糸を引く話


 だいぶ前からですがこの頃も、マンションの耐震偽造だ とか、自動 車会社や乳製品会社の不正や、湯沸し器会社の責任問題洋菓子屋 の期限切れ原料問題、などが我々消費者の不安を引き起こしておりました。最近ではまた、テレビのある番組での納豆に関する捏造事件もお こり、実際身の回りのスーパーで多くの人が経験する羽目になったということもあって、かなり糸を引く話になっています。分野は違いますが、東大や阪大での論文捏造事件もありました。
 もう、またかよ、、とい感じですね。
 これらは、いわば、法令順守=コンプライアンス、つまり企業倫理や経営倫理、技術者倫理、研究者倫理の問題であります、といってしまえば話は簡単なんで すが、どんなにチェックするシステムを作ってきていても、無くなることはないですねぇ。結局、良い製品を作らないといつか必ず分かっちゃう、ということなんですけどね
 特に、テレビの健康関連番組での捏造は、前からもちょくちょく知られていましたが、今回の納豆事件は 実にひどいものでしたね。ちょうど放送があった翌週の授業で僕が統計の話をしたときに、その納豆の健康効果の内容に触れて簡単に信じちゃいかんよ、と言っ たばかりだったので、あっけなくて拍子抜けしました。
 その番組は、いろんな制作会社が関わっているようですが、今回のとは違う制作会社が、その番組の 内容に関して(DHAの効果に関する内容で)2年程前に僕のところにインタビューに来たことがあります。その時感じたのですが、彼らにとって制作の方針は できるだけシンプルに結論を期待通りに持っていく、ということにあるのではないか、ということでした。いくらこちらが様々な論文を紹介して、かなり複雑な 背景やメカニズムを説明しても、彼らは5,6人の人を使って期待通りの結論を出せるような「実験」を考えようとしているようでした。そりゃあ、無理ですっ て、と 話しても彼らは聴く耳を持たなかったようです。一例でも期待通りの結果が得られると、それを針小棒大のようにして誰にでも当てはまるかのように番組内容を 作ってしまうことがあるようです。
 このような健康番組は、今や数多くありますが、この事件のために他の番組もかなり慎重に見られるようになるでしょう。このような番組は、作り方がシンプ ルで一般の人たちにも大変わかりやすく、単なるエンタメ系を越えて社会的な影響が大きい、というのは、今回のように納豆などの流通経済自体に大きな影響が あったことを見ればわかります。そ の分かりやすいプレゼンテーションのやり方自体は、参考にはなりますが、うそをいっちゃあ、おしまいだな。



 この健康番組捏造事件後のスーパーでの納豆の値段などを見ましたら、何事もなかったかのようにいつものように、ほぼいつもの品揃えに戻っていて、3パッ ク88円〜128円といった値段で置かれていました。中小の納豆業者にとっては複雑な状態だったでしょうが、納豆好きの僕らにとっては一安心。しばらく前 から我が家では黒酢納豆がブームですが、おろし納豆も美味しいですね。
 センター試験監督に出張した高山で泊まったホテルでは、毎朝小さなカップの納豆がありましたが、あの時はやはり仕入れるのが困難だったんでしょうね。今 更ながら、こんな ウソ番組の影響で(大手スーパー系列の買占めもあったらしいが)、一般庶民の朝のささやかな楽しみを、もう、奪って欲しくないな、と思いますね。



 センター試験といえば、英語のリスニング試験が、あれほど監督者に緊張を強いるものとは、想像以上でした。昨年は400件以上の再生装置(ICプレー ヤー)の不具合があったようですが、今回もあまり改善は進まず、やはり350件程度の不具合が起こって、再開テストに回ったと報道がありました。集積回路 設計の専門家に聞きますと、このようなIC装置製品の歩留まりは99%なんだそうで、1%の不具合は必ず確率的に起こってくるのだそうです。自動車製品な どの電気電子製品のppm(百万個に数個のエラー)と言うレベルから考えると、エラーの起こる確率はちょっと高すぎる気はしますが、55万個必要なら実際 は200万個以上は生産して、その中から良いものだけを選択して実際には提供しているのでしょう。昨年は、○ツミという会社が生産に関わったそうですが、 全国的な試験に一斉に使われるものなので生産にも相当神経を使ったはずです。出荷当初は正常でも、1〜2ヶ月の時間が経つと回線の劣化等も確率的に起こっ てきますから、今回の300件以上の不具合がすべてICプレーヤー自体のエラーだとすると、この方式での試験ではこれからもほぼ同様に起こり、避けられな いと思われます。
 このようなリスニング試験を、センター試験という全国一斉の試験で課すことが、本当に意味があるのかどうか、ますます疑問になっています。こういうのこ そ、TOEICのような民間の試験システムに任せて、年数回は受けられるようなシステムにして、必要な大学がその点数を利用するほうが、生徒にとってもい いんじゃないでしょうか?

(2007.01.29)