変動の4月


 食料や生活用品の値上げと、ガソリン暫定税率の(一時的な)廃止に伴うガソリン代の実質値下げから始まった4月。
2008年度の開始は、何か大きな変動が起こる予兆の、地震のP波のような、そんな感じを持ちました。
アメリカ大統領の民主党候補者選びも、まだ決着がつかず、これもどうなるのか、外野席からとはいえ、今後の変動に大きな影響を与えるだけに、気になる行方 です。変動の背景には、当然人々の変動がまず基盤としてあって、その人々の変動がさらに社会の変動へとつながっていくわけですから、人々の変動、特にここ ろの深層の変動へ目を向けないと、今後の社会的な変動を捉まえることは困難になるでしょう。
 このような、複雑で巨大な社会的変動を予想することは可能か?そんなことを感じながら、最近読んだ本で面白かったのは、トム・ジーグフリード著「もっ とも美しい数学 ゲーム理論」(文芸春秋刊)でした。そこでは、最近のネットワーク理論へ繋がるナッシュ均衡などのゲーム理論を、歴史的な読み物 として解説されていました。その中で、ケトレーの「社会物理学」の考え方と、統計力学との繋がりの記述から、あぁ、やはりこのような考えをしている人がい たか、という感慨が生まれました。というのは、以前、ある学会誌に、疫学と個人の振る舞いとの繋がりにおいて、熱力学から統計物理学への転換のような考え 方の変化が必要であろう、ということを書 いたのですが、そのことがまさにケトレーが言っていることと似ていたからです。ゲーム理論やネットワーク理論というのは、いうなれば複雑な相互作 用の全体像を解明するものなわけですが、この相互作用は、ナノレベルの分子間相互作用から、細胞間相互作用、人間同士の相互作用、グループ同士の相互作 用、宇宙の中の相互作用、などあらゆるところに現れるので、そのような理論はあらゆる相互作用現象に適用できるはずのものです。
このようなナッシュ均衡のような解析方法は、大学入試での入学率を予想する時などにも使えるはず、と思っています。定員5名の後期日程試験での入学率がな ぜ大きく変動するのか、も実は「均衡理論」で理解できるではないか、とも感じていますが、数が小さければ変動(率)が大きくなるのは、言ってみれば当たり 前、一人定員のときは、0%か100%かですからね。

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 4月には、研究室にも新しい面子が揃いましたが、結構いろいろな(変動の大きな)性格の人たちが集まりました。昨年11月末から中国から来ていたQさん は、入れかわりに、4月末に中国に帰ります。これらの相互作用の生成と変化は、確実にお互いの心に変化をもたらします。是非形あるものに残したいと思いま す。
 テニスプレイヤーの伊達公子さん、先日岐阜のテニスコートに現れ、現役復帰を果たしましたが、復帰の理由は、往年の名プレイヤーが若手と相互作用するこ とで、若手を刺激し、レベルを上げることができるようにしたい、ということのようです。健闘に期待します。

(2008.04.29)