崩壊と再生

 昨年の1月の雑記の最初には、「2007年は、捏造問題で始まり、偽装問題で暮れました。今年、2008年は、どうもで 始まりそうです。」と書きました。中国製冷凍餃子に混入した毒物が、引き起こした食品不安でしたが、1年経ってもまだその事件の全容は解明されていませ ん。こういう国際的な話になってくると、簡単には解決しそうにありませんね。昨年暮れは、金融危機から実体経済の危機へと進み、大きな景気後退が明白に なってきて、2009年は「トヨタショック、ソニーショックなどの勝ち組企業イメージの崩壊」で始まっています。もちろん企業自体の崩壊ということではなくて、あの金融、自動車、電機関連の勝ち組企業というイメージでもこのリセッションにはやはり勝てなくて、大赤字、大量のリストラに進んできているという現実です。
  そんな中で、1月20日、アメリカではオバマ新大統領が就任しました。いままでの選挙戦での鼓舞するような感動を呼ぶ演説ではなくて、落ち着いた、熱気を 抑えるような就任演説でしたが、それだけアメリカは、まさにオールアメリカで、真剣に対処しないといけないという気分の現われだと思います。そこでアメリ カ再生への希望の宣言をしたわけですが、経済の崩壊は、我々を不安に陥れ抑制的に働きますが、再生への希望は人々を前向きに、行動的に働きます。やはりこういう時こそ、希望を持ち続け行動的にいかないといけないでしょう。ゆっくりと、そして着実に。。。
  学生の就職活動も活発になってきています。構内でも企業説明会が頻繁に開かれ、大学外の大きな説明会にも参加し、必死に学生は活動を続けているようです。 このような不景気ですから、今の学生の進路希望では大学院進学を希望するものが、昨年一昨年よりだいぶ増えているようです。このリセッションの暴風雨を 1、2年避けての雨宿りのつもりで大学院へ、という雰囲気も一部にはあるでしょう。
 でもこの不景気がいつまで続くのか、誰も明確にはできていま せん。なにしろ、経済予測がまったく立たないのですから。3年以内に収まるという希望的観測があるかもしれませんが、5年以上続くという話もあるし、学生 はこのような最悪の状態にある企業を良く見極め、21世紀型企業に脱皮している、希望の持てる企業をしっかりと分析し見定めて選んでほしいと思います。学 生さんは、内向きになると、抑うつ状態になったり、わけもなく攻撃的になったり、心の病も増えてくるようです。困難であっても、若いんだから前向きに!
 かつて日本の政治経済を指導した人たちの一部には、新自由主義の誤りを指摘し転向を表明する「経 済学者」も出てきています。1月31日のある新聞には、経済産業研究所RIETIの上席研究員の方が書かれていましたが、これまでの経済学ではだめだ、マ クロ経済では「貨幣」のことをちゃんと扱えない、「貨幣の公共性」を考えた経済学が必要だ、などと載っていました。貨幣のことを扱えない経済学なんて!よ くそんなことで経済学で飯を食っていたものだ、と素人目には思いますけどね。結局、こういう、「生き物」である経済社会の複雑性は、単純な理論では扱えな い、というのが危機の時にはより明確になった、ということでしょう。

 あの、日本のすべての活動に影響を与えた「骨太の方針」、 市場と競争重視の方針、大学の運命も大きく変えた平成13年の方針を、もうそろそろ破棄して見直し、新しい方針を出してほしいと思います。この方針の根っ こは、まさに20世紀のものであって、21世紀型の社会を示すものではないように思っていました。あと3年以内には大きな方針の転換があると、希望的には 思います。

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 話はころっと変わって、最近実験室で使っているパソコン、ネットに繋いでないのです が、あるバックドア系のウィルスに感染しました。大学の情報センターから警告は出ていたのですが、結局同じようにUSBメモリから感染したものでした。最 近は、USBの性能が上がって、大記憶容量のUSBメモリが安価に手に入るので、学生はデータの移動はそれを使って行うことが多くなっていました。USB メモリに自動的にAutorunファイルが付け加わってウィルスプログラム(*.AAAなどのファイル)が入り込み、それがパソコン本体の共有ホルダにコ ピーされ、次々とバックドア系ウィルスプログラムがUSBメモリに感染していく、という仕組みのようでした。ネットに繋いでいないパソコンだったのでセ キュリティソフトも更新していなかった、というのも感染を防げなかった理由の一つですが、まさに便利は危険と背中合わせ、というのを感じた次第。セキュリ ティソフトを入れ替えて、一応対策は完了しました。
 最近、インフルエンザにもタミフル耐性のウィルスが増えていることが報道されていました。パ ソコンのウィルスもそうですが、感染したらどうすべきか、感染しないようにするにはどうすべきか、というのをしっかりと認識することが大事ですね。タミフ ル耐性インフルエンザがこんなに急速に拡大するというのは、専門家にも想定外だったようですが、以前からタミフル使いすぎの危険性は警告されていました。 通常のインフルエンザに罹ったら、タミフルではなくて、休んでよく寝て、ネギでもかじっていたら数日で直るのが大部分でしょう。薬に頼るのはパンデミック のときだけ。これが、Fluに対する世界の常識でしょう。もっと、人間の、自然の複雑性を信頼すべきです。自然の複雑性への信頼、ということでは、書籍「奇跡のリンゴ」を思い出します。その「複雑さ」をまるごと、まず良く観察、観測すること、そしてそれに対して人間の頭脳という「複雑さ」で面と向かわせ、解釈させること。そうすれば、解は自然と出てくる、はず。
 こういうところに、21世紀型の方針のヒントがあると思っています。

(2009.01.31誕生日