも四川大地
震の前後には日本でも大きな地震があったようです。今回の岩手宮城内陸大地震はその四川大地震から約1カ月後に起こりました。1923年9月1日
の関東大地震の半年前にはやはり四川省でM7.3の大地震がありましたので、今回の岩手大地震という日本での大きな地震も中国大陸の地盤の変化とリンクし
ているのではないか、という考えも常識化してもいいのではないかと思
います。6月というのは日本でも大地震が多く発生しているのでしょうか、宮城沖地震(1978年6月12日M7.4)、新潟地震(1964年6月16日M7.5)、福井大地震(1948年6月28日M7.1)、今回の岩手大地震(2008年6月14日M7.2)。他にもあったかもしれない。インターネットのブログなど
で、手塚治虫の漫画「ブラックジャック」で、「6月14日東北一帯で朝8時ごろにM7.5の地震発生」と書かれていたのが話題になっていましたが、この漫
画が掲載された1978年には宮城沖地震がありましたので、たまたま書かれた日時と場所が一致したのでしょう。この一致は意外性が高いと思いますが、しかしながらそういう偶然性は十分ありうるとは思い
ます。因みに1978年6月12日は月曜日でしたが、今回の2008年6月14日は土曜日。
その前日の6月13日は金曜日でしたが、その夕方、応用化学科の現役の教授が急逝されました。ゼミ中のことだったそうです。大変残念なことでした。13
日の金曜日を取り立てて言うつもりはないのですが、不吉な日と考えられることがありますが、キリスト教と関係があっても世界共通のことではないようです。常識、というのとは違います。国によっては、13日の火曜日が不吉と考えられたり、17日の金曜日が不吉と考えられているキリスト教国もあるそ
うです。仏教では、仏滅ですね。13日の金曜日は、年に1回か2回ありますが、仏滅は月に4回もあります。また因みに、2003年の6月13日も今年と同
じ、金曜日でした(年1回の)。
日本では仏滅に結婚式などの祝い事をするのはよくない、という常識が
ある(あった)かと思いますが、先々週の6月21日土曜日は仏滅で、私事で恐縮ですが、私の娘の結婚式で、私も花嫁の父になった日でした。特に、問題はあ
りませんでした。あまり暑くもなく、夜に親戚を呼んでやった長良川鵜飼いの見物も爽やかで気持ちのいい日でした。ですから、仏滅に結婚式をする、というの
も、本人たちも、両家でも別に問題にしない場合、何のデメリットも生じませんし、却って空いていてメリットになることもあるということです。仏滅に結婚式
を
するというのを意外視する親戚も少しいましたが、ほとんどは問題には
されませんでしたから、最近は仏滅を気にする人は少なくなっているということでしょうか。月に4回もあるような「不吉な日」は、そのうち問題にはされなく
なる、という言わば健全な動向ではないでしょうか。
さて、大学の話に戻って、今年から生命工学科の教員が担当して、「基礎物理学」の授業を1年生の学科の学生を対象にして行うことになりました。今まで
は、学科の1年生向けの基礎の物理学の授業は、他の物理系の学科の先生や非常勤の先生にお願いして「工学基礎」という授業の中で行われていました。しか
し、生命工学科の学生にとってはあまり身につかない授業のようでしたので、3年、4年になって教員にとっても困った事態になるという反省から、自前で物理
の授業をしようということになったものです。私も昔は、理学部物理を卒業しましたので、一応の物理の教育は受けたのですが、大学卒業以来生物物理とか生物
科学分野に入っていましたから、物理の基礎の授業をするのは、初めてでした。それも、担当する3人の教員のうちで、最後の章の「電荷と電気回路」のところ
を私が4回分の授業を担当することになりまして(第1級陸上特殊無線技士資格ももっていることもあってか)、先週最初の授業を行いました。授業の道具も、
テスターから、ラジオや、ばらした体脂肪計の回路基盤などを用意して、授業を始めたのですが、最初にアンケートのつもりで聞いたことの結果を知って、愕然
としたことがありました。聞いたことというのは、「皆さんの家にあるコンセントに来ている電気の電圧は何ボルトでしょうか?」というもので、当然9割以上
の学生は
知っているだろう、と思って聞いたのです。ところが、順に聞いていっても「知らない」「聞いたことがない」ばかりが帰ってくる返事でした。全体に対して、
知っている人はいますか、と聞いたら手を挙げたのは9人だけでした。つまり、8割以上の学生は、家庭に来ている電気の電源コンセントの電圧が100ボルト
である、というの
を知っていなかったのです。当初はこれを知っていることを前提に、次に交流だから、実効値というのがあるよ、といった話に持っていくはずだったのですが、
その前で止めざるを得ませんでした。
私たちにとっては(何歳以上なのかは不明)小学校で習ったような常識的
なことが、今の学生にとっては常識
では無かったのです。最近
の小中学校では教えないことなのでしょうね。今の1年生が知らないだけかと思って、教室の4年生、院生にも一部聞いてみたら、4人中3人は知らなかったの
ですから、これはもう、今の若者(何歳までかは不明)にとっては知らないことなのでしょう。意外でした。でも、知らないのは別にいいのです。教えて知ってもらえばいいので
すから、そんなことは・・・。
しかし、そのような学生にたった4回で「電気の基礎」(といっても交流回路まではやりたいと思っている)を理解してもらえるような
授業はできるのだろうか・・・。大変なことだわい。
あと、またも食品偽装とは、懲りない面々ですな。それも、飛騨牛の偽装というのは、けしからんことです。飛騨牛は、5等級のものしか買ってはいけませ
ん。飛騨牛ファンとしては、良い肉か悪い肉かは、見れば大体解るのですが、肉のパックラベルをあまり信用しない、というのはいまや常識になるべきなのでしょう。困ったことですが。消費者自身の五感で判断、とい
うのが基本です、騙されないためには。
(2008.06.30)